第429話

「あぶぶぶぶぶぶぶぶ――はっ!?」

 クリスマスにを聞いたら案の定というかなんというか。カナラは顔を真っ赤にして妄想タイムに突入。

 けれど何かに気づいたような顔に変わる

「あ、あかんで坊! 約束! 卒業してからってゆーたやんかぁ!? ついこないだそないな話をしたばかりやないの! やのに……やのに……誘惑するのはあかんてぇ! 揺さぶらんといてぇ!」

「ほれ」

ぁだ!?」

 頭を床に打ち付けようとしたところでリリンに頬を掴まれ、膝が額をカチ上げる。

「ぉぁぁぁぁ……っ」

 さすがにリリンの打撃は堪えたらしく。さしものカナラも悶絶。

「な、なして……?」

「貴様明らかに自傷行為に走るつもりだったろう? 落ち着く為なんだろうが欠片も痛みを感じなければ待ってる間に夜も更ける。なんなら床のが先に壊れるわ。だから一発で済ませてやったんだ感謝しろ」

「あ、うん……お陰様で心静まりました……」

 何十何百と床に頭を叩きつけるであろう未来を予見し、一発で済ませたファインプレーというわけだ。

 うん。実に合理的な判断。

「はぁ……はぁ……! 聖夜に性夜の話しただけでこんなに興奮するとは見た目清楚なのに意外すぎて私はもう限界だぁ! ぶへぁ!!!」

 が、カナラの代わりに佐子の興奮が青天井。佐子の部屋の天井は真っ赤っか。

「……はぁ。やれやれ」

 結局佐子が起きるまでしばし待つことになったのであったー。



「な、なるほど……つまりムッツリさんってわけかい……」

「いやぁオープンだろぉ~。どう見ても」

「ど、どっちでもええやろ? ようは私が助平いう話やんか。……ぅぅ。どうせ年甲斐もなく盛ってますよぉ~」

「いやいや年齢的にはむしろ発情して然るべき。私も貴女たちを見てると盛って盛って堪りません」

「貴様らがヤりたい盛りなのはわかったがそれは置いといてだな――」

「己にヤりたくてもヤれない私の気持ちがわかる!? 美少女にいじめられたいんだよこちとら性的な意味でよぉ!」

 夜も深くなり始め、話を戻そうと試みるリリンだが佐子の魂の叫びに食い止められる。

 そしてリリンとしては珍しい失言がぶちかまされてしまう。

「全くもってわからんな。我とてヤりたいとは思うが……まぁしばらくは良いな。それなりに満足できたし」

「……ぅおぉいちょっと待ちなぁ~。そいつぁどういうことだい?」

「ぁん?」

「あ、ぁ~……」

 ただならぬ佐子の気配に思わず片眉がつり上がり、カナラはリリンの言葉の意味を先に察したのかまた頬が赤く染まっていく。

「あ、あの……つかぬことをお聞きしますが……。ご経験がおありで?」

「あぁ」

「え、誰と――って後輩ヤツしかいねぇよなぁ!? リリンちゃんの純潔をよくもぉ! 加えて今度は艶眞たそも毒牙にかけようってか? 羨ま決死けしからんぞクズやろうがぁ! 今すぐぶち殺してくる探さないでください!」

「そういえば灰音は見せたが親の話はしてなかったな」

「りりんちゃんもうっかりするんやね。意外や意外やわ」

「意識してなきゃそんなもんだよ。それくらいどうでも良かった事柄だしな」

 呑気に話しちゃいるが、佐子の発狂をただ見ているわけじゃない。

 少なくとも部屋の外に行かないように影で捕らえてはいる。

「やめて離して! 私を止めないで! 後輩の下半身むすこを殺して後輩自身あいつも殺す!」

「心中じゃないんや……」

 相手が相手故に運命を共にするつもりもなくリスクを負うつもりもなく一方的に殺意をぶつけようとしてるあたり冷静と見るべきか否か。

 迷いどころだけれどさしあたりすることは。

「どう落ち着けたもんかなー。鼻血より厄介だぞ」

「原因りりんちゃんやけどね」

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