涼香の能力{改済}

 要は城の外にでて辺りを見渡すと、空一面に黒い雲がモクモクと広がり暗くなっていた。


 それをみた要は不安になる。


(これは……。もしかして遅かったのか?クソォッ!涼香。頼む、俺がいくまで無事でいてくれ)


 そう思っていると山のふもとの方から、


「ギャオォォォーーン!!」


 と雄叫びが聞こえ、要はその方角をみた。


(クッ、マジかよ!龍が既にきてる。このままじゃ間に合わねぇ。クソォッ!涼香……)


 そう思い要は怖い気持ちを堪え、急ぎ涼香のいる山のふもとへと向かった。


 ♣︎

 ♧

 ♣︎


 場所は移り。ここは山のふもと。


 龍神バルロスは涼香をみると、


「今年はなかなかの女を、生贄に用意したらしいな。さて……」


 バルロスが涼香に近づいていくと、その轟音により涼香は目を覚ます。


 数十メートルはあろうかという巨体のうえに恐ろしい顔をした龍が、口を開け鋭い牙を涼香に向けている。


 涼香はその圧倒的な存在感と威圧感に驚き恐怖した。


「な、なんで龍が。め、目の前に⁉︎って、私なんでこんなとこに寝かされてるの。ま、まさか。これって!」


 バルロスは涼香が目を覚ましたことに気づき話しかけた。


「さて、どうしたものか。目が覚めてしまったらしいな。苦しまずにひとおもいにと思ったのだが。まあいい」


 そう言うとバルロスは涼香に襲いかかる。


 涼香はそれをみて恐怖し、どうしていいか分からず泣きだした。


「な、なんで……。うっ、いやー!まだ死にたくない‼︎う、うぁぁぁぁーーーー」


 涼香はあまりの怖さに泣き叫び、無意識に全身に力をこめバルロスの方に両手をかざしていた。


 すると涼香の両手から眩い光が放たれ、その光は一瞬にしてバルロスの巨体を覆い尽くす。


 バルロスは急に動けなくなり涼香の方に吸い寄せられはじめた。


「うぐっ⁉︎これは……。まさか!この力が使えるという事は、お前はこの世界の人間ではないな」


 バルロスは堪えていた。


「うっ、まずい!もし、今のままこの女が我を体内に取りこんでしまえば。我の力に耐えきれず消滅してしまい。そして、我もまた消滅してしまう」


 バルロスはどうこの場を切り抜けるか考えていた。


「迷っている時間はないか。我にとっては最悪な選択だが。そうも言ってはいられん」


「あーイャァァァーー‼︎ハァハァ。く、苦しい……」


 涼香はその力の影響により、体を引き裂かれるような痛みと苦しみに襲われもがき苦しんでいた。


「ふむ。これはやはり……。仕方ない。おい女!話すことはできるか?」


 バルロスにそう聞かれ涼香は話そうとするが。


「ハァハァ、な、なに?……」


 あまりにも苦しく、やっと声がだせる程度だった。


「無理なようだな。やむをえん。時をとめ思念をおくり話した方が良さそうだ」


 ♧

 ♣︎


 “……おい!聞こえているか?”


 “??なんなの。これは?”


 “聞こえているようだな。我は龍神バルロス。そして、お前を喰らおうとした。だが現在、お前の身体に吸収されそうになっている”


 “それって、どういう事なの?それにこれは?”


 “我が一時的に時をとめお前に思念をおくっている”


 “でもなんで?”


 “お前は恐怖のあまり能力を無意識に発動してしまったらしい。そのせいで我はお前の身体に吸収されそうになっている”


 バルロスは一呼吸おき、


 “だがこのまま我を吸収すれば、お前も我も消滅するかもしれん”


 “そんな消滅って!”


 “ふむ。だが一つ方法はある。ただ成功するとは限らんが。どうする?”


 そう言われ涼香は考えた。


 “でも、その方法しかないんだよね”


 “ああ。ただ、これだけは言っておく。もし成功したとしても、お前の身体に想像を絶するような負担がかかるだろう”


 “それって……”


 “それは我がなんとか力を使い、軽減させるつもりではいる”


 “分かりました。それで助かるなら”


 ♣︎

 ♧


 ……この時、私は分からなかった。

 ただ私は助かりたい一心だった。

 まさか私の身に、こんなことが起こるなんて知る由もなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る