第359話

「こ、こほん」

「なんだ咳か? タバコ吸ってっからだぞ。控えろよ」

「い、今のはそういうんちゃいますぅ!」

 わかってるよ。話を切り出すきっかけだろ? そう怒んなって。

「こほん! こほんこほん!」

 ばあさんやムキになってあえて続けるかい。可愛いねー。

「お風呂も済ませて、お布団も用意して、あとは床につくだけになったけども!」

 布団の上で正座をしてこちらを向くので俺もつられて正座になってしまった。

「坊のお話を聞く前に目ぇ閉じるなんてできません。はよう聞かせて」

 いや別に俺がもったいぶってたわけじゃないぞ?

 落ち着くために風呂~とかすぐ寝れるように布団の準備~とか言い出したのお前だし。

 むしろ、待たせてたのカナラなんだよなぁ~。まぁ良いけど。

「別に大した話じゃないんだけど……」

「大した事ないのに二人になろうやなんて坊は言いません」

 断言ですか。お前に俺の何がわかるんだいおぉん?

 本当に大した話じゃないし。ただちょっと……他に人がいるとこですることじゃないだけだって。

「お前も知っての通り。俺とリリンはその……致しました」

「……っ! ほ、ほうやね……//////」

 ん~! 気まずい。俺から話だしたとはいえ超気まずい。

 だけど、ここでつまずくわけにはいかない。このあともっと大変なことが待ってんだから。

「それでお前とは……。あ~……。約束してたじゃんか? その~。するって」

「そ、そうですね……//////」

 真っ赤を越えた赤面を伏せてモジモジしだすカナラ。釣られたわけじゃないけど。さすがの俺も頬がひきつる。

 な、内容が内容なもんでな。仕方ないって。

「お前と約束したのに他の女には手を出して……。申し訳ないなぁ~と」

「……え? ……あ、あぁ~。そういうお話やったの? そ、そないなこと別に気にせんでもええのに~。私との約束なんてなぁ? 口約束やし。そもそも二年の間誰ともせぇへんとは口にしてないんやから約束破ってるわけでもないやないの。謝るんは御門違いなんちゃうかなぁ~?」

 俺の要件が謝罪と思ったのかカナラはすぐにフォローしてくれる。

 うん。謝罪の気持ちもあるけどちょっと違うんだよ焦るなって。

「元々そういうことしたくないから待ってくれつっただろう? でもしちゃったわけだし。その言い訳はもう通じないだろ?」

「……別に通じなくてもええんちゃう? 私は平気やからそう気に病まんとい――ひゃ!?」

 まだゴタゴタといらないフォローをするカナラの手を引いて布団に横たわらせて頭の横に手をつき覆い被さる。

「ぼ、坊……? な、なにするん……?」

「別に気に病んでるわけじゃない。ただ、言ってることとやってることが違うからそれを正そうってだけ」

「……へ? た、正す……?」

 まだわからないのか。ここまでしてるのに。さすがは筋金入りのおぼこ娘。

 こいつにはわかるようにハッキリ言うか、行動で示さないといけないみたいだ。

「え? え!? ぼ、坊!? なに――んんぅ!!?」

 反論もフォローもさせないように口を塞いでやる。

 さらに――。

「……」

「……!? ……ふぅっ! ……ふぅっ!!!」

 音が漏れないくらい口を密着させながらカナラの口を吸い上げる。

 強く吸い上げる度に鼻息も比例して荒くなっていやがる。

「んっぷぁ! はぁ……はぁ……」

 口を離して表情をうかがってみると。たった数秒のキスでも目をとろんとさせて見事に出来上がってる。

 やっぱお前……。チョロいなぁ~……。

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