「……ねぇ、ノルウィンドの時も思ったんだけどアンタ達って旅行をする度にこんな良い宿屋に寝泊まりしてる訳？」

「……うん、お前が言いたい事は分かる……」

　今日もまたエリオさんが予約していれていたお高い宿屋の一室にやって来た俺は、ユキからアンタには分不相応だろ的な視線を受けながら苦笑いを浮かべていた……

「ここってどう考えても一端の冒険者が利用する宿屋じゃないわよね？大丈夫なの？幾らロイド達が貴族のお嬢様だからってそこに甘えてばっかりで……これじゃあ安い宿屋に泊まった時に落差があり過ぎて感覚がおかしくなっちゃうんじゃないの？」

「いや、確かにそう思いたくなる気持ちってのは理解出来るんだが……ほら、折角の厚意に甘えないのも失礼かなと……それと一応、そうならない様に心掛けてるつもりではあるし……さ？」

「……まぁ、アンタ達にとってコレが普通だって言うんなら別に良いんだけどね。」

　恐らくこれまでの生活とはあまりにもかけ離れ過ぎているからそんな言葉が口から出て来たんだろうが……ユキ、お前が感じている不安は２週間ぐらい過ぎちまったら無くなるっていると思うぞ。

　だってトリアルに戻ってから暮らす事になる家は、俺達が住んでいる普通に家とは違ってガチの貴族が住んでいる豪勢なお屋敷なんだからな……頼むから贅沢を覚えた小生意気な美少女神様にはならない様にしてくれよ……

「おじさーん！こっちに来て一緒にお菓子でもどうですか！今なら淹れたての紅茶も付いてきますよ！」

「はいはーい、それじゃあ頂くとするよ……」

　ユキが特定の層には需要がありそうなキャラに変貌しない事を祈りながらお茶会に参加してから数十分後、話題は俺とソフィが皆と別れた後の事になっていった。

「ふふっ、やはり時間帯だからなのか学生の姿が数多く見られたね。それにどういう訳なのか、私達の方に視線を向けながらヒソヒソとお喋りをしていた子も居たよ。」

「あはは……こう言っては失礼かもですが、少しだけ居心地が悪かったですよね。」

「おーっほっほっほっほ！私としては、ロイド様の美貌がより多くの人々に知られた事に喜びを感じていましたわね！」

「そ、そりゃ良かったな……そんで？そっちはどんな感じだった……って、その顔は色々と大変だったみたいだな……」

「えぇ、本っ当にね……コイツ、自分が興味を惹かれる物を見つけたらすぐに１人でフラフラと……おかげで観光どころじゃ無かったわよ……」

「はっはっは！いや、すまんすまん！王都は美味しそうな食べ物が至る所にあるから無意識の内につい向かってしまってのう！じゃがそれもまた、良い思い出じゃろ？」

「何・処・が・良い思い出なのよ！アンタのお守りをしていたせいで折角王都に来たって言うのに何にも見れなかったのよ！？責任取りなさいよね！」

「い、いひゃいいひゃい！はほ！はふへへふへ！」

「ユ、ユキさん！レミさんも反省しているみたいですしそれぐらいで……あぁもう、おじさんも見てないで手を貸して下さ～い！」

「……やれやれ、こりゃまた随分と賑やかになっちまったもんだな。」

　神っていう対等な存在だからこそ出来るやり取りをしている２人を見ながらそんな事を呟いた俺は、ぷんすか怒りまくっているユキをなだめてレミを助け出す為に腰を上げて苦笑いを浮かべるのだった。

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