第49話


「あ、おかえりなさい。お客さんが待っていますよ」


出立前のトラブル回避のためにダンジョンを立て続けに三ヶ所回り、10日ぶりに宿屋に入ると、女将に声をかけられました。彼女の指し示す方を見ても、知らない顔が三人。知っている顔が一人います。


「なあメルリ。コレがお前の言ってた『腕のたつ冒険者』か?」


「ええ。だから、あの・・・」


「まあ。女なら弱くてもパーティの『性処理道具』だと思えばいいだけだ」


・・・この連中、女をなんだと思っているのでしょう。


『キッカさん。すみませんが、宿屋に来てもらえますか?変な連中に『値踏み』されています』


そうメールしたら『無言で通話を開いて下さい。すぐ向かいます』と返事が来ました。すぐ通話を開くと、キッカさんに繋がりましたが無言のままです。通話させたのは盗聴のためでしょう。記録はアミュレットが宿に入ったところから巻き戻ってしてくれています。


「おい。お前。女のクセに『ソロ』だってな。俺たちのパーティに入れて『可愛がってやる』からありがたく思え」


「お断りします」


「なんだと!このアマ!この場でぶっ殺されてぇのか!」


「女なんか手足がなくても『使える』んだぜ」


何処の世界でも、低俗なやから口上こうじょうは変わらないようです。その程度の脅しでビビるような小娘なら、コカトリスやミノタウロスなどの『上位魔物』を一撃で倒す事は出来ませんよ。


「ちょっと、アンタ!その人たちに逆らわない方が『アンタのため』だよ」


女将が慌てて口を出してきました。・・・バレてないと思っているのでしょうか?


「女将さん。『私のため』ではなく『貴女のため』ですよね。連中にカネを貰って、私を売り飛ばしたつもりなんでしょうけど、そうは問屋が卸さないんですよ。部屋に盗聴・盗撮の魔石を配置して客を募り、今までに8人の女性を彼らのような連中に売り飛ばしましたね。さらに33人の女性客に睡眠薬入りの食事を提供。深夜に合い鍵で侵入して誘拐し、奴隷商人に売り渡していたことも知っています」


「違う!違うわ!誰よ!そんなウソを広めたのは!確かに深夜や早朝に出ていった冒険者ならいくらでもいるけど・・・。そんな時間に出て行くのは本人たちの勝手じゃない!」


「その言い訳、私の時にも使おうとしましたか?でも、何時もの手を使って私を売り飛ばそうとしたけど、毎回魔石は無力化。素泊まりのため睡眠薬入りの飲食は口にしない。15回宿泊して、15回侵入に失敗。ああ、忘れていました。奴隷商人が『エンシェント男爵の子飼い』で、男爵に『提供』するためにガータンを使って私を攫おうとしたが、みんなの前で赤っ恥をかかされて大失敗の大失態。二人と連絡が取れなくなったから、今度は『手近な連中』に売却ですか。『何が起きている』のか分からないなら、動くな、手を出すなって『犯罪の基本』ですよ?そうそう。貴女が、犯罪を重ねて借金奴隷から犯罪奴隷へとさらに身を堕とし、永久労働者として鉱山へ飛ばされた『ガータンの妻』だということはすでに判明しています」


ニヤリと笑って返すと、女将は顔を青白く染めあげました。食堂を利用している客たちが驚いて目を丸くしています。女将に忌避する目を向けているので、ただの常連客なだけで『女将の仲間』ではないようです。


「其方の方々も。このまま何もせず、前言撤回して二度と顔を見せないというのであれば、未遂ですから罪に問いませんよ。メルリさん。貴女も懲りませんねー。『自宅謹慎中』のハズですよね?私に罰金を支払ってもまだ犯罪を重ねますか。借金返済のために私の個人情報を『また』売ったんですか?・・・タダで済むと思ったら大間違いです。私にケンカを売ったら高くつくんです。『女でソロの冒険者』を甘く見ないで下さいね。ああ。今さら後悔しても遅いです。手遅れですよ」


そう言った私を嘲笑う三人の男性。メルリは怯えた表情で震えています。


「おい女将!この女はソロだからいなくなっても問題ないと言ったのはお前だろうが!」


「お、大人しそうだから・・・」


「『大人しい』と『大人しそう』は違いますよ。もう少し泳がせるつもりでいましたが、貴女もこの店も『今日で終わり』ですね。・・・別に困りませんけど。『私を売り払った額』がいくらだったのか分かりませんが・・・。私の強くて優しい『姉たち』がすでに激高しています。慰謝料は冗談抜きで高額ですよ。億はくだりません。覚悟して下さいね」


