第23話 初体験
「ギンジ殿!援護をお願いしやす!」
「わかった!<<フレイムボール>>!<<ウインドカッター>>!」
ゲゲ!ギィ!
「助かりやす![気配断ち《ハイドアンドシーク》]!」
スゥー・・・
ゲ?ゲゲギ!?
俺の初級魔法2発でゴブリンがひるんだ所にギャレスがスキルを使った・・んだよな?
ギャレスの存在が急に希薄になったぞ。集中すれば普通にそこにいるのがわかるんだけど注意をそらすといるんだかいないんだかとても曖昧だ。
「スコットの無念を思いしれ。」
ズバン!
ゴブリンはギャレスが一瞬で消えたように見えただろう。狼狽しているところにギャレスの斬撃が背後から一閃、ゴブリンは息絶えたようだ。
ゴブリンを倒した後ギャレスの姿がふっと濃くなった。さすが騎士団副団長だ。俺も負けてはいられない。勇者だからな。
「俺も行くぞ!覚悟しろよ!」
ゲ、ギ、タ、タスゲデ・・
「きゅ、急に攻撃してきたのはお前らだろう!今さらふざけ・・・!?」
ゲヒャヒャヒャ―!
ギィン!
「ぐあっ!ち、ちくしょう!」
「ギンジ殿!こいつらにそんな感情はねぇ!全て騙すための演技ですぜ!」
「わかってる!わかってるけど・・・!」
ぐっ・・低スペックの俺にとってはだが見た目以上に力があるな。
ゴブリンのナイフをなんとか刀で受けられたが・・頭ではこいつは魔獣、人ではないとわかっているんだけどやっぱりあんな風にされてしまうと勇人同様に躊躇してしまう。
刀は・・・駄目だ。まだ刀身は漆黒のままだ。いつになったら使えるんだよ!
「全くだらしないですわね![パラライズウィップ]!」
ゲゲ!ビビビビィ!
「姫崎!お前!防御陣の中にいなくてもいいのか!?」
姫崎がメーシーの防御魔法の壁から出てきてゴブリンを鞭で拘束した。パラライズって事は麻痺攻撃だろう。ローパー・・・は今はいいか。
「あんな粗末なモノぶら下げてるような下衆な連中相手に黙っていられると思って?とっとと倒して勇人様を助けにいくのですわ!」
その理屈でいくと粗末でなければいいのか?
「ギンジ殿!今だ!麻痺が効いているうちに!」
ギャレスの叫びを聞き痺れているゴブリンを見る。今なら俺でも・・・
ビビ・・ゲギャギャ!
「須藤君!早くなさい!もうすぐ効果が切れますわよ!」
「ギンジ殿!」
や、やるしかない!
「うおおおおお!!」
俺は刀を横に振りゴブリンを両断した、はずだった。
ゴキャ!
「!?」
力が足りなかったのか人に近いものを切った感触にあてられたのかはわからないが俺の刀はゴブリンを両断出来ず3分の2程で止まってしまった。
グギャ・・イダ・・イ・・ゲェ!!
ゴブリンは絶命していなかったのか体の3分の2程がちぎれ臓物をまき散らしながらナイフを持ち倒れこむように突き刺しに来た。ダメだ。完全にびびっている。身体が動かない。
「ギンジ殿!」
ズバン!
ゴブリンの背後からギャレスが相手の首を撥ねてトドメを刺した。
「ギンジ殿。初めて人型を切った時には誰でもそうなりやす。お気になさらず。」
「ギャ、ギャレス!・・・おええぇぇぇ!」
俺は吐いた。あの皮膚を切り、内臓を破る感覚がこみ上げてきてしまった。
ラビ―を切った時とは違う。ロックゴーレムも双飛竜で間接的だった。やはりどこかゲーム気分が抜けていなかったのだろう。切られれば死ぬ。切れば相手も死ぬ。
・・・だがこうしてるわけにもいかない。姫崎の言う通り早く勇人たちの方へ向かわなくては。
「ぐおっ!クソが!オーラナックルが打てればこんなやつら!おい!勇人!大丈夫か!?」
ギィン!ガィン!
