第17話王族

 優しく包容力があり決断力と政治力にも優れている王と、美しく周囲を明るい雰囲気にさせ魅力的な王妃は国民にとても人気のある2人だった。

2人とも家族やパートナーとして尊敬と愛情は持っていたが、恋愛感情はなかった。

 その為王は、王弟と同じ外見の銀髪で紫の目の王太子は、王妃と弟の子供ではないかと考えていたが、気にしていなかった。

 王太子が優秀なら国王として国を継がせるつもりだったが、残念ながら努力も才能も魅力も足らず、王太子は王たる器ではなかった。


 王妃と相談し、王位継承権1位を第1王女、2位を王弟、3位を第2王女とした。

婚約者が決まり次第、王太子は廃嫡、王都から離れた伯爵領で暮らすことになる。

王太子がこの事を知るのは、婚約者が決定した時になる。


 どうして王太子はああなったんだろうと、王は王妃に話し出す。

「バレット公爵家と、婚約者決定まで意志が変わらなければ、選ばれても婚約辞退を許可する約束をしたから、バレット家との婚姻は無理だろうな。バレット家なら婿養子で相続権はないが公爵になれたのに。

 他の2人は公爵家を継がないから、バレット家に入ってほしかったが、家族の総意だって言われたらな。ハワードに国から出て行かれでもしたら困るし。」


 その上、王太子と側近候補ジャン・ロレーヌ公爵子息は貴族達からの風当たりが強い。

「先日のパーティーでの失態は酷かった。

 あんなのは貴族令嬢同士の可愛らしいお遊びだ。

ドレスに飲み物がかけられただの相手がぶつかってきただの。

 騎士が仲裁のに動こうとしたのに、なぜかジャンが出てきて片方の令嬢を責め謝罪を要求、王太子まで出てきて一緒に令嬢を侮辱し謝罪させようとした。

結局責めた方が被害者という、最悪な結果だったな。


 王族が貴族令嬢の遊びに横入りし、証拠もないのに決めつけ片方の貴族に圧力をかけた。

権力の横暴と取られかねない。第1王女がフォローしてくれてよかった。

 第2王女もロレーヌに不満を言ってくれたおかげで、王太子以外の王族が今回の出来事に対して王太子とジャンを非難したと周囲に広められたしな。


 だけどなあ、第2王女はロレーヌにこう言ったんだ。

「公爵家子息が幼子のような対応しか出来ないのなら、出来るまで何年掛かろうが外に出すべきではないですよね。愚者を外へ出し、王族を巻き込ませたのですね。

 騎士団を希望なさっているとか、双方の言い分を聞かず一方的に愚者の思い込みで判断し身勝手にも愚者が権力を使い責め立てるだなんて。そんな愚者は騎士団を希望するだけでもおぞましいと思いますわ。公爵はどうお思いなのですか」

 って言って去っていっちゃったし。あなたの意見は聞く価値ないわよって態度だよね。


 公爵は子育てに失敗したな。でも俺達も王太子の子育てには失敗したからな。

第2王女の言葉は、心にナイフをグサグサ突き刺されている感じだったよ。」

 王と王妃はため息をついて、2人とも落ち込んでいた。



 王太子は、小さな頃から外見から王弟の息子では、と疑う声がある事を知っていた。

 勉強も剣も魔法も社交術も、どんなに頑張っても、第1王女に敵わず、皆第1王女を褒めた。それに比べて王太子はと・・・・・・。

 第2王女は要領が良く、明るく可愛らしい王女は周囲に愛される子になった。


 自分が皆から評価されず、不当な扱いを受けていると思うようになり、自分の味方になってくれる人間としか過ごさなくなっていった。


 誠実で陰口などを嫌い王家に忠誠を誓う騎士団長の息子ジャン・ロレーヌ公爵子息、皆に好かれるが策略家で王子の望む事を言うダニエル・トーン伯爵家子息を、側近候補にして常に一緒に行動する。

 諫めてくれる人がいないので、自分の考えが正しいとしか思えなくなっている。


 前回のパーティーで自分の評価が下がり、王女達の評価が上がった。被害者が自分が責めた子だと聞いたが、自分を陥れるための嘘だと信じている。

「可哀想なあの子。王女達の評価を上げるために濡れ衣を着せられ、ジャンも謹慎って聞いたし、酷すぎる。」

 王太子の妄想は止まらない。



 第1王女は、幼い頃から何でもできた。周囲からの称賛も欲しい情報も、必要だと思ったものは手に入れてきた。人が自分を命がけで守る事も当然だと思っていたし、そのために背負うべき物があることも分かっていた。


 リーバ国では女性の職業が、殆んど自由に選べない。貴族の女性など家や国の為に生きている。それは国にとっても損失だし、女性にとっても不利益だ。

 この状況を不満に思っていたし、自分なら変えて行けると信じ、王になるつもりだ。


 先日のパーティーで王太子が自ら令嬢の小さな争いに口を出し、うそをついて嵌められるところだった方の令嬢に謝罪を要求していた。

 騎士に任せれば大事にならなかったのに。周囲がの険しい視線にも気づけない。

側近共々あれに権力は持たせられない。王になったら真っ先に処分しようと決めた。


 第2王女は、継ぐ気はないと自分を支援しているが、何か悪い事をしていそうな気配はある。自分の邪魔にならない限りは放置して、いずれ互いに話し合う必要がありそうだ。

 そして今は、良い婿を他国で探し中だ。

「お父様とお母様のような、いいパートナーを見つけられと良いな。」

 第1王女の未来は、王の即位に向かって順調に進んでいる。



 第2王女は、要領のいい子だった。

表ではいい子で愛されていたが、お金・贅沢・珍しいものが大好き。手に入れる為に、犯罪組織も作り上げた。捨て駒に男爵家子息を使い、順調に利益を上げていた。

 所が運悪く、街に会った犯罪組織が公爵達と騎士団に潰されてしまった。


 最近は魔法研究所を乗っ取ってさらなる犯罪組織のレベルアップを図りたいが、騎士団に妨害されて苛立っている。でも、目立って王や姉に目をつけられるのは怖いので今は我慢している最中だった。

 王には全く興味ないので姉を応援して、姉に協力する代わりに今まで通り欲しいものが手に入ればいいと思っていた。

 先日のパーティーで日頃の恨みを込めて、ロレーヌ公爵を言い負かしスッキリとしている。


「騎士団には色々やられてるからね。ロレーヌ公爵に遣り返せて嬉しかったな。

王太子とジャンが何かするほどロレーヌ公爵に遣り返せるわね。

どうせまた、何かやるでしょうし、王太子とジャンは当分見守ってあげよう。」


 黒い笑みで嬉しそうに笑う第2王女。街の犯罪集団の代わりを見つけるために部下と計画を練るのだった。



 第1王女の王への道は順調に進んでいる。王太子への破滅への道も。

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