第430話
無力感に打ちひしがれながらも何とか立ち上がって城への侵入を阻もうとしてくるゴーレムの攻撃を掻い潜って閉ざされた扉の前までどうにか辿り着いた俺は、何度か魔法を撃ち込んでみたんだが……
「クソっ!こんだけやっても傷1つ付かねぇのかっとと!?」
「ちょっとアンタ!何時までもそこで遊んでないでさっさとアイツを連れて来なさいって言ってるでしょ!早くしないと陽が暮れちゃうじゃないの!」
「ハァ!?何を偉そうに……!ゴチャゴチャ言ってないでアリシアさんを返せ!」
「だからアイツを連れて来たら返すって言ってんでしょうが!全く、面倒な奴ねぇ!ちょっと、アンタからも何とか言ってやってちょうだい!」
「え、えぇ!?あ、はぁ……く、九条さん、聞こえますか?」
「アリシアさん!?だ、大丈夫なのか!怪我とかしてないか!」
「は、はい!今の所は……え?……い、いや!それはちょっと……」
「ど、どうしたんだ!何かあったのか!?」
城の方から聞こえてきたアリシアさんの声に戸惑いを感じて焦りながら声を張って尋ねてみると、何故だか急にわざとらしい咳払いみたいなものが聞こえてきて……
「……きゃ、きゃー……う、うぅ……た、たすけてぇー………」
「………へっ?」
「あ、あー……こわいですー……は、はやくわたしを………も、もう無理ですっ!」
「あっ、ちょっと待ちなさいよ!」
「…………」
「ほら、部屋の隅っこでいじけてないでこっちに来なさいよ!ほら、無理やり演技をさせちゃったのは謝るから!」
「うぅ……ダメです……あんな恥ずかしい……」
「だ、大丈夫よ!アイツもきっと、アンタの事を心の底から助けたいと思ったに違いないわ!っ!」
「……ア、アリシアさん!すぐに皆を連れて戻って来るから待っていてくれ!おい、お前!彼女に指一本触れたら許さないからな!分かったか!」
「え、えぇ勿論よ!それじゃあアンタ、早い所アイツをここまで連れて来なさい!」
そんな台詞と共にアイツの声が聞こえなくなったので、俺はスノードに足を乗せて魔力を込めると来た道を戻り始めたんだが……
「な、何なんだこのイベントは……気持ちの処理が追い付かねぇんですけど……!」
マジでさっきまでのシリアス展開は何処へ行っちまったんだ!?つーか、あんなに悔しがってたのがバカみたいじゃねぇかよ!?
「……いや、今はそんな事を感じている場合じゃない!さっさとアリシアさんを救い出して、こんなふざけたイベントは終わらせてやる!……それにしても、アイツってマジで何者なんだ?………もしかして………」
頭の中に浮かび上がって来た考えが正しいのかどうか、それを確かめる為にも俺は吹雪に襲われながらスノードを更に加速させて皆が待っているはずの休憩所に急いで向かって行くのだった。
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