第29話 俺の家的には結果オーライ?
「あと襲ってきた部隊がティワナク王国軍だというのは本当なの?」
「そうなのか!」
ジョンが俺の方を視る。
「本当だ。将校の1人にかつて軍で知っていた奴がいた。奴はまだ軍にいた筈だ」
「それはお気の毒に」
「いや、嫌な奴だったから別にいいがな」
だから死んでしまってもそれほど気の毒とも思わない。
彼に率いられた部下の方には同情するけれど。
「でもティワナク王国は今まで獣人と敵対していなかった筈だ。むしろ利用しつつ共存共栄という方向性だったと思うが」
「俺もその辺はよくわからない。一度調べてみる必要があるだろう」
運営経由で調べる事が出来るかもしれない。
また必要なら俺の親父にそれとなく聴いてみるという手もある。
奴は現役の男爵で一応国の末端ながら領主様だからな。
取り敢えずジョンは何も情報は持っていない模様だ。
でも念のため他の関係も聞いてみるか。
獣人関係の噂話とかもあるかもしれないし。
「ところであの男についての情報はないか。他でも獣人の村を襲っているとかいうような」
「何せ小さな村は前の疫病でほぼ無くなっちまったからな。元々獣人の村には治療術士とか治療魔法使いなんてまずいない。ここは一応俺がいたので何とかなっただけだ。それでも他の村まで面倒をみる余裕は無かったけれどな」
つまりこの街以外の事は分からないという事か。
「ただ北の方から来た旅の獣人が言っていたな。魔の神を信仰する一派が最近人族の間で出てきているらしいと。獣人を敵視していて時に聖戦と称して攻めてきたりもするそうだ。今のところたいした事になっていないとは言っていたが。その関係とかもあるのかもな」
それは初耳だ。
北は熱帯密林地帯で強力な国家も無く、この辺よりも獣人が多い。
一般人より獣人の方が勢力も大きかったりする。
その関係で一般人が獣人に対し敵意を持っているという可能性は確かにある。
でもそのような宗教となるとまた少し話が違ってくる。
魔の神か。
その辺の情報も出来れば欲しい。
「何かわからない事だらけね」
その通りだ。
でも全部を俺達が抱え込むことは無い。
わからない事はわからないなりに知った事実を報告するまでだ。
下手に自分一人で色々抱え込むと潰れてしまう。
その辺の悪い例は以前俺自身が思い切り経験したからわかる。
要は割り切ることだ。
「とりあえずここの街は無事防衛出来た。今はそれでいいじゃないか」
そう、何はともあれ俺達は防衛に成功したのだ。
まずはそれでいいじゃないか。
「どうせ今日は宴会だ。何ならゆっくりしていってくれ」
そう言うジョンの誘いを固辞して俺とファナは自宅へ帰ることにした。
今回の件を自分なりに整理したいという気持ちもある。
書き置き1枚で出て行ったので早く戻ろうという理由もある。
でも一番の理由はジョンがファナを見る視線に怪しい成分を感じたからだ。
ケモナーを自称しているだけに油断は出来ない。
ファナはどういう目で見ても可愛いしさ。
危険は避けるに限る。
なおジョンはそれならと色々お礼とお土産をどっさりくれた。
この辺は高度が低いので産物もかなり異なる。
主食はトウモロコシで豚とかも飼育している場所があるらしい。
お礼は例えば乾燥トウモロコシ粒大袋とかなかなか豪快だ。
酒1甕なんてどう考えても重すぎる気がする。
獣人の体力だとその辺の具合がよくわからないらしい。
なかでもファナがお気に召したのはでっかい豚の後脚のハムだった。
しっかり熱を通した後燻製にしてあるのでそこそこ保存も効く模様。
大国主命もかくやという位のでっかい袋をぶら下げ、俺達はトンロ・トンロの街を後にする。
あとローサとは今夜話し合おうと連絡しておいた。
この世界の時間で午前0時、外の時間で午後4時に前回のWebで待ち合わせ。
運営には聞かれたくない話も一部あるからな。
それにレポート提出についても打ち合わせた方がいいし。
何やかんや色々あったが帰ってみると昼下がり。
移動魔法で家裏の倉庫に出て表側に回る。
「あれ旦那、帰ってきたんすか」
「ああ。近くを通る隊商に急病人が出たらしくてな。旧知の奴だったからちょっとひとっ走りして治療してきた。それでお礼がこれだ」
酒の甕をどんと出す。
「俺は飲めないからな。料理用に少し残してあとは帰りに5人で分けてくれ」
「おお、それはありがてえ。早速皆にも知らせてきやす」
走って行ってしまった。
よほど嬉しいらしい。
この辺では酒は高価だから祭りの時くらいしか飲めないしな。
「これからお昼の用意をしますね。あのハムも是非食べてみましょう」
ファナもご機嫌なようだ。
犬の獣人は肉食だからな。
大きい肉を見るとテンションが上がるらしい。
まあ皆さんが楽しいなら結果オーライかな。
俺はそう思いつつ頂いた他の色々の整理を始める。
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