第4話

 僕の名前は只野広。

最高の彼女を持つとてもhappyな一般人だ。

今日は彼女に誘われて少し遠出の週末デートに向かうところだ。

「じゃあ、来週は私のお勧めの<いせかい>に行きましょうよ!」

彼女の言葉に困惑を覚えたが彼女の行きたい所は僕の行きたい所だ。

今日は彼女と二人で<いせかい>に向かっている。

電車に乗って。


「着いたわ!」


「なるほどなるほど!」

「伊勢市駅!」

「って!」

「伊勢かい!」

そう、そこは異世界。

では無く、三重県伊勢市である。

二人は伊勢市駅に降り立った。


「伊勢神宮にお参りします!」


「なぜ突然?」


「この間みたいに、変な世界に巻き込まれるといけないのでお参りします!」

「では、正式にお参りしますので!」

「広君が間違ったら!」


「間違ったら?」


「つねります!」

「では!」

「伊勢神宮には内宮と外宮がありますが!」

「正式にお参りする順番があります!」

「さて!」

「今から行くのはどちらでしょう?」


「えーと!」

「普通は外から内に入るから外宮かな?」


「正解です!」

なんか正解したのに残念がってる気がしないでもないが。

とりあえず、つねられずに神宮行きのバスに乗り込んだ。


「着きました!」


「ここが伊勢神宮か、デカいな!」

「まあ二つもあるしな!」


「何の事ですか?」


「いや、だから内宮ってのと外宮ってのがあるんでしょ?」


「ここは外宮だけです!」

「内宮は5キロほど離れているのでバスに乗ります!」


「凄いな!」

「あ、水飲み場がある!」

「ちょうど喉が渇いてたんだよね!」


「えい!」

和美は無造作に柄杓を取ろうとした広の手を払う。


「いて!」

「え!」

「何すんの?」


「ここにあるのは水飲み場ではありません!」

手水ちょうずと言います!」


「まず右手で柄杓を持ち左手を水で清めます!」

「今度は左手で柄杓を持ち右手を清めます!」

「今度は右手で柄杓を持ち左手で水を受けて!」

「その水で口をすずぎます!」

「口に付けた手をもう一度清めて!」

「残った水を柄杓の柄全体にかかるように流して清めます!」

「柄杓をもとに戻して!」

「ハンカチで手を拭いて終わりです!」


「そうなんだ!」

広も教わりながら手水を済ます。

「じゃ、行こうか!」

広は和美の手を引こうと手を差し出した。

和美はその手をおもいっきり引いたため、広はこけてしまった。

「端に寄ってください!」

「真中は神様の通り道なので!」

「真中を歩いてはいけません!」

「端に寄ってください!」


「では参拝をしましょう!」

「二拝二拍手一拝です!」

「後に続いてやってみてください!」

和美は二回礼をして二回拍手をしてもう一度礼をした。

広もそれに倣う。


こんな感じで二人は和美の厳しい指導の下。

正式に外宮と内宮にお参りし。

広の知識は少し増えた。


「そういえばさ!」

「休日なのにカップルは僕らしかいなかったけど!」

「なんかあるの?」


「ここに祭られているのは!」

「外宮は豊受大神宮様、内宮は天照大御神様です!」

「どちらも女神様なので!」

「男の人と来ると嫉妬して別れさせると言われているからですよ!」


「ええ?」

「それって俺と別れたいって事?」


「どう思いますか?」


「違うと思います!」


「はい!」

「正解です!」


「実は、私は女優を目指しているので!」

「私の演技力を試したくて来ました!」


「どんな演技?」


「躾のなっていない弟にお参りの仕方を教える姉!」



「面白いじゃないか!」

「でも、それも違う!」



「本当は宣戦布告に来たんです!」

「私の彼氏は最高の彼氏なので!」

「連れてこなくてもそのうち嫉妬されてしまう!」

「ならば先に宣戦布告して!」

「別れませんよと言っておこうかと!」



「それは!」

本当っぽいな。

僕のどこがそんなに気に入ったのかはともかくとして。

実際につきあっているのだからな。


「それに!」

「ちょっと納得出来ないのよ!」

「ロミオとジュリエットは悲劇の物語なのに!」

「ジュリエットの銅像は触ると幸せになるとか言って!」

「カップルの観光スポットにもなっているのに!」

「女神というだけで!」

「とんだ風評被害じゃない?」

「だから!」

「また来ようね!」


「うん、来よう!」







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