女将は私の言葉に、震えて床に座り込んでしまいました。


「お願い・・・許して」


「無理です。さっきも言ったでしょ?すでに『手遅れ』なんですよ。私は『厄介ごとに巻き込まれないよう、大人しくしている』だけです。何せ、私の周りは過保護な方ばかりなので。王都でも、私と連絡が取れないってだけで30人以上が駆け付けてくれましたから」


「ハッ!バカか。例えるにも数がおかしいだろーが。それとも何だ?その身体で毎日男たちを相手に娼婦紛いのことしているのかよ。だったら話が早いな。今日から俺たちが専属だ」


「お断り。『その程度』で何が出来る?知能も低い。知性もない。女を脅せば言うことを聞くとでも?ああ。その点ではガータンと同じですね。私の腕を掴んだと同時に腹蹴りされて、壁まで吹っ飛んだあのバカの節操なしと」


「巫山戯んな!お前みたいに男ひとりに押さえつけられても押し退けられねーような身体して」


「メルリより胸ありそーだな。こりゃあ久しぶりに連日連夜楽しめそうだ」


「此処にいる奴もカネを払うならこの場で『味見』させてやるぜ!」


「・・・人を『みかけ』で判断しない方が身のためですよ。『女のソロ』でやっていけるということは、それだけ『実力がある』ということです。少なくとも貴方たちが少しでも手を出してきたら『目に物見せる』つもりでしたが。『お姉ちゃんたち』が来たので譲ります。・・・謝って逃げ出せば良かったのに。愚かな自分を死ぬほど後悔して下さいね。そうそう。『人身売買』は罪ですので。貴方のパーティメンバー全員も同罪ですよ」


私の言葉と共に、近付いていた地響きがおさまると同時に宿屋のドアが勢いよく開いて・・・『扉だったもの』が左右の壁まで吹っ飛びました。きっと、建付たてつけが悪かったのですね。


「エアちゃん!無事?!大丈夫?!」


気付いたら、ミリィさんの腕の中にスッポリ収まっていました。


「ミリィさん。『お仕事』は?」


「そんなもん、アンジーとシシィに押し付けてきた!エアちゃんが酷いことされているのに放っとける訳ないでしょ!」


「え・・・?王都守備隊のミレーヌ隊長・・・」


「なぜ此処に・・・」


周りはミリィさんの登場にざわついています。


「エアちゃん。誰が悪い人?全員?」


ミリィさんの『全員』発言に、テーブルに座っているお客さんたちの酔いが一気に覚めたようで、一斉に首を左右に振っています。そんなに激しく頭を振ったら、酔いが回りませんか?


「彼処のテーブルの人たちと、この女将」


私の言葉にメルリは「私は違う!関係ないわ!」と喚いて逃げようとしました。しかし、その足は扉の消えた出入口の前で止まりました。そこにはすでにフィシスさんとエリーさんが立っています。背後に苦笑するキッカさんやパーティの皆さんも見えます。さすがにアクアとマリンは、アンジーさんたちと一緒に『旧エンシェント男爵邸』か冒険者ギルドで留守番でしょう。

ちなみに旧エンシェント男爵邸が皆さんの宿となっています。


「お、おい。アレって王都守備隊のフィシス隊長じゃないか」


彼方アッチは上級冒険者のエリーにキッカじゃないか。他の連中も、王都で名のある冒険者たちだぞ。まさか、彼女が言ってた『過保護な人たち』って・・・」


「そう。私たちのことよ。そして貴女が『関係者』だということは、エアちゃんと繋いだ通話ですべて聞いた。・・・そうよね?ブラームス」


「はい。当方の管理不備により、王都の方々に足を運んで頂いたにも関わらず、このていたらく。深くお詫び致します」


フィシスさんの後ろから姿を現して、深々と頭を下げてエリーさんに謝罪しているのはブラームスさんです。


「あっ・・・!わ、私は・・・」


「これで冒険者ギルドの規約違反は二度目だ。メルリ。「この町で再就職先を見つけるのは大変だろうから」とお前をギルドに残してくださったお方の温情に報いず、裏切って個人情報を再び漏洩するとは・・・。残念だよ」


