第435話
「っと、そうだ! 今日はその格好で行くつもりなんだよね?」
「そうよ」
「じゃあちょっと待ってて! 部室行ってくる!」
カナラの話を聞いて、より慈しみの気持ちが大きくなった佐子は部屋を飛び出していく。
ちなみにこの間にカナラは食器を洗って片付けている。リリンは深夜に買ってきておいたお菓子やらをひたすらに口に詰め込んで佐子の帰りを待つ。双方相変わらずである。
十数分後戻ってくると――。
「はぁ……はぁ……。こ、これも追加で着ていってほしい……って、思って……急いで取ってきたよ……」
「へ?」
息も絶え絶えにカナラ手渡したのは薄紫のマフラーと薄桃のカーディガン。
「もう真冬だし。防寒は必要。艶眞ちゃんちょくちょくこの時期でも春とか秋くらいの薄着でいるから寒さに強いのはわかってるんだけどさ」
「そうね。寒いのは平気」
(童ん頃はほとんど素っ裸で雪に埋もれてたこともあるしねぇ~)
先程過去のことを思い返した所為か釣られて色々と思い出していく。
でも、今は苦い思い出に浸るより。目の前の幼い女の子のほうが大事。
※カナラにとっては大概の生物は幼子です
「そんなお高い着物には合わないかもだけど……」
懸命なのくらいは見ればわかる。そんなとこまで感覚は腐ってない。
「ううん。重ね重ねありがとう。嬉しいよ」
自分のために精一杯選んでくれたのならば受け取らねば女が廃るってもの。
カナラは受け取ったマフラーとカーディガンをその場で着て見せてくれる。
「どう?」
黒の着物にパステルカラーがよく馴染む。赤と白の椿の邪魔をしていないし佐子の見立ては間違っておらず。安心とともに美女の微笑みがより眩しく感じる。
「お似合いでごぜぇますぜ!」
「また垂れてるぞー」
「いけねっ」
鼻水も同時に垂れてるお陰か鼻血にも粘度が出て落ちづらくなってる間にティッシュで回収。
鼻に栓をすると改めてテンションの上がった佐子はカナラに向かって声を張り上げ始めた。
「よし! 戦の準備は整った! あとは駅で待ち合わせるのみ!」
「え、同じ建物にいるのになして?」
「そこは深く考えたらいかんのじゃ! 後輩には連絡しとくから行った行った!」
「あ、う、うん……。それじゃいってきます」
「らっさい!」
「楽しめると良いなー」
「ふふ。ご心配なく」
「そうだったな」
才と一緒ならいつだって楽しい。いつだって幸せ。口にはせずとも伝わる。
(つか散々見せつけられてんだからわからないほうがどうかしてる)
リリンはカナラから意識をはずすと食後のおやつに戻り、カナラも佐子の部屋を後にした。
「ふぅ……それじゃ後輩に連絡しますかね――起きろおらぁ!!!」
「……うるさっ」
さっきまで朗らかに笑っていたが、才に連絡した途端感情爆発沸点ぶち抜き。
一瞬で才への殺意がぶり返す。
「やれやれ」
それから数分間佐子が騒いでる間におやつを終えたリリンも佐子に黙って帰っていった。
ちなみに、このとき置いていかれたお菓子の袋やらのゴミは佐子が
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