短文的な物

雨水

流るる儘に

 男は絶望を感じた。

 たった一人のワンルームに佇む事しか男には出来なかった。


 どうしてこんな事に? それさえ答えてくれる人は居ない。


 手元を見ると無残な光景だ。

 声を出して泣きたくても此処は壁が薄い、近所迷惑になるだろう。


「大切な物を失ってしまった……」


 小さく呟くそれは、何の力も存在しない。

 もはや代わりの物など無いのだ。


「もう何処にも無いのに」


 周囲を見渡しても何もないのだ。

 そして誰も彼に手を差し伸べる人も居ない。


「頼むから……時間を戻してくれ」


 願うそれが叶うはずも無く、ただただ時間が過ぎていくだけだ。




 その日かれは大切な物を失った……。

 男は只その残骸を見る……シンクに流されたカップ焼きそばの跡を。

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