第304話
「ぐぬぬ……!扉の鍵は閉めていたはずなのにどうやってここまで来やがったんだよお前は!?」
「うふふふ…………僕達を結ぶ運命の赤い糸の力に決まってるじゃないですかぁ……さぁ九条さん……一緒に素敵な時間を過ごしましょう………」
「だぁーっはっは!力が……力が強すぎる!マホ!ロイド!ソフィ!エルア!誰でも良いから早く助けに来てくれえええええええええ!!?!?!!?!」
いつの間にかベッドに潜り込んでいたイリスに襲われるという劇的な目覚めを体験した俺は、その後すぐに助けに来てくれたマホとエルアに半泣きになりながら感謝の言葉を伝えまくるのだった……!
それからしばらくして2人から説教をされたにも関わらず平然としているイリスと申し訳なさそうに謝り続けるエルアを玄関で見送った俺達は揃ってため息を零すと、少し経ってから家に帰って来たロイドとソフィと出掛ける準備に取り掛かった。
そして十数分ぐらい掛けて簡単に身支度を整えた俺達は朝焼けに照らされた街中を歩いて王都に向かう馬車が集まっている正門の前にやって来て、邪魔にならない様に端の方で出発の時間を待っているあいつ等に近寄って行った。
「あっ、九条さん……それに皆さんもおはようございます。」
「はい!おはようございますって、さっきぶりなんですけどね……」
「あら、そう言えばそうでしたね……うふふふ………」
「ひぃ!?」
「ん?九条透、貴様何をそんなに怯えているのだ?」
「な、何でもない!それよりも……アレだな。お前に絡まれたあの日から1ヶ月近く経つが、まさかこうして見送りに来る日が来るなんて思いもしなかったぜ。」
「ふんっ、文句があるならば帰っても構わないぞ。」
「いや、そういう訳じゃなくて……何て言うか、やっぱり人生ってのはどう転がって行くのか分からねぇもんだなってさ。」
「……まぁ、それについては同意してやろうではないか。」
「おう、ありがとさん。」
「うんうん、九条さんとクリフ君が仲良くなれたみたいで本当に良かったです!」
「……はっ?ま、待てエルア!俺と九条透は仲良くなった訳では無いぞ!何故ならば俺達は互いに相容れない存在、つまりは好敵手という奴なのだからな!」
「えっ、そうなんですか?」
「……さぁ?」
好敵手って要するにライバルって意味だろ?そんな面倒が相手が出来たと考えたくないし、コイツと実力が
新しいイベントを発生させない為に心の中でそう決意してたその時、出発の時刻が近づいている事を知らせる御者さんの声が周囲に響き渡った。
「ふぅーはっはっはっは!九条透!今回の勝負は我の敗北を認めてやるが、次こそは覚悟しておくが良いわ!それでは、さらばだ!」
「あっ、おい!ったく、次こそはってまた勝負を挑んでくるつもりなのかよ……」
「す、すみません九条さん!クリフ君には僕から言って聞かせますから!」
「あぁ、頼んだ……ついでに、本当に俺に勝ちたいと思ってるなら全力で突っ込んで来るだけじゃなくて小細工のやり方を学習しとけって伝えといてくれ。」
「は、はい!必ず!」
「うふふ、やっぱり九条さんは優しい方ですね。」
「べ、別にそんなんじゃねぇよ……どうせ戦うんなら、もうちょっと手応えが合った方が面白そうだって思っただけだ。」
「はいはい、おじさんはツンデレさんですね。」
「ばっ!ツンデレじゃねぇから!それよりもほれ、お前達も馬車に乗り遅れない内にさっさと……ってあぁそうだ、今度こっちに遊びに来る時は事前に手紙とか寄こしてくれよ。俺達もずっと街に居るって訳じゃ無いからさ。」
「分かりました。それでは皆さん、またお会いしましょう。」
「次こそは、九条さんの心を頂きますね。」
「そんな事させるかっての!……はぁ、そんじゃあな。」
「エルアさん、イリスさん、お元気で!」
「ふふっ、また会えり日が来るのを楽しみに待ってるよ。」
「またね。」
こうして笑顔で手を振って別れを告げた俺達は、馬車に乗って王都に帰って行った3人が見えなくなるまで見送り続けるのだった。
「……さてと、俺達もぼちぼち帰るとしますかね。」
「そうですね!ロイドさん、朝食をお願いします!」
「あぁ、了解した。楽しみに待っていてくれ。」
「……わくわく。」
「いや、別に口に出さなくても良いんじゃないか……?」
俺達はそんなやり取りをしながら正門前の広場から離れる様に歩き出し、心地よい朝の日差しを浴びながら家路につくのだった。
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