第304話
食堂バラクル店内ではシューメリさんが泣き出し、フーリさんが肩を抱いて慰めている。その前では奴隷の兄妹四人がどうしたらいいのかわからずオロオロしていた。そして、ミリィさんは泣きじゃくる奴隷二人を抱きしめて動かないルーバーを見守っている。残りの三人は遠距離から駆けつけてきているであろう人待ち。
そう、私は保護を目的とした奴隷購入をしたのだ。
「エミリアちゃん、あの三人はどう見わけたの?」
「みんな
「エミリア〜〜〜‼︎」
「うわっ!」
私が抱きついてきたルーバーに驚いて声をあげると、ミリィさんが抱きしめて庇ってくれた。ルーバーの方は住んでいた村の子供たちだった。二人はルーバーとは顔見知りで、ルーバーの顔を見て泣き出したのだ。
「エミリア! ありがとな! コイツらを助けてくれて!」
「……奴隷であることに変わりはない。私への借金を完済するまで自由はないから」
「それでもいい。こうやって、生きて会えただけで十分だ」
借金奴隷は誰かにお金を立て替えてもらうことはできない。それが許されるのは奴隷になるまでだ。そのため、ルーバーが肩代わりすることもルーバーが身柄を預かって店で働かせることもできない。
「エミリア、私たちからもお礼を言わせてちょうだい」
フーリさんがそう言って私の両手を握りしめた。四人の兄妹は生き別れたシューメリさんの息子の子、つまりシューメリさんの孫でアゴールの甥と姪だった。
……この子たちの父親は流行り病で亡くなっていた。
話では、複数の国で流行ったその病は真っ先に治療院の治療師や
そんな子供たちと違い、大人たちは重症化した。ほとんどの大人たちが罹患し、大半の大人たちは
両親を亡くした子を誰も見向きしなかった。いや、気にする余裕すらなかったのだ。親の亡き骸は持ち去られ、まとめて焼却された。
たぶん、その煙が感染拡大に繋がったと思う。空気感染だ。感染が広がったときにマスクは使われず、今でもマスクは使われていないだろう。
家族が死に絶えて子供だけ残された家は消毒と感染予防を理由に次々と破壊された。孤児院も子供たちを引き受けることはできず。そして、見捨てられた子供たちは
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