第6章 国の動静。俺の動静。
第31話 農業その他多忙中
11月。
忙しい時期がやってきた。
まずはタマネギとニンジンの収穫。
畑に堆肥を漉き込みキヌアの種をまく。
終わったらソラマメの収穫。
11月~12月と3月~5月がこの辺では一番忙しい時期だ。
でも7月もソラマメと大麦の種まきでそこそこ忙しいかな。
でもまあ農家なんてそんなものだ。
この時期は忙しいながらも村中色々と活気がある。
何せ収穫だ。
食べるものにも困らない。
現金収入も出来る。
なお野菜やマメ等はそのまま行商人に売るほか、ある程度加工したりもする。
今年は俺が魔法を使えるのがバレている。
ファナも炎熱魔法に引き続き冷凍魔法を覚えた。
そうなると村中のあちこちから手伝ってくれとの声がかかる。
魔法が使えないとソラマメは乾燥させるか完熟させるしかない。
生のままでは日持ちしないからだ。
でも冷凍魔法や冷却魔法を使うと冷凍保存が可能になる。
そうすると商品価値がかなり上がるのだ。
俺やファナに多少手間賃を払ってもその方が儲かる位には。
そんな訳でファナや俺はお呼びがかかる度にあちこちの家に出向き、ソラマメの冷凍処理を行う。
結構疲れるがファナの魔力を増やす訓練にはちょうどいい。
それにしても村ではファナ、本当にアイドル扱いだ。
クマを狩った時からそうだったが、今は簡単な治療魔法や炎熱魔法、冷凍魔法が使える。
おまけに簡単な計算も出来て文字も読み書き出来るのだ。
何せここは辺境の開拓村、文字すら読めない人が半数以上だったりする。
そんな訳でファナがお呼ばれして行くと、大抵手間賃の他に色々持ち帰ってくる。
「冷凍の他に伝票も書いてあげたらこんなにお土産をいただきました」
よく出来た野菜とか特製の燻製とか。
可愛い服やアクセサリーも大分増えた。
でも本人が喜ぶのは何といっても食べ物。
昨日貰って来た冷凍ルクマは最高に喜んでいた。
「トンロ・トンロに行けば売っているでしょうか」
そんな事をファナが言う位には。
ルクマはここより低地で栽培される果実。
だから確かにトンロ・トンロ辺りにはあるかもしれない。
でもあそこは村長が危険なケモナーだからな。
出来ればファナを行かせたくない。
今はどっちにしろ忙しいから無理だけれどな。
ファナが出来る事は当然俺も出来る訳で、当然その辺でも忙しい。
更に村長と交代で行商人との交渉代行とかまでやらされている。
おまけに税金の元になる台帳記載まで。
この辺の作業は今まで村長とイバンの2人でやっていたそうだ。
「助かるの。1人増えただけでも大違いじゃ」
「この村も大分安定した収入が出るようになった。おかげで2人ではきつかった」
3人でも結構な作業だ。
ただこの辺がいい加減だと見込み税金で多めに取られたりもするからな。
まあここへ来る徴税人はどうせ俺の顔見知りだけれど。
何せここの領主は貧乏男爵家。
部下の数も決して多くない。
故に家臣の顔も大体覚えているわけだ。
まあそんなこんなで大忙しの時期が過ぎると今年もそろそろ終わり。
そんな訳で領主家から徴税人がやってくる。
やっぱり俺の顔見知りだった。
「やあラウル、久しぶりだな」
ラウルは父の部下で俺の幼馴染でもあるという設定だ。
あくまで設定なのだが俺の記憶にもその辺の事が色々入っている。
だから俺としては非常に話しやすい相手だ。
「サクヤ様が相手だと今年からやりにくくなるな」
「様はいらない。今は一介の農民だ」
そんな雑談を交わした後、村長の家で村の各家の帳簿の確認に入る。
「今年は帳簿が分かりやすくていいな」
「俺が半分書いた」
「みたいだな。新方式で記載されている帳簿が半分以上だ」
「あれは科目を色々覚えなければならないから面倒じゃ」
「その分徴税使が苦労するんだよ。ただ新方式の方が控除が多くてお得だぜ」
「そうなのか。なら来年の帳簿はサクヤ殿に一任して……」
「やめてくれ。そうでなくとも自分の家以外の仕事が多いんだ」
これ以上忙しくなってはかなわない。
「そろそろここも収穫が安定してきたし、連絡所を置いたらどうだ」
連絡所とは領主が設置する役場みたいなもので、事務や連絡、更に治療術士の巡回等を行う機関だ。
「うちの領主様にそんな余裕があるかよ。それにサクヤ様1人いればだいたい何でも代行できるだろ」
ラウルは俺の能力を半分くらいは知っている。
「やめてくれ。俺は一介の農民なんだ」
「その辺の事も考慮して多めに土地を与えておいたと
領主と言っても下っ端男爵だし領主の部下と言っても所詮俺の幼馴染。
なのでそんな軽い会話も出来たりする。
無論徴税事務作業は真面目にやっているけれども。
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