第109話 「108話」

酒くっさいなーと鼻を抑えながら中へと進んでいくと、聞きなれた声が聞こえてくるじゃないですか。

まさか、そんな訳は……とギギギッて感じで声をした方へと振り向くと……そこにはパーティ皆で酒盛りをするゴリさん達の姿があった。


いや、嘘でしょ。


「え……まって、ゴリさんおかしくない。 なんでまだ飲んでるの??」


俺たちが出発してからギルドに戻るまで3日あったんだよ?

貴方達の肝臓どうなってるんデス!??



「んあ? ……おー、ウッドじゃねえか。 無事戻ってきた見たいだな」


俺たちは無事なんですけど、ゴリさん達の肝臓無事なんでしょうか。

すっごい心配なんですけど……。


「ゴリさんただいまっす……まさかあれからずっと飲んでたんですか?」


「そんな訳あるか」


おう……すっごい真顔で突っ込まれましたよ?

……た、確かに言われてみるとそんな酔っているようには見えないし、もしかすると俺の勘違いだった可能性が……?


「眠くもなるし風呂にも入らんといかん。何度か宿には戻ったぞ」


「ソーデスカ」


それってつまり寝るときと風呂以外は酒飲んでたってことじゃん!

ずっと飲んでるのと変わらないってば……底なしにも程があると思うのデスヨ?


……ま、まあいいや。 とりあえずお土産を渡さないとだ。


「あ、これお土産っす。 タマさんの故郷の…………お酒です」


……お土産お酒ですやん。

これ渡していいのだろうか? 結構な量買ってきちゃったけども。樽ですよ樽?


……いや、見た感じ酔っぱらってないってことはもうお酒飲むのは止めてるのかもしれないぞ?

きっとそうに違いない!


「お、こいつはありがたい。そろそろ酒の在庫が無くなりそうだってんでよ、酒がこなくてな。 おっしゃ、お前ら酒が追加されたぞー! ウッドのお土産だ、感謝して飲めよ!」


「えぇ……まだ飲むのぉ……」


やっぱ飲むんですか。 皆の歓声がすごいですね。

てか在庫なくなるって本当どんだけ飲んだのさって話ですわ。


「当たり前だ。 ……ところでウッド。後ろのそいつはなんだ?」


「へ?」


なんのこっちゃと後ろを振り返ってみれば、すぐ後ろに外で待っているはずの像がいたぞう!

ていうか居るのにぜんっぜん気が付かなかったよ。 ハハハ。


「あ、待っててねーって言ったのに……タマさんの故郷から連れて来た子です。 果物あげたら懐かれちゃってですね……」


「ほー……そいつ、子供か何かだったりするのか?」


「へ? いや、成体だと思いますけど……だよね?」


小っちゃくなっただけで子供になった訳じゃーない……よね?

なんだろ、ゴリさん何か気になることでもあるんかな?


「成体だニャー」


「そうか、なら気のせいか……昔そいつに似た山みたいにでけえ化け物を見たことがあってな。 ま、気のせいなら良いんだ」


ぐほっ……あ、危ない、昔見たことあるのか。 最初からそれ言われてたら表情に出ちゃってたろうね……セーフセーフ。



……セーフかなあ?

ゴリさん気付いてそうだけど……これ以上何も言わないってことは見逃してくれるってことなんだろう。たぶん。


「ところでそいつの名前は?」


「あ、いえまだ決まってないんですよ。 中々気に入って貰えなくて……」


格好いい名前いくつかあげては見たんだけどねー、どれもお気に召さない様で。

決して俺のセンスがダメなせいじゃないよっ?


「なるほどな……それじゃあ、グリコなんてどうだ?」


「ぐ、ぐり……??」


それじゃあ!?

どこから出てきたその名前! てかアウトですアウト!


こ、これで象が気に入ってしまったら……。


「……き、気に入らなかったみたいデスネ」


首を横に振ったぞ!

ちょっと悩んでたけど! ちょっと悩んでたけどな!

てか、俺が考え抜いた名前よりも良いと申すか。泣いちゃうぞ!


「そうか……良い名前だと思ったんだがな」


そう言うとゴリさんは肩を落として皆のもとに戻っていった……。




「危ないところだった……リタさーん。 お土産っす」


なんかすっごい疲れた。

……あとはリタさんにお土産物渡して家買う相談しないとだ。



「ウッドさん、無事戻られたんですね。 これは……ありがとうございます。 可愛らしい瓶ですね、てっきり毛玉か何かをお土産にするんじゃないかと内心不安でしたが……」


「まさかー、そんなのお土産にする訳ないっすよー!」


ハハハハハッ! そんなことする訳ないよね!!

ちょっと思い浮かんだだけでデスヨ、冗談冗談。


……ふぅ。



あ、リタさんのお土産だけどね、ゴリさん達に渡した樽と違って焼き物の瓶にはいったやつだよ。 表面にぽんって肉球押してあってとても可愛いです。

自分用にも何個か確保してあるぜい。



「あ、そうだリタさん!」


とりあえず何か突っ込まれる前に話題変えちゃお。


「は、はい」


「実はですね、メンバー?が増えたのでそろそろ宿じゃなくて家を拠点にしようかと思っていまして、どこか良さそうな家を紹介して貰えないでしょうか?」


「家ですか……分かりました。いくつか空き家がありますので書類お持ちしますね」



後ろにいる象をちらっと見て表情を変えずに奥へと引っ込むリタさん。


んー……気が付いてはないっぽい?それとも知らないか……まあ、何とかなりそーですね。良かった良かった。


んじゃあとは良いお家を探すだけだね。

部屋はそんなに広くなくても良いけど……いや、待てよ。 友達が遊びにきてそのままお泊まりという可能性もあるのではないでしょうか。

そうなると部屋もある程度広く、部屋数もそれなりに必要かな?



友達いねえだろとか言わない。少しは居るんだからねっ!?

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