第433話

徹夜こんなことになってしまいほっっっっっっんとうに申し訳ない!」

 なんだかんだ佐子が起きたのは深夜三時過ぎ。

 そこからあれやこれやとカナラの要望を聞いてプランを考えようとしても特に欲もなく。なんなら山に一番食いついたくらい。

 なので人が少なくて手軽にいける高い場所を探した結果――。

「電車片道一時間でちょっと遠いんだけどさ。ここは標高そんなないっちゃないんだけど一応山だよ。てかおしゃれして出掛けるのに富士とか登るわけにもいかないしこんくらいがちょーどいいんじゃないかな。ついでに夜にはそこそこ派手なイルミネーションも見れるみたい」

「夜……夜はできれば皆でご飯食べたいしはよ帰りたいんやけど。坊の都合次第やけどね」

後輩あれの都合は置いとくとして。今は日も短いし、暗くなる前に登ってさ。ちょろっと見て人が増えたらすぐ帰ってくれば良いんじゃないかな? それならたぶん遅くても二十時はちじには帰れると思う」

「なんなら帰りは煙でも吐けよ」

「あ、なるほど。じゃあそうしよかな」

 って感じでパパッと決定。

 昼食なんかは現地で適当に食べれば良いだろうともう半ばなげやり気味。

 決められたのはその程度なのだが、要望を聞き出すのやらカナラの服に緊張してとかで時間を取られて結果現在日も昇って七時を過ぎている。

 ので。今はカナラが作った朝食に手をつけている。

 無論。恋愛面ではぽぽんがポンなカナラだが、それ以外はデキる女。この場をほっぽりだすこともせずロゥテシアに頼めばどうにかなる程度は察せれる。なにせロゥテシアを仕込んだ本人なのだからわからいでか。

「ぁぁ……うめぇ……。毎朝飲みてぇ……」

 とまぁコロナや灰音の食事の心配も無用な今、佐子はカナラの味噌汁を存分に味わえるわけだ。

「そらぁ無理やねぇ~。毎朝通うなら別やけど」

「良いならいきたいれふ」

「やめとけやめとけ。貴様はたかが人畜生だろうが。毎朝出血してたらすぐ死ぬぞ」

「想像できちまうので反論できないわー……ずずぅ」

(んでも、この落ち着く味噌汁の香りと味があればわんちゃん……いや無理か)

 そもそも夜更かし徹夜常習犯なので朝食にありつけるかが問題なことを思い出し、断念するしかない佐子であった。

 美少女のためなら大概のことはしようと思うが、人体の限界もわかっている。もうすぐ卒業なのでこれから毎朝通ったとしても二ヶ月前後。無理が続く期間ではない。

 下手に週一などもダメ。中毒になったら結局暴走して無理してしまう。

 そんなことで体でも壊したら後輩たちとの時間も削れてしまう。目の前の美少女だけに時間をとるわけにもいかないし、大事な後輩たちへの引き継ぎやらもちゃんとしないといけない。

 色々な観点から今日だけのボーナスと考えたほうが佐子にとっては一番良い。だから潔く諦めることとする。

(と、そういえば)

「てか、あの後輩は毎日ご飯作ってもらっちゃったりしてるの?」

「まぁ……そうねぇ。私とろぅちゃんでご飯は作っとるよ」

「通い妻! あぁもう! とことんうらやまけしからん!」

 それはそれとして、美少女に囲まれてお世話もされる生活しあわせを享受している才への殺意は増していくのであったとさ。

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