第143話 「142話」
準備の出来たタマさんの後をついていくと10名ほどのダンジョンシーカーが、準備万端で待ち構えていた。 皆さんとても強そうですね。なんかこう雰囲気が違う。
……気のせいかも知れないけどな! これでただの見送りとかだったら恥ずかしいぞ俺。
「……タマさん一人じゃないんだよね?」
「あたりまえニャ」
ですよね! よかったあってて。
そうだねえ……なんとなーく、皆さん補正いれたらレベル100……110?超えな方々なんじゃないかなーと思う。
うちのタマさんを頼みますぞ。 桃は用意するからね!
「ウッドです、ついては行けないですけど蔦とか根っこで援護しますんで。 死にかけの敵回してくれればその場で各種回復薬も作れます」
「そりゃ助かる。 ちなみにその蔦とかは攻撃しちまっても良いのか?」
「問題ないっす。 生えますんで」
ちょっと痛いけどなっ!
こんな時である。がまんするよ、男の子ですもん。
「面白い体だな。 あの果物も美味かったし……タマさんが丸くなったのもあれのせいか?」
あ、やっぱ丸くなってたの気になるのね。
そりゃしばらく振りにみた相手が、以前の倍ぐらいになってたら気になるよね……。
「あれのせいっちゃせいですけど……タマさんのはただの食いすぎっす……おほぅっ」
「そ、そうか」
食いすぎっていった瞬間、タマさんの蹴りがお腹に入る。
やっぱ地面に触れる部分は装備ついてないらしい、ちゃんと肉球の感触だったよ!!
「んじゃ行くニャ。 ウッドはがんばって触手伸ばすニャ」
「まっかせてー!」
タマさんのためなら俺がんばっちゃうからね。
なんて張り切っていたのだけど……。
「は、早い!? 早いよタマさんっ」
移動が速すぎる。
てか敵を倒すのも早い。
敵を倒している間になんとか追いついて、そしてまた離されてを繰り返してる感じだ。
縦横無尽に駆け回るタマさんを援護する。 ……うむ、援護どころの話じゃねーですぞ。
「や、やっと追いついた……」
ただ、しばらく経つと戦闘中に追いつくことができるようになっていた。
……これってつまりどういうことかと言うとですね。
「一撃で死ななくなってる? てか、皆見たことないのばっかだ……」
敵が強くなってきてるってことなのです。
もう見たことないのばっかだよ。 タマさん達の一撃を食らっても、直撃じゃなければ生きてるのがちらほらいるし。
ここはあれだね、足止めしたところを確実に仕留めてもらって消耗を減らしていく方向で行ったほうがいいかな?
んじゃさっそく根っこを伸ばしてっと。
「とりあえず足を……んがっ!?」
足いっただきーと思って、根っこ伸ばしたんだけどさ。
確かにつかんだよ? 掴んだんだけど……。
「うっそーん。 一瞬で千切れた? 1本じゃ意味ないか……」
掴んだ瞬間、敵が反射的に動いて……それだけでぶちっと根っこが千切れてしまった。
ちょっと一瞬の足止めにすらなってねーのですが。
ここいらの敵、たぶん俺よりずっと高レベルだよね。間違いない。
「これでっどうだーっ」
1本でダメならもっと束ねるのだ!
数の暴力ならお手の物!
目標は同じやつ!
地面が爆ぜ、根っことか蔦とか、触手がズドォッみたいな勢いで現れ、そして敵を雁字搦めにする。
「おっしゃ、頂きまっす!」
1本だと余裕でぶちって持っていかれるけど、これが10本20本になるとそうも行かないようだ。
ちょっと足止めのつもりが、意外とがっちり固定できたので柔らかそうな部分に根っこを突き立てちゅーっと吸ってやったど! 絞め殺すのは無理だけど、柔い部分にさすのはいける!
この攻撃はとりあえず刺さってしまえば、あとは敵が多少強かろうがおかまい無しに致命傷与えられるので便利である。 てかえぐい。
「まとめればいけるいける。 よっしこのままいけば――」
俺はどうやらフラグをたてるのが上手いらしい。
このままいけば何とかなるー……そう思った瞬間、タマさん達周辺の地面が爆発したのだ。
「――ぐぁっ!?」
痛みと共に、視界が消え去る。
根っこも蔦も、触手もすべてまとめて吹き飛ばされていた。
「全部吹っ飛ばされた!? 一体何が……っ!?」
一体何があったのか。
俺は慌てて本体の目で何が起きたのか確認しようとした。
だが爆発が起きたあたりは土煙が立ち込めており、遠くからでは確認できない。
土煙の量からして相当大きな爆発が起きたことが伺える……。
「タマさんっ!?」
爆心地に居たはずのタマさん達は無事なのか、俺は確認しようとちぎれた触手から新たに腕を伸ばす。
「触手! 早くっ!!」
ほんの数秒かそこらの間だったけど、普段なら気にならない這う速度が今はひどく遅く感じた。
「無事だ……全員無傷だ、よかった」
爆心地まで触手を這わせて目を開いてみれば、タマさん達は全員無事であった。
てか無傷だった……くらったの俺だけかい。
「てか今の爆発なんだったの? 地面がっつりえぐれてるし、威力半端ないんだけど……ん?」
地面にできたクレーターは相当な大きさだった。
深さも結構あるし、直径もかなり……そりゃ俺の根っことか吹っ飛ぶよねって感じのクレーターができていた。
一体何が原因でこんなクレーターができたのだろう? そう思い、職種をうねうねと動かしあたりを観察してみると……遠くにこちらに何かを向けているモンスターを見つけた。
「あいつ……まさか指導者? あの腕、大砲か何かみたい……あれで撃たれたのか」
いかにも敵の中心分です!って感じのところに居座ったそいつは指導者だろう。 そいつの腕は筒状で……そう、まるで大砲か何かのようであり、さきほどの爆発の原因はあれで撃たれた為に間違いないと思う。 指導者の見た目は前回のそれと比べてより人に近い見た目をしているように思える。 遠目だからちょっと分からないけど。
……てか、指導者って近づかなければ攻撃してこないんじゃないの?
