第296話
「ハロハロ~♪ 待っていたぜマイボーイ♪」
「誰もあんたのもんになった覚えはないんだけど?」
中庭のど真ん中で俺を出迎えたのはインテリメガネスーツ白衣姿のアレクサンドラ。
「……お久しぶりです。兄さ……ん」
「……あれから一ヶ月ちょいしか経ってないけどな。……っていうか」
……と、小脇に抱えられた我が妹結嶺。
「アレクサンドラの格好とかはさておき、お前はなんで抱えられてんの?」
「存じ上げません。目があったら抱えられてそのまま早数十分です」
あ~だからさっきから諦めの表情なんだなお前。
この数十分きっと激闘を繰り広げた末のその顔だと勝手に思っておくよ。
「で、なんで抱えてんの? ついでになにその格好」
「よくぞ聞いてくれたねボーイ!」
聞いたら絶対めんどうだけど聞かなきゃ話が進まないと思ったからな。いたしかたなくだよいたしかたなく。
「こっちで教師になろうと言ったものの、交流が終わってしまえば特に仕事がなく。せめて格好だけでも教師っぽく、
んー思った通りというか思った以下というか。大した理由じゃなかったわ。
ようは気分の問題じゃねぇか。ファッションつってるし。真面目にやる気さらさらねぇだろ。
「で、小脇のほうは?」
「勝手にそのへんぷらぷらして変な物拾い食いしないようにと思って」
「しませんよそんなこと……」
「うちの妹子犬じゃねぇんだわ?」
「あ、本当?」
ツッコまれてようやく結嶺を解放。
「はぁ……」
抱えられてたせいでよれた服を直す。
よく見たら今日は制服じゃなくて私服だな。
それもちょっと気合をうかがわせる清楚なワンピース。
髪も前より艶があるし確実に近日中に美容院にいってるだろうしカチューシャなんてつけてまぁ色気付きやがって。
とか、直接言ったら絶対怒るのでここはちゃんと媚売っとこ。
人間を故意に怒らせるのは戦闘中の挑発だけで良いしな。
「結嶺。今日はずいぶんとお洒落だな」
「え!? あ、あの……。はい……。今日はプライベートですし……。制服はおかしいので私服で来ました……。えぇっと……どうでしょうか?」
このどうでしょうかはおかしくないがじゃなく似合ってるかどうか、可愛いかどうかを聞いてるんだろう。いくら鈍い俺でもわかる。
そしていつもならひねくれた俺はちょっと外した答えを言うんだけど今回の相手は結嶺なのでそうはいかない。ちゃんと求めた答えをくれてやる。
「あぁ。似合ってるよ。とってもな」
「……!? は、の……あの……あり、ありがと……ごじゃましゅ//////」
いえす。地雷を踏まずに済んだ。ちゃんと正解を引き当てた。
他の女ならともかく身内怒らせるとほんっとになんとも言えない気持ちになるからここは冷静に回避しておきたい。
「……ん?」
地雷を回避したと喜んでいるとアレクサンドラに袖を引っ張られ振り向くと。
「あ~はん」
「……」
セクシーポーズをとっていた。
あのさ……。声と台詞はともかくガチのモデルみたいなちゃんとしたポーズを取るんじゃないよ。よりうざいから。
「チラッ? チララ? ばきゅん♪」
ウィンクで感想催促すな。……似合ってるけど。
俺が結嶺を誉めたのは怒らせたくないだけでそもそも俺は誉めるほうが希な男だぞ。変な期待してんじゃねぇ。
「ともかくあれだ。結嶺。せっかくだから一緒に回るか。……色々話したいこともあるし」
「あ、はい。喜んで」
「まずなんでまた連絡もなしに学園に来たかをだな」
「……すみません」
「謝れつってんじゃねぇんだよ」
ま、理由は大体わかってるけどな。それが俺の話したいことに関わってることも。
「え、あれ? お、おーい!? 無視はダメだよ!? ジェントルマーン!?」
無視して行こうとしたら後ろから叫びながら追いかけてきた。
チッ。そこで呆然と立ち尽くすかすねてれば良かったのに。
「……
「憐名のヤツが良い男見つけたって言うから来てみたけど。結構人多いわ~。見つけるの手間過ぎ。めんどくさくなってきたぁ~……。ナンパ待ちに切り替えよっかな?」
「……お、おえ。……ひ、人が多い。やっぱり来るんじゃなかったっ。興味だけで衝動的に動くんじゃなかったっ! 私のバカ野郎!」
才達がトラブルの臭いを漂わせている間、他でも運命の歯車がまた一つ――いや三つほど加わろうとしていた。
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