第451話

「ついでに言えば君の言う異歪者ディストレイとも異なる。起源ルーツは同じだけどね。結局はただの人だよ。まだ。ちゃんとね」

 空間を支配し、生命活動のみ許可して体の動きを封じつつ。心の内を容易く読んでおいて神でもなんでもなく人と宣う。

 表情筋すら動かせない二人だが、もし顔が動くなら呆れていただろう。

「むしろそこのかれ神薙羅かのじょに近いかな? あとあれだ。君たちが知ってそうなとこだとクレマンとか氷巳とか。そのあたりとの先輩でありハイブリッドってとこかな?」

 才もカナラも地球で生まれながら。人間として生まれながら非凡な才能と可能性を秘めている。カナラに至っては生まれつき人を完全に凌駕していた。

 クレマンと氷巳は言わずもがな神誓魔法師。

 その二つの中間と、真白の女性は言っている。

神薙羅かのじょはこの星ではじめての超越者イロアスだけれど。私はね、この星で最初の神誓魔法師なんだ。すごいだろう?」

「「……」」

 問いかけるものの、応えることは叶わない。

「クハハ! あぁ凄い凄い。讃えよう貴様という存在を」

((どうしてここに……っ!?))

 ネスと紅緒の心の声が重なる。

 それも仕方ないこと。何故なら――。

「そして後悔させてやる。我が運命を弄り回した事を」

 何故なら現れたのは学園にいるはずのリリンだったから。

 才とカナラの座るベンチの背もたれの上に腕組みをしながら真白の女性に冷たい視線を送っている。

「いやぁこんにちは。会いたくなかったよ。というより気づかれたくなかったよ。別のせかい超越者イロアス。やっぱり動けるんだね」

?」

「うん♪」

 真白の女性はリリンの言葉その全てを肯定する。それどころかリリンがこの場に来ることすら既に知っていたようだ。

「もう少し無駄話を挟むつもりだったのだけどね。君が来てしまったから少し巻いておしゃべりをさせてもらうよ」

「気づいた我を前に口が回るとでも?」

 閉じられた空間の中で深く、濃く、強く迸るマナ。肌から滲み出る普段よりも圧縮されたけた違いの力を含んだ影。

 それらを前にしながらやはり真白の女性は狼狽えないまま。

「回るさ。いや、むしろ君は聞きたがるよ」

「ほう?」

 彼女は知っている。リリンの好奇心の高さを。

「もしも君と彼の出会いが――」

 彼女は知っている。リリンが才と出会うまでどれだけ退屈していたかを。

 だから。

「私がねじ曲げて作った運命モノって聞いたら――」

「!?」

 ほら言った通りと言わんばかりに。イヤらしい笑みを浮かべて。

「気になるでしょう?」

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