出会い
あやかがその少年と出会ったのは皇暦2084年の春先であった。少年の名は
「はじめまして。敦賀と申します。侍隊の入隊窓口はこちらでよろしかったでしょうか。」
まだ戦地でもないのに、緊張した面持ちで姿勢を正し、頭を下げる様が可笑しく、あやかは少し笑ってしまった。
「はい。そうですよ。書類を拝見しても?」
「はい!こちらです。」
この時、士郎はこれから自分が進む道の困難さを分かっていない。彼は自分の家に国軍からの朱い封筒が届いた時不安もあったが嬉しい気持ちもあった。なにしろ、学校での席次は良くて中の下で、運動もそれほどうまくない。そんな状況だったので自分が一体、世の中のにどのように役にたてるのか皆目検討がつかなかったのだ。もしかしたら自分は世の中の役には立てないのかもしれない、そう思うこともあった。そこで朱い封筒が来た。この封筒がとても重要であることは周りの反応から察した。両親は息を呑んだ。封筒を開けてみると二枚の紙が入っており、一つは侍隊への入隊依頼であり、もう一つは入隊するための届出書であった。それぞれの紙の右上には日付と朱く物々しい幕僚長印が押印してあった。士郎はここまで自分が世の中から大事にされたことはないような気がした。士郎は決めた。
「母さん、僕は行って侍隊に入隊したいと思います。そして皆を守ります。」
母は泣いた。
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