第140話
歩きながら収納をしていると、白虎の右肩に乗って、歩く度に骨が上下に動くのを左肩に乗るリリンと楽しんでいたピピンが、何かに気付いたように飛び降りた。そして、ピョンピョン跳ねながら大きな岩の前まで行くと、ペッと粘液を吐き出した。すると下から上に向かってシュワシュワシュワーと岩が溶けていく。ピピンは『水属性スライム』で、いま吐き出したのは塩酸だろう。すべて溶かすのではなく、ピピンが任意の材質だけを溶かすことが出来る。
《 あら?
「で、デカい・・・」
《 私もこんなに大きいの。初めて見た 》
ピピンが溶かした岩の中から、高さ2メートルは優にある巨大なダイヤモンドの塊が現れた。地の妖精が見たことがないなんて・・・どれだけレアなんだ。
ピピンはダイヤモンドの前で嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねています。
「ありがとう、ピピン。すごいのを見つけたね」
《 ピピン。すごいわ 》
みんなに誉められて、嬉しそうに身体を左右に震わせています。リリンは白虎の背の上で飛び跳ねて、ピピンを誉めているようです。
ダイヤモンドを収納して詳細を確認すると、最高級品のダイヤモンドだった。その内容をみんなにも伝える。
《 不純物はないの? 》
「まったくナシ」
《 岩に包まれていたから、ということかしら? 》
《 それにしても、『地の妖精』が気付かなかったダイヤモンドを発見するなんてすごいことよ 》
「それは仕方がないよ。魔力を半分以上消費しちゃってるんだから」
私の言葉に《 えぇぇぇ! 》と驚きの声をあげた妖精たち。ピピンとリリンは心配顔でピョンピョンと飛び跳ねている。
《 あ、バレてた 》
「当たり前でしょ?仕方がないから休憩にするわよ」
そう言って結界石を置いて結界を張るとテントを出す。
《 わーい。ただいまー 》
《 お邪魔しま〜す 》
「邪魔するなら
《 きゃー!邪魔しないから許して〜! 》
風の妖精が慌てて私の頭に飛びついてくる。その様子にみんなが楽しそうに笑い出す。
「冗談。冗談」
《 そう言いながら、涙石に手を置いてる〜! 》
「気のせい。気のせい」
《 エミリア。可哀想だから揶揄うのはそこまでにしてあげて 》
風の妖精を揶揄っていたら、涙目になった水の妖精から止められた。昔話に出てくる水の妖精と違って優しい子だから、いきすぎると泣き出してしまう。
「ゴメンね。本気じゃないから」
そう言って頭を撫でてあげると《 うん 》と言いながら涙を拭う。
《 白虎。小さくなってね 》
ガウ。
白虎は火の妖精に返事すると、体長15センチまで小さくなった。そんな白虎とピピン、リリンに水の妖精が
「ほら。癒しの水。みんなも飲む?」
《 飲む〜 》
《 エミリア。今朝早かったんだから、そろそろ食事取っておいたら? 》
時間を確認すると、9時を回っている。この時間なら次は14時。夕食は18時で丁度いいでしょう。
「そうね。じゃあ、焼きそばを食べるわ」
そう言って作って貰った焼きそばを取り出してテーブルの上に置く。そうすると、自分たち用の取り皿に小さなアルミ箔に包まれた焼きそばを取り分けている。私の席には大きなアルミ箔を置いてくれる。白虎のミルクを用意したり、これまた小さなコップに癒しの水を分けたり。この子たちは自分たちのことは何でも自分でしてくれる。だから、私も自分の飲み物を出したり自分のことをすれば良い。
《 あ、焼きそばのお皿とお箸は出したよ〜 》
「ありがとう」
そう言って、ロールパンを取り出して、上部に切れ込みを入れる。
《 何するの? 》
「焼きそばパンにしようと思って」
《 私も食べたい 》
《 私も! 》
「言うと思った」
小指の爪から第一関節ほどの小さなロールパンの上部も切って皿に乗せると暗の妖精が重力操作でテーブルに運んでくれる。水の妖精が、水差しの中から癒しの水を小さな水球にして出すと自分たちのコップに移している。火の妖精は、白虎が飲むミルクを人肌まで温めている。
『焼きそばパン』はレシピで登録済みだ。ロールパンで作ったのだ。行きつけのパン屋では、妖精用の小さなパンを作ってくれる。
この都市にあった焼きそばは『茹でた麺を野菜と一緒に鉄板で炒めたもの』だった。私が登録した『焼きうどん』を作りたくても醤油がなかったため、そのまま塩胡椒で味付けしたらしい。そのため、塩焼きそばとソース焼きそばをレシピ登録。すぐにレシピを購入して、この都市独特の味にアレンジして作っている。
《 エミリア 》
《 大丈夫? 》
「・・・ん。大丈夫だよ」
動きを止めた私を心配して抱きついて来た6人の妖精たち。きっと抱きしめているつもりなのだろう。
「焼きそばが冷めるよ。早く食べよう」
《 ・・・ん。分かった 》
《 焼きそばパン。作って〜 》
《 私も〜 》
「はいはい。
ダンジョンに入った時に言われたことをマネしたら《 も〜! 》と頬を膨らませる風の妖精。その様子を見て私たちは笑い合った。
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