ブラームスさんの言葉にメルリは力なく崩れ落ちました。


「さあ。私の可愛いエアちゃんを『どう可愛がる』のかなー?ねえ。私の可愛い『妹』のエアちゃん相手に『な・に・を・す・る』んだってー?」


「ミリィ。そいつらは『殺さなければ』何してもいいわ。この宿も『人身売買』に使われていたから、手続きが完了次第取り壊すことが決定してるわ。だから、ある程度壊しても問題にならないわよ」


フィシスさんが物騒な許可を出しています。


「よーし!エアちゃんはエリーとフィシスの側にいて。エアちゃんをイジメた連中は、お姉ちゃんが叩きのめしてやるからね!」


「ミリィ隊長。回復薬は沢山ありますから、手足を潰しても『勝手に』死にかけても、回復させたら再度潰せますよ。気が済むまで無限にっちゃって下さい」


「よっしゃー!よく言った!キッカ!それでこそ私の部下だ!」


「さあ。エアさん。もう通話は切って大丈夫ですよ。あとでフィシス隊長に記録を送って下さい。証拠として使いますので」


「キッカさん。フィシスさんもエリーさんも。外にいる皆さんも。駆けつけてくれてありがとうございます」


そう言って頭を下げたら「エアちゃんのためだもの」とエリーさんに抱きしめられました。


「そうよ。ミリィじゃないけど、『私たちの妹』が酷いことされて、放っておけるわけないわ」


「そうです。我々にとってもエアさんは『大切な妹』です。頼って貰えて嬉しかったですよ」


「ねえ。エアちゃん。なんで私のところに連絡してくれなかったの?」


「そうよ。エアちゃん。いつもみたいに私に連絡してくれて良かったのよ?」


「だって。エリーさんもフィシスさんたちも。冒険者ギルドとギルモアの処理で忙しかったでしょ?キッカさんたちはギルドの外で警備しているだけだって言ってたから、連絡しても大丈夫かな?って」


「バカね。そんなこと気にしなくていいのよ」


「そうよ。今度からは気にしないで連絡して」


エリーさんとフィシスさんからそう言われましたが・・・。仕事が忙しいって分かっているのに、連絡なんて出来ません。


「二人とも、エアさんを困らせてどうするのですか。自分の事で来てもらったって思っているエアさんが、『仕事の邪魔になる』と分かってて連絡出来ないことくらい気付いてるでしょう?逆に俺なら様子を見て、二人に報告するなり動くなり出来ますからね」


「・・・それが不満なんじゃない」


「不満ってだけでエアさんを困らせて、そのことをミリィ隊長に気付かれたら、また・・・『ボールの刑』がいいですか?」


「キッカー!クスリー!コイツら弱すぎー!」


タイミングよくミリィさんの声が聞こえて、エリーさんとフィシスさんがビクリッと身体を震わせました。


「ハイハイ。・・・見事にボコボコですねー。さあ。クスリを飲んだら、また隊長の相手になって下さい。隊長の気が済むまで」


回復薬の小瓶をボコボコのボロボロでグッタリしてる男たちの上からぶっ掛けて外傷を。口に小瓶を突っ込んで骨折や内臓破裂などの内部損傷を治して、第二ラウンド開始を宣言しています。

この騒動に巻き込まれたお客さんたちは、この一方的な『格闘技』の観客として楽しんでいます。ハンデは必要ないですよね。元々『男3人対女性1人』で、男たち側に有利ですから。ちなみに第一ラウンドでは男たちは武器凶器を手にしましたが、あっさりミリィさんに破壊されました。


「ねえ。キッカさん」


「はい。どうされました?」


「あの人たちに『状態回復』を時間設定して掛けたら、回復薬はいらないのでは?」


「ああ。確かに。それもそうですね。ミリィ隊長の気が何時になれば晴れるのか分かりませんから、時間設定は『エンドレス』にしましょう」


「では自分が掛けて来ます」


冒険者さんがミリィさんたちの方へ向かい、ミリィさんに少し話してから男たちに魔法を掛けると「よっしゃー!これで休憩なしでれる!」と、ミリィさんの喜ぶ声が聞こえました。男たちにとっては『死刑宣告』と同じだったでしょう。・・・問題は、フィシスさんやエリーさん、キッカさんたちが『順番待ち』してるっぽいのですが。

