第107話 「106話」
「に、逃げ……あ、だめだむっちゃ早い」
これはあかん。
と言うことで逃げようかなーと思ったんだけどさ。
あいつ体がでかいだけあって歩幅がすごいの。 軽くトットットって感じで走ってるのに一気に距離詰められたよ!
「ど、どうしよタマさん……たぶん害意は無いと思うけど……」
焦ってわたわたしている間にそいつは俺達の目の前へと来てしまう。
ただ何か仕掛けてくると言うことは無くて、ただじーっと俺を見つめている。
なんかすっごい期待してそうな眼差しで……。
これはあれか、餌付けしてしまったと言うことだろうか?
「ウッドが責任もって飼うニャ」
「まじで」
「冗談ニャ。 あんなの連れて帰ったら騒ぎになるなんてもんじゃないニャ」
「ですよねー!」
冗談かい!
一瞬焦って素で反応しちゃったじゃないかい。
……まあ、冗談なんだろうけど。 このまま進むとたぶんこいつ着いてくるよね……?
つまり大騒ぎになってしまうわけで、この場でどうにかするしかないと……知性はありそうだしダメ元でこいつ自身に聞いてみるか?
「な、なんの用かな……?」
……は、反応がない。
相変わらず俺をじーっと……そうか、もっとスイカが食いたいってことかな?
「あ、スイカもっと食べたい? ……違う?」
違うっぽい。
ぶんぶんと首を振りましたよ……てか長い鼻が目の前でブォンっって唸って怖い。あたったら痛そう。
「えぇー…………一緒に行きたい、とか?」
……あ、頷いた。
「わーお」
そぉっかー。一緒に行きたいかー。
いやぁ、俺産の果物すごいね!
食った子みんな夢中になりますね。絶対やばい成分入ってるでしょ。
んで、一緒に行きたいってことなんだけど……嬉しいけど無理くさいよね。
「ちょぉぉぉっち無理かなあ。 いやほら、それだけ大きいと街とか入れないし、ね?」
街とか入れないし、てか近付いたらダンジョンシーカーが迎撃にくると思うの。
俺ごと吹っ飛ぶ未来が見える。
そんな訳で何とか諦めてもらうしか……って、あれ? なんか全身が光り始めてきたような……?
「うおっ、まぶしっ!?」
急に光量あげるのやめてぇっ!?
というかなに!? なにが起きてるしっ!??
「体が縮んで……!? ま、まさかこれって!!?」
薄目で確認したら、なんかこの子縮み始めましたよ!?
こ、これはまさか……光が収まったとき、そこには美少女がっ!とかのパターンなのではないですか?
やばい、テンション上がってきた!
一体どんな美少女になると言うのだろうか……わくわく。
単純に縮んだだけでした。
「知ってた!! ああ、知っていたとも!」
知ってた!!
だけど俺のわくわくを返してっ!
そんな感じで凹んでいる俺ですが、一方でタマさんはと言いますと……。
うん、俺のことスルーしてなんかこの子の回りを歩いてしげしげと眺めている。
食べ頃サイズになったぜ、とか考えてないよね?
「このサイズなら街に入れるニャ」
うんむ。
確かにこのサイズなら街には入れそう。
丸っこい小型の馬ぐらい? そんな感じのサイズだし、タマさんの故郷から連れて来た家畜でーすとか言っておけばたぶん大丈夫っしょ。
「それじゃ一緒に行くぅ……?」
そう俺が聞くと嬉しそうに頭をなすり付けてきた……んむ、小さいと普通に可愛いな! 尻尾食べてごめん!
「あー、そうだ」
「ニャ?」
「宿どうしようね? 部屋には……たぶん無理よね?」
街へ入った後どうするべーと。
宿ってたぶんこの子泊まれないよねえ? タマさんいけるんだしこの子もいけるんじゃないかなーと少し期待はあるけど、タマさん二足歩行だけど、こっちは四足だもん。たぶん馬とか牛枠でカウントされそうな予感がする。
「ニャ。 少しの間は馬小屋で我慢してもらうニャ。 ウッド、貯金はあるかニャー?」
「ほへ? んー……ちゃんと数えたことないけど、結構たまってるよ。 どしたの?」
やっぱ馬小屋になるよねー……ううむ。
ってお金? お金ならたっぷりありますぞ? ここしばらく装備も買ってないし、ぶっちゃけ食っちゃ寝するぐらいしかお金使ってねーのです。
それはそれでどうなの?って意見もありそうだけど、あまりお金使う機会がないんだよねえ。
娯楽とかもそんなにある訳じゃないし。 賭け事はやらない主義ですし。
そんな訳でお金はいっぱいあるのですよ。
んで、そのお金がどうかしたのかな?
「家買うニャ」
「おぉー! か、買っていいの?」
愛の巣かな?
「いいに決まってるニャ。 タマもお金出すから街についたら家を探すニャー」
ずーっと居心地良いから宿に居たんだけど、そうだね家買ってもいいよね。
お金ならあるし!
食事の用意がちょっと手間だけどそこはほら、宿に飯食いにいってもいいし、ギルドで食ってもいいしで何とかなるし?
うん、いいと思います!
「おー。 と、言うわけで皆で住める家を買うから、それまでちょっと我慢してもらっていい?」
と言ってみれば、うんうんと頷く……えっと、名前なんだろうね?
呼び名ないってのも結構辛いものがある。
「おー……この子……えっと、名前どうしよ?」
「タマの故郷だとみんな適当に呼んでたニャ。 ハムとか、尾肉とかニャ」
「ひどっ……街につくまでに考えよっか」
なんちゅーか、食料としか見てないなっ!
実際食ってるわけだし。
たとえにゃんこに囲まれて生活できるとしても、あのままあそこに居たらいつか尻尾以外も食われていたかも知れない。
俺達についてくるってのは正解だったかもねー。
まあ、着くまでに良い名前を考えてあげようじゃないの。
俺のセンスに期待しててね!
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