なぜかヤジのあるミステリー小説





 埼玉県 北楢きたなら市某所に小さく建てられた、威厳のある館。その主・仲村赤児なかむらせきじの誕生日を祝すべく館には六人の男女が集まった。名の知れた有名女優、会社社長、アパートの大家、痴漢魔。などなど、それぞれの分野で大きく功績を残し、また曲者くせものぞろいのメンバーが揃った。




 事件は夜に起こった。晩餐が執り行われている最中、赤児が「じゃ、ワシは風呂入ってくるよ」とあからさまなフラグを立ててその場から退散。案の定、風呂場で首を絞められて殺されていた。死亡フラグは立てるものではない。


 赤児が宴会場から姿を消して、死体が見つかるまでの一時間に全員のアリバイはない。しかも都合よく、都心で数十年に一度の雪のせいで交通網はストップされ、警察や救急車も来ることがない。よって密室の完成。


 さあ困った困った。そう読者が頭を抱えたとき、


「これは厄介な事件ですな」


 そう。皆さんご存じ、名探偵・織田二五郎のご登場である。偶然にも現場に居合わせたその探偵は、主人に招待された六人のうちの一人であったのだ。彼は助手の木下とともに捜査へ乗り出すのだが……。


 


    ・     ・     ・ 

 



「(帰れ帰れー!)えー、ゴホンゴホン。全員、確かにいらっしゃいますね。ここで皆様に集まってもらったのは他でもありません。そうです。この館の主・仲村赤児を殺した犯人がついに、私の名推理によって解き明かされるからです。(黙れクソザコー!)」




「いやあ、長い道のりだった。ここまで来るのに苦労したものです。(うるせえヒキニート!)犯人の巧妙なトリックに私としたことがついつい流され惑わされてしまいましたが、おかげでとても有意義な時間を過ごせたので、それもまた一興でした。(うるせえお前が無能なだけだカス!)」




「そしてまず君には感謝せねばならないね、スティーブン。(誰だてめえ)

君があの手掛かりに気付いてくれなかったら、私はいまだ路頭に迷わされていたところだっただろうよ。さすが、私の相棒といったところだ。(寝言は寝て言え!)ありがとう。」




「……ん、誰かを早く知りたいと? おやこれは失敬、つい無駄話を。そうだな、順を追って説明しよう。(ハーリーアップ! クソザコナメクジ!)」

 



「まず赤児さんが殺されていた風呂場の確認から入りましょうか。実は、あの風呂場、事件当時に鍵が閉められていたことが分かったのですよ、内からね(嘘つけポンキチ!)。これは赤児さんが、風呂に入るときは大抵鍵を閉めることを習慣づけにしていたことが読み取れる。(知らねーよ! 証拠あんのかよ!)これは使用人さんからの証言からも取れました。(いいぞ田中さんもっとやれ!)」




「犯人の動向をみると、彼彼女は真っ先に鍵の保管してある管理室を経由して風呂場に向かっているのですね。床に落ちていたレシートから判明しました。そちらにいくルートは、普通なら遠回りになってしまいますが、管理室を通るというのなら自然な道のりです。(よく分かんねえよー! )つまり、犯人は赤児さんが風呂場に鍵をする習慣を当然のように知っていた人物、が濃厚になります。(誰だよぶち殺すぞ!)」




「このことから、今日初めて館に招待された、私と助手、さらに北川さんは除外していいでしょう(てめえ先に逃げやがって調子乗んな!)。さらに、わざわざこの情報を教えた使用人さんも除外します。残った二人をしぼるには、このレシートから判明が付きました(早く教えろカス!)」




「コンビニのレシートです。買ったのはビニール傘一つ。どうです? 昨日、皆さんが館にくる道中、雨が突如降ったでしょう。近くのコンビニで購入し、難をしのがれたのでしょうが、ヘマが出ましたね。私の記憶では、ビニール傘を持ってここに来たのは二人しかいませんでした(もったいぶんじゃねえ!)。そう、助手のスティーブンとあなただけ(うるせえ帰れ!)」



「あなたですよね。犯人は。(帰れー!)」



「あなたです。(うるせー!)」



「だからあなた」



「(……)」



「……」














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