第491話

「……それにしても不気味ですね……どうして学園の中にこんな場所が隠される様に存在していたんでしょうか……」


「隠される様にってか、実際に隠されてた訳だけどな……それにこの壁際に並んでる人形共……よしっ、とりあえず動き出す前にぶっ壊しちまっうか。」


「いや、ちょっと待てって!それは流石に止めといた方が良いと思うぞ!こっちから手を出して防衛装置みたいなのが作動しちまったら面倒だろうが!それにこの数……全部が動き始めちまったら一瞬で取り囲まれて終わりだぞ!」


「チッ、泣き言ばっかで情けねぇ奴だな。少しぐらいは男として根性を見せようって気持ちはねぇのかよ。」


「うぐっ!あ、あるに決まってるだろ!ただ、そういうのは今じゃなくて……ほら、あの扉を通った先で待ってるであろうボスをぶっ倒す時に見せるつもりなんだよ!」


「ふーん、そりゃあ楽しみだなぁ。けど、それならそれで人形共は先にどうにかした方が良いんじゃねぇのか?戦闘が始まった後にコイツ等が動き出しやがったら背後を取られる事になるんじゃねぇのかよ。」


「あっ、そうですよね!でしたら、今の内に魔法で拘束しておきましょうか。」


「……ルゥナさん、恐らくですけど今は魔法を使えないと思いますよ。」


「えっ?そ、そんなはずは………あれ!ど、どうして……?」


「……マジかよ……魔法が発動しやがらねぇぞ……!オイ、どうなってやがんだ!」


「お、俺に聞かれても困るっての!こっちだって、職員室で魔法を使おうとした時に偶然気付いたばっかりなんだから!つーか、さっき人形をぶっ飛ばした瞬間に魔法が使えないって思わなかったのか!?」


「そんなもん思う訳ねぇだろうが!そもそも魔法なんて使ってねぇんだからよ。」


「うぇっ!?あんだけ吹っ飛ばしてたのに魔法を使ってなかったのか!?」


「あぁ、あんなザコに全力を出す必要はねぇと思ったからな。」


「う、嘘だろ……」


 だたの腕力だけであの威力って……この間の戦闘でメリケン付きの拳を食らったりしなくてマジで良かった……!避ける事に専念してなかったら確実に骨が粉砕されるレベルの痛みを味わってたってだろうからな……ヤン子、マジでヤバすぎんだろ!?


「……仕方ねぇ、戦闘が始まったらオレが人形共の相手をしといてやるからテメェは速攻で敵をぶっ倒しやがれ。」


「お、おう……ま、任せとけぇい……!」


「……九条さん、声が震えてますよ。大丈夫ですか?」


「え、えぇ!大丈夫に決まってるじゃないですか!」


 ボスを倒すのが先か俺がヤン子にぶっ飛ばされるのが先か……とてつもない重圧を感じながら扉の前に立った俺は、取っ手を握り締めると振り返ってまっすぐこっちを見つめて来ている2人と視線を交わした。


「……ルゥナ先生はオレが命懸けで護ってやる。だから……しっかりやれよ。」


「わ、私も頑張ってフィオさんを護り抜いてみせます!」


「はい、頼りにしてますよ……それじゃあ、開けますっ!」


 魔法は使えない、周りに使えそうな武器も存在しない……そんな最悪な状況の中で大声を出して気合を入れなおした俺は、何時でも動き出せる様に体勢を整えると目の前にある両開きの扉を勢いよく開いていった!………………へっ?


「ほっほっほ……皆さん、お待ちしておりましたよ。」


「が……がが……がが、が………学園ちょおおおおおおおおう!!!!!????」


「え、えええええええええええっ!!?!?!?!!!」


 何処を見渡しても怪しい物ばかり置かれている不気味な雰囲気が漂っている広々とした部屋の奥に予想もしていなかった人物が、初めて会った時と変わらない微笑みを浮かべている姿を目撃した瞬間、俺とルゥナさんは驚きのあまり2人揃って大絶叫をしてしまうのだった!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る