第353話

「お、おおう……お前ら見違えたな……?」

 迎えに行くと、全員漏れなく夕美斗が妹さんとやり合う直前程度までに存在の質を上げていた。

 つまり頭灰色になる前の段階だな。それでも十分人間やめかけてるぞー。自覚あるかー。お前ら~。

「つかお前頭直してもらわなかったのか?」

「出会い頭にとんでも発言やめたれよ。ゆみちゃんが可哀想だろ?」

「頭のネジの話はしてねぇ。髪の色だよ。髪の色。まずこの中でネジ飛んでるのはお前とネスさんだけだ気にすんな」

「ちょっと待てなんで私がディスられとるん?」

「ついでに私もディスったね坊や。否定しないけど」

 そりゃ伊鶴きさまが俺に濡れ衣着せようとしたからだよ間抜け。

 戦闘力は上がってたとしても頭のレベルはそのまんまだなお前は。

「で? なんで直さなかったんだ? ネスさんにかかれば元の黒髪になるだろ?」

「当然。巨大なわんちゃんを人間に変えるよか簡単だよ。姿

 ん~。なんか新たな情報ぶちこまれてる気がするけど。その件はロッテを視て直接判断するとしよう。今は夕美斗のほうに集中しよう。うん。これは決して思考放棄でない。思考放棄でない。

「ん~。この髪はどうしてこうなったのかはよくわからないが、ニスニルを無理矢理付き合わせてしまった結果だし。自業自得だろう? だから自然に元に戻るなら反省の意も込めてこのままにしておこうと思ったんだが……」

「残念ながら細胞レベルで髪の色素がその色になるようになっちゃったから染めたりまたいじくり回したりしない限りそのままだね。灰色のまま」

「ということらしい」

 はぁ~ん。そらまた律儀に難儀なこって。

 まぁ、本人がそのままで良いんなら他人の俺が口を出すことじゃないな。うん。

「灰色でも似合ってるし果たしてこれは禊になるのだろうか?」

「余計なことを言うな派手頭」

「実は地毛です」

「わかりやすすぎる嘘はやめましょう。冷めます」

「笑えないジョークほど迷惑なこともなんだよミス伊鶴」

「皆辛辣ぅ!」

 やれやれ。結局いつものノリだよ。

 伊鶴だけじゃなく。全員頭のほうは変わってないな。変わってる方が問題だけど。

 つまり俺は大問題。うぅ……。後悔が止まらねぇ……。

「とにかく。あんたが来たってことはお迎えってことでしょ? 皆さっさと同調解くよ」

「正確には存在融合らしいぞタミー」

「……ちょっとした言葉の綾よ。つつかないで」

 少し恥ずかしがりながらも全員に促す。

 明日からまた授業だしな。もちろんお迎えだよ。

 さてさて。こいつらもかなりレベルアップしたし。明日からの午後の授業は俺も気合いれないと――。

「「「……」」」

 え、なに? なんで夕美斗以外ぶっ倒れてんの?

 ネスさんの特別授業は上手くいったんじゃ……。あ、そっか。そういうことか。

「どうやら融合を解いたことで負担が一気に来たらしいな。融合をしてたら前段階のアレも契約者の体力を借りて耐えられるが、戻してしまえばこうなるのは必然だな。一言言っておけば良かったかな?」

「「「本当だよ……っ」」」

 首をかしげる夕美斗にぶっ倒れ組から総ツッコミが入る。

 夕美斗よ。お前も中々に抜けてるよな。体だけじゃなく、少しは頭も鍛えた方がいいんじゃないかな?

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