「はぁ、はぁ、こいつ・・!ホーリーバイn・・」
ゲヒヒヒヒ!
グサッ!
ブシュウウ!
「ぐああああ!!」
「勇人!」
俺たちが勇人たちの下へ着いた直後ゴブリンのナイフが先程負傷した勇人の肩口をもう一度抉っていた。同じところを狙うとは!勇人がスキルを使おうとした隙を狙ったようだ。勇人の肩から少なくない血が流れている。
って相手のゴブリンが一体増えてるぞ。亮汰は2体を相手にしていて防戦するしかない状況に陥ってしまっていた。
「勇人様!あの腐れちん○野郎!ぶっ殺してやりますわ!」
姫崎が勇人が刺されたところを見てキレた。凄い言葉が聞こえた気がするが現状聞かなかった事にするしかないな。
「杏奈ちゃん!少し相手を拘束して!」
「真弓さん!わかりましたわ![パラライズウィップ]!」
ゲヒャッハァ!
「くっ!外しましたわ!」
「ありがとう十分だよ!行くよ![マジックアロー:
パアァア
東雲さんの放ったマジックアローが勇人の目がけて飛んでいくと勇人の目の前で矢がはじけて勇人を優しい光が包み込んだ。
治癒と言っていたから回復魔法を込めたのだろう。勇人の傷が塞がっていく。東雲さんはどんどん凄くなっていくな。
「こ、これは!痛みが引いていく!真弓!助かる!これならいけるぞ!おおおお![閃洸牙]!」
ザザザザザザン!
ギィィエエエェ・・・
勇人のスキルがゴブリンを直撃した。ゴブリンは無数の斬撃を受けて倒れたようだ。
「ふぅふぅ、なんとかなったな。真弓のおかげだ。ありがとう。それにしてもゴブリンを切る感覚ってのは嫌なものだな。」
あの感触をその程度で済むのか・・スキル、閃洸牙を使ったからあまり実感がないのかな?
「勇人様・・・」
「ううん。うまくいって良かった!杏奈ちゃんが引きつけてくれたおかげだよ。」
「おい!こっちもなんとかしてくれ!こいつらちょこちょこしやがって当たらねぇ!」
「まったく。図体ばっかりデカくても当たらなくてはどうという事はない!やで![フォールダガー]!」
ザン!ザン!
ギギ・・! ゲギャギャ・・!
ぴょーんっと西城が流れるようにゴブリンに一撃ずつ与えていった。あの重力スキルを使ったのか。ゴブリンの動きが急激に悪くなった。
「お!西城やるじゃねぇか!ぶちかますぜ!オーラナックル!・・・あ?」
ギ・・ガ・・!
ギン!
「うおっ!なんでスキルが打てねぇんだよ!」
動きが鈍いがゴブリンが反撃してきた。動きが鈍い為亮汰も受ける事は難しくないようだが。
恐らく魔力切れなんだろう。押えろって言われてたはずなのにまた使ってたのか。
キラッ
ん?刀の鍔部分にある竜の目が一瞬赤く光った気がした。
もしかすると・・やっぱり。刀身がぼうっと青白く光っている。やっと魔力が貯まったようだな。
「亮汰!伏せろ!」
俺は双飛竜を打とうと刀を構えた。先程ゴブリンを切った時の感触が蘇ってきてまた吐きそうになる。
俺が殺らなくてもギャレスやライーザさんだったり誰かに殺ってもらえばいいかとも思ってしまう。
でも、今俺が逃げて誰かが怪我したらどうする?先のスコットの様に死んでしまったら?ギャレスも言っていた。やらなければやられる。そう言い聞かせてスキルを放った。
「いけ![
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