だから『救済』の手を差し出したのに、その手を払いのけて好き勝手言い続けたんですから、『自業自得』ですよね。




すでに勝敗が決まっているのに、レフェリーが不在のため何ラウンド目か分からない試合を横に、宿の女将はこの町の守備隊に手枷を掛けられて連行済みです。今日も部屋に魔石が取り付けられていたそうで、守備隊が部屋を捜索して回収していきました。

私に「お願い。許して!お金ならいくらでも払うから!!」と泣きながら訴えてきましたが、「もちろん慰謝料は貰います。その上で制裁アレを無限に受け続ける気はありますか?」と『時間無制限無差別格闘技会場』を指差して聞いたら項垂れて行きました。

私だけの問題ならどうにかなるかも知れませんが、被害者はたくさんいますから無理な話です。


メルリは同じく守備隊が連行。ブラームスさんがギルドでメルリの解雇手続きを済ませて、守備隊を連れて『お迎え』に来たそうです。メルリはすでに人身売買に関わったために『犯罪奴隷』となっています。『借金奴隷』として約八千万ジルの返済もあるため『永久奴隷』となるようです。

隊員さんの話では、「若いから八千万ジルの稼ぎは生み出せるでしょう」とのことでした。メルリは借金を背負った奴隷として、働いて返済していくそうです。完済出来ても死ぬまで奴隷のままだそうです。ただ、借金をしている奴隷たちよりは完済してるため『少しは良い待遇』になるそうです。



「メルリさん。貴女の借金がなぜ三千万だったのか分からなかったのですか?」


「はあ?それはアンタが私を訴えたから・・・」


「もしかして、貴女の貯金が二千万もあったから、なんて思っているのですか?」


「あったハズよ!あの男から一千万ジルが」


「支払われてないわ」


フィシスさんの言葉に、メルリは驚きの表情を見せました。そうですよね。あの男ガータンは『借金奴隷』なんですから。一千万ジルあれば、すでに完済して奴隷では無くなっているでしょう。逆にそれだけの金を貯めていたとなれば、どうやって貯めたのでしょう。やはり横領でしょうか?


「ガータンは『借金奴隷』ですよ。知らなかったのですか?貴女の貯金は二百万もなかったそうですよ。ご家族が出せるだけ出しても一千万もありません。それなのに二千万もあったのは、冒険者ギルドの皆さんがお金を出し合ってくれたからですよ。貴女を止めることが出来なかったと言ってね。それなのに貴女は私だけでなく、ギルドの皆さんの思いも『裏切った』んです」


「さっきブラームスが言っただろ。『残念だ』と」


私とエリーさんの言葉に、メルリは涙を零してブラームスさんに目を向けたが、無表情になっているブラームスさんの視線は冷たかった。


「もう一度!今度はちゃんと・・・」


「『もう一度』はないですよ。何、甘いことを言っているのですか?本来ないはずのチャンスを貰ったのに反省もせず、逆恨みして二度ふたたび裏切りました。それも『短期間』で。そして今度は『人身売買』にまで加担しました。・・・そんな人に『三度目』が許されると思っているのですか?さすがにギルドの皆さんからもご家族からも、誰一人庇ってもらえませんよ。・・・貴女はまだ若い。だから『借金奴隷』ではなく、借金返済のために辛い生活をすることになっても、ご家族が一緒なら乗り越えられるって思ったのに」


「今度はご家族にも罰が科せられる。借金返済中の者の悪事を止めなかった・・・『止められなかった』との罪で。それも罪が確定して三日も経っていない。ご家族の罪は通常よりはるかに重くなるわ」


フィシスさんの言葉でショックを受けたのでしょう。メルリは守備隊に両腕を掴まれると、力なく立ち上がり、手枷を掛けられて宿屋から出ていきました。その後ろ姿をブラームスさんは悲しそうな表情で見つめていました。


「・・・エリーさん」


「ン。分かってる。ブラームス。今回のことでギルドに慰謝料を請求することはない」


エリーさんの言葉に驚いたブラームスさんは「え?ですが」と単語を繰り返しています。


「被害者のエアちゃんが決めたことよ。ブラームス。今回のことはギルドと関係ない。いえ。『前回発覚した情報漏洩が一件ではなかった』ということよ。情報漏洩が二件。だからメルリがエアちゃんに支払う慰謝料は二件分の一億。しかし、ギルドはメルリ一人分の一億。・・・でいいのね?エアちゃん」


