第471話
「こ~れ。そないに困らしたらあかんやろメズ」
「あ、姐御……お、おがえり~」
「あ、助かりま――」
カナラが止めに入って実際に勢いと言葉が止まるのが二人おるわ。
メズキは単純にカナラのお叱りの雰囲気を感じ取って。
結嶺はたぶんカナラが般若みたいなおっかないお面をつけてるから。ちゃんと顎のとこに歯車みたいなのついてて口が開くやつ。
綺麗な声の助け船が来たと思ったらいっちゃん怖いのいたら驚くよなぁ~。
「はぁ! 私よ私。前に
「あ、あぁ! いつも兄がお世話になって……」
お面を少しずらして右顔面三割くらい見えるようにしたら結嶺も誰かわかったみたい。
てかいつもお世話になってって……。いやなってるけどさ。なんか複雑だよ。妹にそういうこと言われるの。
「ふふ。そないにかしこまらんで。気軽に構えてええんよ?」
「いえそんな。とんでもないです。普段兄が大層お世話になってることに加えて今日は私まで招いてもらってしまって。実家はもうないので休暇をどう過ごすか困っていたので非常に助かります」
一部を除いて山ごと売っちまったからな~。その一部だって学園長とネスさんに渡しちゃってるから本当になんも残ってないんだよな。俺たちは。
いや、ここで寒いことを言って良いなら。お互いの存在が唯一残ったモノってとこかね。
俺は学園に世話になってて、結嶺は異界探索に引っ張られることもあるからある意味独立してるけどさ。
でも気軽に連絡とれて、こうやって正月過ごせるのは良い変化って思うわ。マジであの父親がいなきゃ……あ~いや、あの男がいたから俺たちは義兄妹になってるわけだから。う~んこれはこれで複雑な心境。
「そう言ってもらえると、私らももてなし甲斐があるもんやねぇ~。早々に困らせたみたいやけど?」
「えっと……ははは」
「ひ……っ!」
カナラに一睨みされて縮こまってるわ。
って、お前どこに……ん? リリンの後ろに隠れてなにしてんの?
「おい。肩を掴むな鬱陶しい」
「そう言わず匿ってくれが……」
「いや隠れられてないだろこれ。丸見えだ丸見え」
「ぐぅ~……貴様がもう少しデカけりゃ良かったが!」
「メ~ズ~?」
「……! あわわわわわわわ……っ!」
確かにリリンならカナラを止める口もあれば腕力もある。
が、こいつはからかうのは好きだけど自分から前に出ることは遊びのときじゃほぼない。茶々入れるばかりで傍観決め込むことが多いんだよな。
だから、リリンとカナラぶつけようたって乗っちゃくれねぇよ。見立て違いで残念なこって。
「反省してきなさい――ふぅ~」
「へ」
カナラの煙に包まれてどっか行っちまった。気配も辿れないしかなり遠くまで飛ばされたみたい。
「あ、あれ? 今のは……というかどこへ……」
あ~……。
ここは一応カナラの契約者の世界で、全員に顔が効くとは言ってあるけど……。
カナラよ、なんか上手い言い訳できないか?
「これと同じよこれと。あっこの生徒さんなもんでちょいと見目のちゃうもんができるんよ」
「は、はぁ……なるほど。召喚魔法については門外漢なので勉強になります」
目の前で小さなゲート開きつつ淀みなく説明したお陰かあっさり信じちゃったよ。
いや、嘘はあまり言ってないんだけどさ。
お前、そんな簡単に嘘つけるようなヤツだったっけ?
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