謎の不安とクラス替え

 そんなこんなで学校についた三人。


 七屋高校は依代達が住む町にある唯一の高校である。とても大きな学校とは言えないが近くの高校に比べると大きい部類に入る位である。七屋高校では毎年クラス替えがあるのだが、依代と櫂、沙良の三人は一年二年と同じクラスだった。


 櫂と沙良は一年から生徒会役員で二人とも顔やスタイルも良いことから学校中では知らない者はいないと言われてるほどだった。クラスも一緒で生徒会でも一緒だから付き合っているのではなどさまざまな噂が出回るほど二人は人気者なのだ。

 そんな二人と一緒にいる依代も必然と噂の種になる。櫂と沙良の恋仲を離して櫂と付き合おうとしてるだの二人の人気にあやかって自分も目立とうとしてるだのと変な憶測ばかりの噂ばかりだったり、見た目は良いので一目惚れする男子生徒やエロそうだのすぐヤれそうだのとこれまた偏見が過ぎる噂もたっていたが、依代のアホさと性格的な観点からその噂はすぐには誰もしなくなっていた。

 そもそも櫂達も付き合っているわけではないのだが。


 しかし櫂と沙良のうわさは三年になってもなくなりはしないようで、三人が校舎に入ったところから生徒の数名がこちらを指差しながらこそこそと話してたり、三人を見たとたん道を開けたりするなどしている辺りそうなのであろう。依代は「なんでこっちに指差してるんだろうね、何か服についてるかな」などと制服を見ながら言っているので気にしてない模様


「やっぱりこの雰囲気苦手だなぁ…」

「三年になってもこれは変わらないっぽいな、周りもいい加減変な憶測で俺たちに理想像を押し付けんなって思うけどな、まったく」

「何ならもういっそ付き合っちゃえばいいのに、みんなが言ってるのってそういうことでしょ?」

「アホか、それじゃ俺たちがやつらの思惑通りになっちまうじゃねぇか。ぜってぇ付き合わねぇから」

「それはそれで私悲しいんだけど…。まぁ私も今後どうなるかわからないからこのまま友達ってっことで私は全然大丈夫よ」


 そういって沙良はニコッと笑う。


「というか三年になればもう大学とか今後のことを考えなきゃって時期だし、俺たちにかまってる暇あったら勉強でもしてろって感じだけど。てか依代は大丈夫なのか進路。こんな忙しい時に生徒会なんて入っちゃって。ただでさえしてない勉強の時間が減るんじゃないか?」

「うっ…だ、大丈夫だよ!バイトとかの合間でちゃんと勉強してるから!」

「そうですよ!あなたは生徒会長になるべきではなかったのです!!」


 突然聞き覚えのある声が三人の会話に割り込むように乱入してきた。三人が声がした方向に目を向けるとこれまた見覚えがある男子生徒の姿があった。


「お、おまえは!!誰だっけ…?」

「私のことを忘れたのですか!?一年で生徒会に入り、二年で生徒会副会長をし、三年で生徒会長になるはずだったのなぜかその席をあなたに奪われて平役員に落とされた三上晃ですよ!」

「お前さすがに会長の座争った相手ぐらい覚えておいてやれよ…」


『三上晃(ミカミ アキラ)』は見た目からわかるように超がつくほどの大真面目君だ。櫂と沙良は生徒会でかかわりがあったが依代とは全くと言っていいほどだった。生徒会長選にて依代に負けたあたりから目の敵にしてるようだがこれまた依代はまったく気にしてないのが現状である。


「もう晃君、あなたも依代ちゃんの演説聞いたでしょ?あれでかっこいいと思わない方がおかしいと思うなぁ~現に依代ちゃんがみんなから選ばれたんだから」

「ぐぬう…あ、あなたたち二人が何か吹き込んだんじゃないんですか!?それでなきゃ今まで生徒会にいなかったこんな知能指数が低い彼女が立候補するわけがない!」

「残念だが俺たちは何もしてないしこいつが勝手にやっただけだ、逆にこいつが当選しちまってこっちは仕事が増えて大変なんだがな」

「ぐぬぬ…」


 まくしたてるようにに依代たちにかみついていた晃だったが、櫂と沙良にことごとく制されたためかひと呼吸をして落ち着き依代に向かって


「必ずあなたの化けの皮をはがして見せますので覚悟しておいてください。教室で待ってますよ」


 そう言い残して去ってしまった。

 嵐が去って取り残された三人は唖然とするしかなかった。


「あの人面倒くさい、いやだ」

「いやあいつも生徒会にいるぞ」

「じゃあ生徒会長やめる」

「身勝手なのやめろ」


 さすがの依代も晃には面倒さを感じたのか明らかに引いている。それとは別に晃の最後の言葉が気になっていた。


「ねぇ、教室で待ってるってどういうことかな。まさかあれと同じクラスってことは…ないよね?」

「あの口ぶりだとあり得るかもしれないね…依代ちゃんの苗字と晃君の名字、どっちも『ミカミ』だから場合によっては席が近いかも…」

「えぇ…いやなんだけけど…」


 そう思いながらもクラス表が掲示されてる場所に三人は移動した。そこには教室を確認しようと生徒たちがごった返していた。その人だかりから三人は自分の名前を探す。

 そして依代にとっては最悪な結果を見つけてしまった


「あいつと同じクラス…しかも櫂と沙良とも違うクラスだなんて…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る