第118話 「117話」

ダンジョンにいって例の岩を連打、桃を量産した俺たちはブーストしたレベルの恩恵をいかして息の続く限り走り続けた。


「ぜーはー……ぜーはー……し、死ぬ」


「ニャ」


頑張った甲斐もあり昼過ぎには街へとたどり着いたのだが、疲れすぎて吐きそう。


くそう……タマさんは当然としてゴリさん達も涼しい顔しておる。

たぶんレベル差と言うよりかは単純に俺の鍛え方が足らないんだろうね……ゴリさん達の筋肉は伊達では無いと言うことだ。



やっぱもっと鍛えないといけないよねー……っと、そのへんは落ち着いたら考えよう。

まずはドッペルゲンガーがどこに居るのか情報を集めないと。



そんな訳で門をくぐって街へと足を踏み入れたんだけどー……。


「ねえ、あれって平原の奴じゃ……」


「……うそ、まじ? なんで街中にいるのよ!」


ハハハハッ!

すっかり有名人ですよっ!


「すっごい見られてる。 ていうか逃げられたんですけど」


すれ違った人みんな振り返る。

ヒソヒソ話したり指さすぐらいならまだ良いけど、中には黄色い悲鳴をあげて逃げ出すご婦人までいるのですよ。


これがモテ期だったらどんなに良かったことか!



てかドッペルゲンガーよ、一体どれだけの人に手を出したんだって話ですわ。

街の大半の人が俺の顔知ってそうな気がするんですけど。 おかしいな、視界がぼやけてきたぞ。



「あー……平原ってさ、俺らが戦った後だろう? ギルドが招集かけて魔石を結構な数回収したが、それでもまだかなりの数が残っていてな。 で、街から結構な人数が平原に行っては残っていた魔石を回収していたらしくて……まあそこにあれが現れたと」


「つまり結構な人数に目撃されてるってことデスネ!」


俺の予想を裏付けしてくれてありがとう! 泣いて良い?



「ぐぅ……と、とりあえず情報集めないと。 ここってギルドってありますか?」


「規模は小さいが一応ある。 こっちだ」


まあ泣きわめいたって解決する訳じゃなし、ここはこらえて情報収集に専念するんだ俺っ!


街中のことはさっぱり分からないのでゴリさん達の後をついて歩くことしばし、随分小さめの……俺が泊まってた宿ぐらいの大きさかなこれ、ギルドにたどり着いた。


「本当だ小さい……いや、小さくたっていい。 情報さえもらえれば!」

道中受けた視線とか色々でもうグロッキー気味なのではよ入りたい。

建物の中ならこの針のむしろからも解放されるに違いない。


「たのもー!」


半ばやけくそ気味にギルドへと突入する俺。

入った瞬間皆の視線が一気に集まる。


ふむん、このあたりはどこのギルドも変わらないのかねー?

ま、とりあえず受け受けにごーごー。



「おい、あいつって平原の……」


「あいつ! 俺の下着をよくも……」


「いやでも平原の奴とは様子が違うぞ? ほかに仲間もいるようだし……」


あーあー聞こえなーい。


……てかパンツ取られた奴が居たぞっ!?

いやいや、ダンジョンシーカーなのに取られたんかいっ。

一般人ならまだしもそれはどうなのと思わなくもない……。



と、まあギルド内でも針のむしろだった訳ですけど、とりあえずガン無視して受付へと一直線に向かう。


「平原に現れた奴の情報をもらいたい」


幸いなことに並んでいる人いなかったので受付にべしっと手を置いて勢いのまま要件を伝えた。


受付のお姉さんはえ?え?って感じで俺の顔を見て戸惑った様子で答えを返す。


「え……そこに、居ますけど」


ちげーし!俺じゃねーし!

てか人を指さすんじゃありませんっ。


「違います。 平原に現れたのは俺の姿に化けたモンスターです、おそらく前回の指導者との闘い、その生き残りでしょう。 俺たちは指導者との戦いに参加したメンバーです、生き残りが居ると聞いて応援に来ました」


と、一気に言ってギルド証を見せる。


ここで動揺してはいけない。

隙を見せてギルド内の連中に絡まれでもしたらとても面倒くさいことこの上ない。

最悪犯人扱いで捕まりかねないし。


きっちり相手の目を見て真摯な表情で訴えるのだ。



「そ、そうなんですか……? あいつは街から西25kmほど行った地点……ここです。 他の印をつけた地点でも目撃されていますが、ここで一番目撃されています」


よおっし、情報ゲットだぜ。 まあ前回俺たちが戦闘したあたりなんですけどね。

あとは呼び止める隙を与えずにギルドを去るのみ!

ささっ、行きますぞ行きますぞ。


「ありがとうございます。 ゴリさん行きましょう」


「お、おう……お前のそんな真面目な顔初めて見たぞ」


ゴリさん余計なこと言わないっ。

大体俺は何時だって真面目でしょーに。

まったくもうっ。




さくっと移動しました。

25kmってさ普通に歩くとむっちゃかかるんだけど、全力で走ると本当にすぐ着いちゃう。

やばいね。今度時速何km出てるのか計ってみようかな?


「確かこの辺りだが」


「ただの荒れ地ですね……」


あたり一面荒れ地ですね。

草もろくに生えちゃいない。


かなーり激しい戦闘したからね、タマさん魔法ぶっぱしてたし、鉄竜がブレス吐きまくってたし。

地面にかなーり血が流れただろうし、そりゃー荒れ地になりますわな。


そんなことよりドッペルゲンガーはどこなのってお話ですね。


「ぱっと見は居ないな……他の場所にいるのか?」


草もろくにないから視界は良いんだよね。

地平線見えてるし、でも肝心な奴は居なさそう。


「ほかに目撃情報が多いのはー……森っすかね?」


「そうだな。 視界が悪いのにこれだけ目撃されているのなら案外そこが住処なのかも知れん」


「ウッドくん木だしねー」


うん……うん?

いや、別に俺森が好きって訳じゃないけど……ただ、この荒れ地よりは森になかに居るんじゃないかなーって気はする。

たぶん俺ならそうするし、ドッペルゲンガー……っていうか分体?もそうなんじゃないかな。


なので森に行くのは正解な気がするのです。


「確かに! じゃあ行ってみましょうか――」



森は荒れ地のすぐ目の前である。

俺たちは森に足を踏み入れ……そしてほんの数分で目当ての奴を見つけていた。


右半身が木で出来ていて、蔦を体から生やしシュルシュルと動かしている。 確かに、俺だ。

俺たちが見つけたのと同時に向こうもこちらに気が付いたらしく、いくつもの視線がこちらへと向けられる。



「――嘘でしょ」



俺が俺を。

いや…………俺たちが、俺を見つめていた。





全員まっ裸だった。

死にたい。

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