「はい。ギルドの人たちも、メルリさんの借金を肩代わりした以上、ギルドの借金が完済するまで私生活も大変ですよね。罰は、それで十分ではないですか?」


私の言葉に何度も「ありがとう」とお礼を言いながら頭を下げました。


「ブラームス。ギルドに戻って最終手続きを。アンジーたちが今回の件の含めた書類を作っているわ」


「はい。本当にありがとうございます」


ブラームスさんは再び頭を下げると、宿を出て行きました。


「女将の場合、エアさんに対しての人身売買は確定ですからね。外にも被害者がいるから、さらに罪が重くなります。残念ながら、ご家族も同罪で罰を受けるでしょう」


「エアちゃんを売ったお金を貰ってるから、それだけでもアウトよねぇ。エリー。交渉はエリーに任せて良いのでしょう?」


「ああ。・・・エアちゃんはどうする?この町は宿が足りないし、王都周辺のダンジョンはまだ封鎖中だ」


「・・・この町に残って、ダンジョンを回っていても良いですか?」


「そうですね。冒険者のテントは、云わば『持ち歩ける家』です。下手に宿で泊まるより快適に過ごせます。エアさんの場合、料理も出来ますし、作り置きがあればそれだけで暮らしていけます」


「そういえば、エアちゃんのテントは『何処の空間』に繋がってるの?私は『森の中』だけど」


「我々は岩だらけの『荒野』と草だらけの『草原』ですね」


「私は・・・程よく木々の生えた『草原』と、砂浜もある『海辺』です」


「完全に『別荘』ですね」


「はい。時々、草の上に寝転んだり、海で泳いだりしています」


「魔物は出ない。他の人も来ない。正直、『この世界で一番安全な場所』よね」


そうです。『テントの部屋から外』に繋がっている場所は『その人専用の空間』・・・プライベート空間のため、何処からも侵入者は現れません。キッカさんたちに複数のテントを繋ぐ方法も教わったため、いちいちテントの外へ出てもう一つのテントに入るという手間が省けます。『セカンドハウス』にしていた冒険用テントに来客用の部屋を作ったため、本宅は完全にプライベート・・・『我が家』になりました。もちろん、誰かを泊めることはしませんが、この先何があるか分かりません。誰かと一緒に行動を取る可能性すらあります。その時に『我が家』に入れたくありません。

エリーさんもテントを持っているのでどうしているのか聞いたら、キッカさんたちがいればキッカさんのテントを使うそうです。それ以外なら、もう一つテントを購入するんだそうです。そして、『誰かのテントに泊まる』のはマナー違反だそうです。「旅にテントを持っていない時点で、旅を甘く見てる」だそうです。最低限でも『結界石』は持ち歩くそうなので「泊めて」と言われても無視すればいいそうです。


「それとね。どんなに仲良くなっても、窃盗や強盗に変わる人はいるのよ。自分が持っていないものを欲しくなって『つい』手が出たって人もいる。テントが『所有者以外入れない』のもそれが理由なの。だから、誰もが、玄関に一番近い部屋に『応接セット』しか置いていない客室を用意してるわ。それでゲストは他の部屋に行けないわよ」


「え?でもキッカさんのテントは?」


「キッカのは『パーティ用』なのよ。だから『許可された人は共有部分を使える』の。それとパーティなら個室があるわ。アクアとマリンはまだ小さいからキッカか私の部屋にいるわ。私も一緒に色々しつけをしている最中だから部屋があるのよ。と言っても客室のひとつだけどね」


他にも色々と教わり、二つのテントを繋いだら、壁に扉が出来ました。そこを開けるともう一つのテントのリビングに繋がっていました。そのため、我が家には誰も入れる必要がなくなりました。

・・・入れるなら、何時か私が『聖女』だと告白できる人が現れた時でしょう。

寝室からしか入れなかった私室も、廊下から入れる普通の部屋にしました。


ちなみに、あの時手に入れた、手のひらに乗るほど小さな宝箱は、不正に置かれたため回収しました。一応エリーさんたちに見せて確認しましたが、「問題なし」と言われたので私が貰いました。今は『ただの飾り箱』なので、私が『小物入れ』にしています。

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