第414話

 いきなり発生した再会イベントにどう反応したら良いのか迷って視線を下げると、パアッと明るい笑顔を浮かべていたシアンと目が合った


「九条さん、こんな所で会えるなんて凄い偶然ですね!私、とっても嬉しいです!」


「あ、あぁ……俺も嬉しいよ……でも、どうして2人がここに?」


「えへへ、私達はお父様がお仕事の関係でノルウィンドに用があるとの事でしたので旅行も兼ねて付き添わせてもらったんです!そういう九条さんは、どうしてこの街にいらっしゃったんですか?」


「えっと、そうだなぁ……簡単に言えば、そっちと同じで旅行だな。2人も見舞いに来てくれたから知ってると思うけど、俺ってついこの間まで入院してただろ?それで傷を癒す為って目的でノルウィンドまで来たんだよ。」


「なるほど、そうだったんですね!あっ、でも他の皆さんはどちらへ?もしかして、九条さんお1人でいらしたんですか?」


「いや、そういう訳じゃなくて……皆はまだ温泉に入っていてな。何時まで経っても出て来ないから、先に遊技場に足を運んでみたんだよ。そうしたら……」


「私達と運命の再会を果たしたって事ですね!」


「あぁうん……運命の再会かどうかは分からないけどな……」


「いえ、運命の再会に決まっていますよ!お姉様もそう思いますよね!」


「へっ?!あ、あぁいえ……そうなのかし……ら?」


「そうですよ!これはきっと、神様がお姉様と九条さんをおにあむぐっ!?」


「シ、シアン!大きな声で何を言おうとしてるの!」


「むっ、んぐぅ!?」


「ちょっ、アリシアさん落ち着いてくれ!ほら、皆がこっちを見てるからさ!」


 ……そんな事がありながらもどうにかこうにか話が出来る状態にまで戻った2人とその場から離れた俺は、なるべく人目に付かないであろう席に腰を下ろすのだった。


「すみません、九条さん……思わず取り乱してしまいました……」


「いや、気にしないで大丈夫だ……それよりも本当に驚いたよ。まさかこんな場所で2人と会えるなんて思わなかったからさ。」


「そ、それは私もです……クアウォートに続いてノルウィンドでもだなんて……」


「あぁ、さっきシアンも言ってたが本当に凄い偶然だよな……」


「は、はい………そうですね………」


「…………」


「…………」


 あー……ヤッベェ……メチャクチャ気まずいんだが……!?こんな時にアイツ等が居てくれたら助かるってのに……マジで何時まで温泉に入ってんだよ!?


「九条さん、少々よろしいでしょうか?」


「えっ!?お、おう、どうしたんだ?」


「つい先程、傷を癒すのが目的でこの街に来たと仰っていましたが……まだ完治したという訳ではないのですか?」


「いや、完治はした……のかな?まだちょっと傷跡は残ってるけど、ソレもしばらくしたら消えるだろうからな。」


「そうなんですね!それは良かったです。お姉様、九条さんが入院をしてからずっと心配をなさっていましたから。」


「ちょ、ちょっとシアン!そういう事は九条さんに言わなくても……!」


「別に良いではありませんかお姉様。全て事実なのですから、恥ずかしく思う必要はありませんよ。」


「そ、そういう問題じゃなくて……うぅ……」


「あ、あはは……えっと……ありがとうな、アリシアさん。」


「い、いえ……そんな……」


 お、おふ……!これは別の意味で気まずい……ってか本当に恥ずかしいんだが!?若い頃の俺だったら確実に勘違いするレベルのトキメキに襲われてるんですけど?!


「あっ、そうだ!九条さん、もう1つよろしいでしょうか?」


「ん!?な、何だシアン?」


「もしお時間があればで良いんですが、私達と一緒に屋台を見て回りませんか?」


「……えっ?」


「シ、シアン!?貴女、いきなり何を……!」


「お姉様も九条さんとご一緒したいと思いませんか?折角こうして出会えたんです、この機会を無駄にするのは惜しいではありませんか!」


「そ、そうかもしれないけれど…‥」


「それなら決まりです!九条さん、よろしいですか?」


「あ、あぁ……2人が良いなら別に構わないけど……」


「えへへ、ありがとうございます!それでは早速ですが行きましょうか!」


「うおっ!?」


「ちょ、ちょっとシアン!?」


「さぁ、時間は待ってはくれませんよ!たっくさん楽しみましょう!」


 満面の笑みを浮かべてたシアンに手を引かれて立ち上がった俺とアリシアさんは、屋台の方に向かって行きながら互いに目を見合わせて困った様に微笑むのだった。

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