第561話

「九条さん、こちらが私とロイドさんがお知り合いになった切っ掛けとなる物です。どうぞお受け取り下さい。」


「おう、ありがとうな……へぇ、コレってポーラが働いてる所で出してる雑誌か?」


「はい、ソレは今から数年前に発行された物ですね。そして読んで頂きたいのは……表紙にもある王立学園の特集記事ですね。」


 集合時間ピッタリに姿を現したポーラから少しだけヨレた1冊の雑誌を手渡された俺は、パラパラとページをめくって彼女に指定された記事のある部分を発見した。


「おっ、コレか……ん?ここに写ってるのってもしかして……ロイドか?」


「ふふっ、恥ずかしいけどその通りだよ。私が学生をしていた頃の写真だから、まだ子供っぽいだろう?」


「まぁ、そう言われて見れば確かに……?」


「おじさん!私にも見せて下さい!……うわぁ、ロイドさんとっても可愛いですね!学生服姿がとっても素敵です!それにほら、ちょっとだけ照れていますよ!」


「……本当だ。笑顔が何時もと違う。」


「あはっ、それは個人的に気に入っている1枚ですね!なので上の人にお願いして、何とか掲載させて貰ったんですよ!そうしたら、この記事を読んだリリアさんに声を掛けて頂いて……そこからロイドさんのファンクラブ、広報担当になったんです。」


「ふーん、そんな歴史があったのか……おっ、ルゥナさんだ。見た目的には今とほぼ変わってないみたいだな。」


「そうですね……って、おじさん?それは何処を見ての感想ですか?」


「……マホさん、そうやって勝手に邪推して怒るのは止めてくれます?言いたい事は嫌でも理解出来るけど、さっきの発言にそういった意図は一切無いからな……!」


「あぁ、ルゥナ先生ですね!いやぁ、こうして見るとやっぱり大きいですよねぇ……何度か揉ませてもらった事があるんですけど、柔らかさも本当に凄くって……」


「ポーラさぁん?!その部分は盛り上げなくて良いから!マジで!それよりもほら!他にも色々と知ってそうな顔があるからそっちに注目しようぜ!なっ!」


 余計な情報を喋り出したポーラの口を遮って載っている写真やインタビュー記事に慌てて話題を移した俺は、その後も真横から送られて来る熱い視線を感じないフリを続けていった……!


「ふぅ、こうして改めて見てみると懐かしさが込み上げてくるよ。そう言えば当時はポーラもまだ駆け出しの新人記者だったね。」


「えぇ、王立学園の卒業生という理由でその記事を担当させて頂きました……だから読み返してみると恥ずかしく感じる部分もあるんですが、それも良い思い出ですね。それにその縁があって皆さんともお知り合いになれたので、本当に嬉しいです」


「えへへ、私もポーラさんとお知り合いになれて嬉しいです!」


「んぅ~!マホさん可愛い!その表情、頂きますね!」


 パシャパシャっとカメラのシャッターを切るポーラと照れながら撮影をされているマホの姿を呆れながらしばらく見守った後、俺達は話題を変えて今日の予定についてロイドから聞かされる事になった。


「マホとソフィには昨日の内に話をしておいたんだが、今日は実家の方に戻ろうかと思っているんだ。」


「実家?って事は、エリオさんとカレンさんに会いに行くのか?どうしてまた?」


「ふふっ、特に理由は無いんだが……まぁ、最近忙しくて顔を見せてないからかな。それにファンの子達に私の事をより深くしってもらうのが目的だと言うのなら、私の両親にも話を聞くのが良いと思ったからだね。どうだい、ポーラ?」


「はい!もう喜んで!お断りする理由なんてありませんよ!」


「良かった、それでは早速だけど出発しようか九条さん。」


「あぁ……ん?俺だけ?」


「あっ、すみませんおじさん!大勢で押し掛けるのは迷惑だと思いますので、私達は大通りの方でお買い物をしていますね!」


「2人共、よろしくね。」


「そうか……まぁ、そういう事なら仕方ないか。よしっ、そんなら手土産でも買って行くとするか。ポーラ、何処か良い店を知ってるか?」


「えぇ、お任せ下さい!王都のお偉方にご挨拶する際に利用する店がありますので、そこにご案内させて頂きますね!それじゃあ行きましょうか!」


 その言葉を合図にしてロイド宅を後にした俺達は大通りの途中で2人と別れると、ポーラに案内された店でかなりお高めの菓子類をそれなりに買い込んでから貴族街に向かって行くのだった。

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