第5話 ゼビウス



 子供の頃、近所に駄菓子屋があった。軒先に二十年、いや、三十年前のゲーム筐体が置かれていた。



 今どき、こんなゲームをやるのか? と言いたくなるようなシューティングゲームだった。空中の敵と地上の敵が別れていて、プレイヤーは、空中の敵を攻撃しながら、地上の敵も攻撃する必要がある。



 古臭かったけれども、めちゃくちゃ面白かった。画面を埋め尽くすような弾や全てを消し去るボムは無かったけど、不思議な魅力があったのだ。



 それに、安かった。ワンゲーム十円だった。



 子供の頃は何も考えなかったけれども、今考えれば解る。あれ、電気代だけでも、絶対に赤字だったよね。って。



 もっとも、元は取れていたのかもしれない。筐体自体、かなり古びていて、軽く蹴飛ばした程度で四散しそうなくらいボロボロだったから。



 十円でも、回転率が高ければ、儲かるのかもしれない。けれども、友人のリョータが土日はいつも占領していた。ゲームがめちゃくちゃ上手いリョータは、十時に来てお店が開けられるのと同時にゲームを始め、永遠とやり続けるのだ。



 と言うのは、昨今のゲームとは違って、このゲームはループになっているから終わりが来ない。しかも、特定の点数毎に自機が増えるため、慣れてしまえばほぼ終わらないのだ。



 僕らは、十二時頃に遊びに来る。すると、リョータがお腹をペコペコさせながらゲームをしているから代わってあげるのだ。



 お店でカップラーメンを買ってきて食べ始めるリョータ。それと、交代でゲームをする僕ら。ボス戦で自信がない場合は、リョータに代わってもらうと、不思議なことに残機が減らないのだ。



 そんな感じで、店が閉まる夕方の六時頃まで、駄菓子屋の軒先でゲームを続けるのが土、日の決まり事だった。



 ◇ ◇ ◇



 暑い夏がまたやって来た。盆休みで久しぶりに実家に戻ってきた俺は、額の汗を拭いながら駄菓子屋の前に来た。今では、シャッターが閉じられている。人気がない駄菓子屋だった軒先。日差しを避けていると、見たことのあるような男性が近づいてきた。



「よお」



 不思議なことにあの頃のメンバーが約束したわけでもなく集まってきた。僕らは、もう無くなった筐体あたりを眺めながら、日が落ちるまで団欒を続けていた。



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