遠距離タイプだと違うとかなんだろうか……これ、まずいよねかなり。
そんなことを考えていると、指導者に新たな動きがあった。
タマさん達が近づいたことで何かしらのスイッチが入ったのだろうか、指導者は今度はタマさん達ではなく、街へと向けその腕を向けるのであった。
「う、お、おぉぉぉ!?」
そして街へと向け、腕から弾が撃ち込まれる。
それは凄まじい勢いで壁へとぶつかると深く抉り、そして最悪なことにその攻撃は連射が効くらしく、すぐに第二、第三の弾が撃ち込まれ、ついには壁をぶち抜いてしまう。
どうも魔法をはじいた障壁が効いていないように見える。それに世界樹の力による減衰もなさそうだ……もしかするとあれらは魔法限定なのかも? そういえば壁に近づいた敵がはじかれる様子もないし、たぶんそうなのだろう。
「か、壁が抜かれた……」
幸いなのは壁を抜いた際にほとんどの運動エネルギーを使用したらしく、街自体への被害は無かった。
だがすぐに次の弾が撃ち込まれることは間違いなく、このままでは街へ被害が出てしまうだろう。
……もっとも街を防衛しているダンジョンシーカー達がそれを黙ってみている訳はない。
「な、直ってく……キンバリーさんか!」
砕けた壁がモリモリと盛り上がり、穴が塞がっていく。
破られたのを見てキンバリーさんが速攻直しにかかったのだ。
「ちょ、またっ」
が、直したそばから新たに飛んできた弾が打ち抜いていく。
しかも今度は狙いを複数個所に分けている……おそらくキンバリーさんは一度に全ての個所は直せないだろう。 いずれ対応が遅れ、どこからか弾が飛び込んでくるか、モンスターが殺到するであろうことは想像に難くない。
まじやばい。
世界樹動かないと本当にやばい。
個体差なのか何なのか知らないけどはよ動いてっ!
「くっそ、世界樹早く動いてくれよっ! なんで動かないの――」
言っても仕方のないことかも知れないけど、どうしても文句の一つや二つでるものだ。
だが、俺は文句を最後まで言い終えることはなかった。
ふと、以前リタさんと話したことが頭に思い浮かんだのである。
「石や壁、それに水などのケースはあるんですが……木は150年ほど前に前例があったようです。 ただモンスターの襲来で支部が焼けてしまい詳しい記録は残っていないようですね」
これは、俺と同じように体の一部が木になった人が過去に居たってこと。
そして同じ時期に指導者が現れたということだ。
そしてさっきからガンガン聞こえてくる世界樹に向かえという言葉……これらから考えられるのは、そう。
「――俺が、動かす……のか?」
そうとしか考えられなくなった。
そしてその考えに至った直後、俺の頭の中に響く声が変わったのだ。
世界樹に向かえ。そして動かせと。
……俺が世界樹に向かい、そして動かせば。 おそらく……いや、確実に世界樹は動き出し、そして敵を殲滅するだろう。
それだけの力が世界樹にはあると、俺には確信できた。
そして……世界樹を動かした後俺はたぶん……。
こんなのって無いよ。
俺をこの世界に転生させた神様は恐ろしく性格が悪い。
髪の毛むしってやるって思った気持ちは正しかった。
……本当どうしよう。
タマさん達を助けたい気持ちは滅茶苦茶大きい。でも代償は俺の……すごく、悩んでいる。
でも神様は性格が悪い、俺が悩む時間なんて与えないつもりらしい。
再び俺の視界が消え、痛みが体を襲う。
「ぐっ!? タ、タマさん!?」
本体の目で何があったのか確認すると、タマさん達の上空を10体近い竜が飛び交っていた。
先ほどのダメージはあいつらが放ったブレスなのだろう……そして、上空からタマさん達目掛け再びブレスが放たれる。
ブレスがもたらす破壊は広範囲に及ぶ。
タマさんが、吹き飛ばされ宙を舞う姿が俺には見えた。
あれは避けたんじゃない、くらったんだ。
気が付けば俺は世界樹に向け駆け出していた。
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