姉がアホすぎて妹たちが大変です!!
ウルル
第一話 姉がアホすぎて初日から大変です
緑神家 始動!!
ピピピピッ、ピピピピッ――
目覚まし時計のベルの音が朝6時半を知らせる。
今日は4月2日。ほとんどの学校は新学期となり、生徒たちは新しい学年や新しいクラスもしくは新しい学園生活に心を踊らし、一方では新しい生活に不安を持つ者もいるだろう。
そしてこの目覚まし時計の音により目を覚ました少女もまたその一人だ。とはいってもこの少女、緑神依代(ミカミ イヨ)は、不安なんてものは感じていなかった。
そもそも今日が始業式ということを知らないからである。
「――ん、ふわぁぁああ…」
今日が大切な日とはつい知らず、大あくびをする。閉じたカーテンを勢いよく開け窓を開け朝のすがすがしい空気を吸い込む。
住宅街の所々では桜が満開に咲き誇り、桜の写真を撮ったり朝のジョギングをする人たちも見える。何気ないいつもの日常である。今日に始業式があるということ以外は。
寝起き眼の目をこすり、彼女のトレードマークといえる黒の腰まで伸びた長髪を整え
二階の自室から朝ご飯の準備をするために一階に降りる。朝ご飯の担当は依代だからだ。寝間着姿のまま階段を下りていると、下の階にいた次女の百合愛(ユリア)と目が合った。
「あ、アホ姉。てっきり寝過ごして今日の朝ごはんなしになるかと思ったよ」
「朝一番の第一声がアホ姉は傷つくからやめてって言ってるでしょ…」
次女の百合愛は緑色の長髪なびかせジト目ながらにそういった。
異常がつくほどの面倒くさがりなものぐさ少女である。姉である依代に対しては『アホ姉』で呼び、時には家の中ででも部屋に電話で呼び出し飲み物を持ってこさせたりするという悪女ぶり。家の中では『緑神家のドン』と呼ばれている。
「まぁいいや、今日の朝ごはんは何?私お腹すいてるからご飯大盛ね」
「あぁ、えっと、今日の朝ごはんはパンなんだけど…」
「えぇ!?なんで今日に限ってパンなのよ、白米の気分だったのに~」
「いやいや気分とか関係ないし、今から炊く方が時間かかっちゃうし…」
「はぁ…やっぱりアホ姉はアホ姉だね」
「ええぇ…」
朝から緑神家のドンはフルスロットルである。
「あ~またユリねぇがイヨねぇのこといじめてる~」
「朝から元気だね、いつも通りといえばいつも通りだけど」
二人の騒ぎを聞いてきたのか三女の理玖(リク)と四女の梨奈(リナ)がやってきた。
「聞いてよ我がかわいい妹たちよ。アホ姉が今日の朝食はパンだって。私はパンが良かったのに」
「う~ん私はパンでもいいと思うなぁ、ジャムとかチーズ乗せたらおいしいし」
「別にウチは朝ご飯が何であろうとおいしければいいし!イヨねぇ早く出してよ!」
「な、あなたたちはパンでいいというの!?今日は絶好の白米日和なのに!」
「はいはい残念でしたね~、ほらさっさと食べなさい」
妹たちに同意を得られずあっさりと散ったドン(百合愛)であったとさ…。
※
「そういえばさ、今日って何時から始まるんだっけ」
バターをたっぷり塗ったパンを頬張りながら理玖が訪ねた。
「えっと、確か10時からじゃなかったかな」
イチゴのジャムを塗りながら梨奈が答える。
「それならこんな早く起きる必要なかったじゃん、もうちょい寝ておけばよかったな」
ハムとチーズを挟んだサンドウィッチを貪るように食べながら不満そうに百合愛が言う。
「ん~?今日みんな何かあるの?新しいテレビでも始まるっけ」
何も塗ってない食パンを食べながら依代が問う。
その瞬間サンドウィッチからハムが落ち、ジャムを塗っていたスプーンが宙を舞いバターの箱がはじけ飛んだ……なんてことは起こらなかったが一瞬にして空気が変わった。
「イヨねぇ今日は何の日かはさすがに覚えてるよね?」
「ん?今日なんかあったっけ?」
「えっと、今日は私たちの入学式があるだけど…」
「というかアホ姉も始業式今日じゃないの?というか時間大丈夫?」
「あー始業式?今日だっけ?」
「いや知らんけど」という顔で百合愛がにらむ。
さすがの依代も怖くなったのか、せかせかと自室に戻り学校で渡されたプリントを確認する。そして机の横にあるカレンダーと目覚まし時計を三回ほど見直し…。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛っっっ!?!?!?!?」
家中に響き渡るような大きな声を上げた。
「はぁ…やっぱりアホ姉はアホ姉だな…」
緑神家は今日も平和?です
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