第120話 「119話」
10分後、全てを吸収しきった俺は死んだ目をして地面に横たわっていた。
もう無理ぃ。
「大丈夫か? かなり消耗してそうだが」
「体は平気っす……でも心がずたぼろになりました。誰か慰めてください」
何が悲しゅうてあんな光景を見続けれなきゃいかんのだ。
癒しを所望するのです! ぷりーず!ぎぶみー!
「それはタマさんに頼んでくれ」
ゴリさんが冷たい。
「これで全部なのかなー?」
「あー……ちょっと待っててください」
残ってたら大変だもんね。
たぶんこれ以上増えることは無いと思うけど、1体残ってるだけでも触手の被害者が出るわけで、見逃すわけにはいかない。
とりあえず根っこをはわせて周辺に残っていないかを探ろう。
「……たぶんこれで終わりですね」
うん、周辺には居ないっぽい。
……もっと遠くに行ってる可能性もあるけど、ちょっとさすがにそれは探しきれない。
行ってないことを祈るしかないね。
「そうか……なんというか……本当、すまん」
「いえ……長い人生こんなこともありますよ」
まあ、一度ぐらいはね? こんなハプニングあっても……まあ、うん。
二度は絶対ごめんだけどねっ。
「ねーねーウッドくん」
「なんでしょう……」
なんだろう。
嫌な予感がすごくするのですが……カールさん何言いだすか分からないから怖いんだよなあ。
「ウッドくんってウッドくん生やせるのー?」
「えぇ……」
どういうことなの。
いや、言ってることはわかるんですけどね。
「ちゃんと制御出来るのなら便利そうではあるからなあ」
「ニャ」
「あーうー……うー? それじゃ試しにやってみます?」
便利そう……? いきなり目の前の人を脱がしにかかる未来しか見えないけど。
タマさんもゴリさんもそう思ているっぽいしー……しゃーない試しにやってみるかね。
出るかわからんけども。
「んー……とりあえずさっきの奴、もっかい出てこいー」
「うわー」
「むぅ」
おう、でたでた。
見た目やばばばだけどね。さっきの吸収したやつを逆再生してるみたいだ。
んー……しかしあれだ。
「やっぱまっ裸か……ってちょい待てえっ!?」
やっぱ裸なんだよね……まあしょうがないのだけどさー……って待てい! どこに行くつもりー……も何も目の前に居る人の服剥ぎにいったあ!
「ふん!」
ゴリさんやめて!
首折れちゃうぅ!
「制御出来てないな。 ウッド、今はどうやって作ったんだ?」
あー……首ブラブラしてるけど……気絶してるだけか、生きてる。せーふせーふ。
……ん? どう作ったってそりゃー……。
「どうって……さっきの奴出てこーいってやっただけで……あ」
だからか。
さっきの奴を出したから服剥ぎにいったのか。
「じゃあ次は別のを出すようにしてみてくれ」
「うっす……じゃあその場で待機で」
んじゃ次のを出してみよう。
とりあえず気絶した分体は吸っちゃってと……よし、次の出てこーいっ。
動くと面倒だからその場で待機な!
「ほう、今度は動かんな」
「ですね……これもしかして本当に突っ立ってるだけ? おーい、ちょっと動いてみてー?」
とりあえず動かない奴が出てきました。
出てきたんだけどー……ずっち突っ立ってる奴を出してどーすんだってお話しで。
呼びかけても突いて見ても何の反応すら示さない。あかん。
「これじゃだめっぽいなー」
んまあ、出す奴を変えられるってことは分かったし、あとは試行錯誤ながら色々試してみるしかないかなあ。
ってなわけで色々試してみること1時間ほど。
この分体について大体分かってきたよ。
「んー……かなり消費するけど、これでどうかな?」
人間に近づければ近づけるほど、作ったときの消耗が激しくなる。
理想としては俺と同じように考え、判断することが出来れば良いのだけど、そこまでやろうとすると消耗云々じゃなくて作ることすら出来なくなった。
何かしらの制限があるっぽいね。
消耗の具合を見て、何とかまともに運用できるレベルに落ち着いたのが、簡単な指示を出せばある程度自分で判断して、その指示を達成するってレベルであった。
「とりあえずこっち付いてきて」
そう声をかけると分体は俺の後をついてくる。
「じゃー……どうしよっかな。 ……じゃ、あっち方面に20km以内にモンスターいないか探してきて? 1時間立って見つからなかったら戻ってくること、もし捕まえられそうなら捕まえてきてね。 あ、絶対人は襲わないように」
ざっくりと指示を出すと分体は駆けだした……あ、やべ服着せてない。
……ま、まあ他に人も居なさそうだし大丈夫でしょっ。
あ、そうそう分体の強さだけどね、これも強くしようとすればするだけ消耗が激しくなる。
んでこっちも制限があるっぽくて、大体俺のレベルの8割ぐらいまでしか強くならないっぽい。
なので大体50ちょいって感じかな?
試してないけど、敵を吸って回復しながら戦えって指示したら、オーガの群れとかでも普通にやれると思う。
複数用意すれば結構使えそうな気がするね。
「ちゃんと行ったっぽいねー?」
「そうだな」
「あとは指示通り動いてくれるかだけどねえ」
一応さっき試した感じは指示通り動いてくれてはいた。
あとは俺から離れたらどうなるかってとこだね……とりあえず根っこはわせて分体を追跡してっと。
これで万が一逃げられてもすぐ追いかけられる。
んじゃ、戻ってくるまで休憩しますかね。
タマさん、お腹かしておくれー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます