第209話


途中、砂嵐に行く手をはばまれた『聖魔士くずれを回収し隊』がダンジョン都市シティにたどり着いた頃にはすでにズタボロ状態だった。魔物を甘く見ていた彼らは途中の町で冒険者たちを雇い、ダンジョン都市シティまで護衛を依頼した。


「一日で金貨五枚? そりゃあ見事なで」


話を聞いた私が呆れるとシーズルとシーズルの補佐、ミュレイが苦笑した。


「砂嵐のあとは魔物が凶暴化しやすいからな」

「人数からいくと長距離依頼も含めて妥当かと」

「四十日を二十人……?」

「いや、連中は砂嵐で足止めを食らったそうだ。その遅れを取り戻すために依頼したらしい」


期間は二十五日。という事は白金貨一枚に大金貨二枚と金貨五枚。それに成功報酬が追加される。


「魔物のドロップアイテムも手に入るから……いい稼ぎ?」

「それがなあ……。片道の依頼だから帰りは稼ぎにならない。だいたい、同じルートで帰るなら魔物がでるとは限らないからなあ」


長距離の護衛で片道になると、帰りには何か配達の依頼を受けたり買いつけをしないと損になる。そのため、往復よりは割高なのだ。


「だからって……うちを襲撃する〜?」


そう。「せっかくきたんだから」という理由で店を襲撃して私服守備隊と激突した。


「転売目的だったらしいよ」

「バカだよねー。こっちは聖魔師テイマーとして立ち会うから店を開けてられないのにさ。大人しくダンジョン体験してればいいのに」


彼らは今、守備隊の詰め所で檻の中にいる。彼らが到着したと同時に店は閉店した。いつでも動けるようにするためだ。もちろん、並んでいた人たちも理解していた。そのため「回収隊が到着した」という報告が情報部経由で届いたと同時に、行列の客はトラブルもなく解散した。

そんな閉店後に冒険者たちは押しかけてきた。しかし、店は閉店した直後。それを知った彼らは一度は引き下がった。しかし、そこである声が響いた。


「私がわざわざ来たのに!」


女冒険者の一人がそう言った。それが異常な光景が生じた。彼らは店を攻撃して破壊しようとしたのだ。


「あれには『魅了』の魔法が使われていた」

「だから、あんなバカな行動をしたんだ。で? バカたちと大バカの末路計画は?」

「『魅了』を使った女冒険者は現在、悪夢を見ている。ここからの追放は確定。王都が回収を申し出たから引き渡す。それと他の連中は攻撃しかけたからなあ……。たぶん、ここの下水道整備か廃棄物処理場での肉体労働ってところだな」


店の方は、外の異変に気付いたくらやみの妖精が襲撃者たちを重力魔法で押し潰して気絶させた。


《 エミリアのお店を壊そうとするなんて許さないんだからー‼︎ 》


今も牢の中で何度も潰されては気絶しているらしい。


「そうですねぇ。別に殺さなければいいんじゃないですか?」

「妖精に遊んでもらえたら、いいみやげ話になるだろ」

「楽しい思い出になるよね〜」


誰も止める気はない。

聖魔師テイマーに手を出すな』というプリクエン大陸法と、『ダンジョン都市シティに手を出すな』というタグリシア国法に違反した罪人なのだから。

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