第450話
「……って感じで気を遣って声を掛けて来てくれるのは嬉しいんだけど、居候させてもらっている身としてはそこまで丁寧に接してくれなくてもって思うのよね。まぁ、それがあの人達の仕事だからって言っちゃえばそこまでなんだけど。」
「はっはっは、それが分かっているのならばお主も受け入れるしかあるまい。それに時間が経てば慣れてくる、貴族の暮らしとはそういうものじゃ。」
「ハァ……アンタって本当にお気楽で良いわよね。アタシは朝昼晩って豪華な食事が出て来る事にだってまだ慣れてないのに。」
「おぉ、それは興味深い話じゃな!どれ、今度お邪魔させてもらうかのう!」
「ちょっと、あの子達に迷惑を掛ける様な事はしないでよね。」
「安心せい!このわしがそんな事をする訳がないじゃろ!のう、九条?」
「……………そんな事よりも、どうしてお前達がここに居るんだ?」
斡旋所で報酬を受け取って我が家に戻って来たら当たり前みたいな顔でリビングに居たからずっと聞くに聞けなかったが、これはマジでどういう状況なんだ?
もしかして冷えた頭が見せている幻覚なのかもって考えて風呂に入って体を温めてみたりしたけど、やっぱり2人共ソファーに座ってくつろいでるし………
「別に不思議がる様な事じゃないでしょ。アタシ、今度アンタの所に寄らせてもらうって言ったじゃないの。もしかして忘れた訳?」
「……あぁ、そう言えば………いや、だとしても急すぎないか?いきなり来られても困るんだが……」
「ゴチャゴチャとうっさいわね。それじゃあ何よ?折角ここまで来たって言うのに、アタシ達に帰れって言いたいの?」
「そうは言ってないが………はぁ………ダメだ、頭が回んねぇ……考えるのも面倒になってきたし、もう良いや……とりあえずは遊びに来たって事で良いんだよな?」
「えぇ、本当は来るつもりなんて無かったんだけどね。」
「おや、そうなのかい?それならばどうしてここに?」
「コイツに無理やり引っ張られたからよ。アンタ達に用事があるって言ってて、そのついでに一緒に来てはどうだとかって感じでね……それにしても驚いたわよ。まさかアンタ達が同じ家に住んでたなんてね……コレ、リリアに言っても大丈夫なやつ?」
「いや、それは頼むからマジで止めてくれっ……!リリアさん、それとライルさんは隣にある家にロイドが住んでいると思ってるんだ……もしこの事がバレたりしたら、俺は2人に……いや、ロイドファンの全員に殺される事になっちまう……!」
「ふーん、そうなんだぁ……へぇ……」
「ユ、ユキさん?その笑顔は……何でしょうかねぇ……?」
「べっつにぃ~……でもでもぉ……アタシ、欲しいアクセサリーがあるんだけど……アンタ、どうしたら良いと思う?」
「………喜んで、贈らせて頂きます!」
「うふふ、それじゃあ交渉成立ね。まぁ、そこまで高い物じゃ無いから安心なさい。アタシってば庶民感覚を持ち合わせている神様だからね!」
「ははぁ~!ありがとうございますぅ~!」
「……おじさん、レミさんから話の続きを聞きますけど良いですね。」
「お、おう!それで……何だっけ?用事?それってどんな内容なんだ?」
ジトッとした目つきで呆れた様な表情をみせているマホからサッと視線を逸らした俺は、話を誤魔化す為にレミの方に勢いよく振り向いた!
「うむ、実はエリオから伝言を頼まれてのう。明日、10時頃に屋敷を訪ねてほしいそうじゃ。」
「あ、明日か?そりゃまた随分と……訪ねてほしい理由は?」
「さぁのう、詳しくは言えんがお主達に頼みたい事があるそうじゃ。詳細については会った時に教えるつもりみたいじゃぞ。」
「そ、そうか……ロイド、何か心当たりは?」
「いや、特には何も聞いてないよ。」
「……何だろう?」
「うーん……もしかして厄介なモンスターが出現したとかって話ですかね?だから、皆さんに討伐してほしいとか。」
「いや、それなら斡旋所に頼んでクエストにすれば良いんじゃないのか?そうすりゃ俺達よりも腕の良い冒険者が集まって来るだろ。報酬もそれなりに良いだろうし。」
「それは……まぁ……だとしたら何なんでしょうか?」
「さぁな……とりあえず明日になったら言われた通りに行ってみるか。」
「うん、そうしようか。」
「……強いモンスター……」
「ソフィ、期待している所を悪いんだがソレは無いと思うぞ。」
「はっはっは、どちらにせよエリオに聞いてみなければ分らんと言う事じゃな。」
「……いや、そりゃそうでしょうよ。」
こうして明日の予定が決まった俺達は、なんやかんやとウチに泊まる事が決まった2人をそれなりにもてなしながら時間を過ごしていくのだった。
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