第281話


今日も私たちはダンジョンに潜って遊んでいた。ここには薬草をはじめとした植物が多い。


「ラベンダーは製油して香水にして、ポプリも作って……」

《 エミリア、これは? 》

「カミツレ? 防虫作用があるから虫よけ。あとはハーブティーかな」

《 まだ咲いてたから、いっぱいとってくるよ 》


こんな感じで採集していく。収納で片付けてもいいが、今日はこのダンジョンでシートを広げてピクニック気分。採集用のダンジョン……洞窟のため、魔物は一切でてこないため安全なため、妖精のみんなも色々摘んでは見せにきていた。


《 エミリア〜。おかしなものが見つかったよ〜 》


そういって持ってこられたのはハチミツ色の石。


《 何か入ってるの 》

「ああ、これは琥珀だね」

《 琥珀? 》

《 琥珀ってなに? 》

「樹脂が時間をかけて固まったものだよ。そのときに植物の種や昆虫が入り込むことがあるんだ。この中にあるのは……あれ?」


空を模した明るい天井に向けて琥珀をすかしてみると、中に植物の種が入っていた。お守りアミュレットの鑑定を使うと、中に入っているのは柊の種だった。


「ちぃちゃん、この世界に柊ってあった?」

《 ヒイラギ? ううん、私は知らない 》

「じゃあ、この世界では育たないのかな?」

《 テントの温室で育てようか? 》

「それはいいけど……。琥珀から種を取り出したら、水に浸けて。種が無事ならすぐに植えないと、乾燥は禁止だから。三年くらいは木を育てないと」

《 大丈夫。ボクたちはエミリアのバラの木を育てて花を咲かせたんだよ。ヒイラギもちゃんと育てられるよ 》


私が興味から植えたバラは妖精たちが丁寧に育てて、昨年に花を咲かせた。バラはローズティーやジャムなどにして私たちだけが堪能した。はじめて咲いたため量が少なかったからだ。低木でも数年かけて木として育てる必要があったが、私の代わりに妖精たちが育ててくれた。だから、妖精たちに任せても大丈夫だろう。


《 じゃあ、テントをだして。温室の準備はボクがしてくるよ 》

《 私は水の循環を変えてくるわ。その後で種の手伝いをするね 》

「わかった。じゃあ、お願いね」


テントをだすと白虎が地と水の妖精たちを連れてテントの中へと入っていった。妖精だけではテントに入れないからだ。


「さあ、みんなも何か面白いものや珍しいものを見つけてね。別に珍しいものじゃなくてもいいよ」

《 どんなものがあるかな? 》

《 どんなものが珍しいのかなー?》

《 美味しいものはリリンが集めているからね 》

《 薬草などはピピンと白虎が集めてるよ 》

《 私たちはどこを探そう 》

《 地も水もいないから、どうやって見つけよう 》

「いつまでも相談しているだけでは見つからないよ」

《 そうだ! 》

《 何でもいいからみつけよう 》


私の言葉にみんなが四方に飛んでいく。

それと入れ替わりに戻ったリリンが、大量の果実が実った果樹を木ごともってきた。


「これは……テントの庭に植えようか」


私の提案にリリンは嬉しそうに上下に揺れた。

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