第46話 リー先生

 リーが木の上から声をかけてきた。


「いつからそこにいたんだ? リー」

「さっき飛んでたカラスが落ちたあたりからかな。声をかけずらい雰囲気だったんで待ってたんだよ」

「そうか。リーこっちはソフィアだ。まだ魔法に慣れてなくて一緒に魔法の使い方を教えて欲しいんだ」

「ああ、いいぜ。俺はリー。よろしくな」


 そう言って木から降りてきて手を出すリーに、俺の後ろに隠れてソフィアは答える。


「……よ、よろしくお願いします」

「なあ、姉ちゃんよ。エルフは苦手か?」

「……い、いえ……。そんな、ことは……」


 助けを認めるように俺を見るソフィア。


「悪いな、リー。ソフィアはエルフとかお前自身が苦手とかじゃなくて初対面の人が全て苦手なんだ。勘弁してやってくれ」


 リーはジッと怯えるソフィアを見た。


「そっか、そんな奴もいるもんな。まあ、良いや。ところでこれ約束のものな」


 リーは懐から紙の手紙を俺に渡す。紙は安い物では無いが、エルフ族の特産品だ。


「わかった。これを西地区のエルフ族のユリさんに届ければ良いんだな」

「ああ、お願いだ」

「ちなみに家に居なかったり、返事を渡された時はどうする?」

「この先にエルフ族の狩猟小屋があるんだ。そこに行けばおそらく里の誰かがいるから伝言をお願いしてくれ。今日、魔法を教えるのにこんな所じゃゆっくり話も出来ないから、長老会に許可もらったんだ。レッドキャップから助けた人間が礼に来るからって」


 そう言ってリーは歩き出した。


「ちょっと待て、誰が誰に助けられたって?」

「いひひ、しょうがないじゃん。そう長老会に言っとかないと俺が一人前に認められないんだから」


 そうだった。リーは街にいる姉と一緒に暮らすために一人前と認められなければいけないのだった。


「それでどうじゃった。里の人々は」

「鹿一匹とレッドキャップ五匹を一人で仕留めたということで恐らく、街に行く許可が出ると思うけど、ちょっと時間がかかるかもな。長老会の頭が硬いんだから。ああ、ここ登って」


 ある木の下に来た時、リーは木を登り始めた。

 続いてムサシマルが登り、上からロープを下ろしてもらう。


「ソフィア、先に上がれ」


 ロープを持って登るが、もともとアウトドアの人間では無いソフィアはなかなか上がれない。

 俺は下から登るのを手伝ってやってなんとか登ったあと、俺もロープを使って上がった。

 木の下からはうまくカモフラージュされていたが、登ると小屋が見えてきた。

 小屋は四人も入ると一杯の小さな小屋である。

 子供の時、憧れた木の上の秘密基地のようだ。


「それで何を聞きたいだ?」


 リーは適当に座るように促した。


「単刀直入に聞くが、魔法の派生方法とマナ量の調整方法、マナ量の増加方法だ」

「派生方法はさっきその姉ちゃんがやってたような感じかな。魔法対象の調整とマナ量の調整だよ。オレの基本魔法は草系を動かすんだけど、本質は植物全般のコントロールだから、同じ魔法で木も動かせるんだ。姉ちゃんの魔法も脳と心臓と使い分けてたんだろう。キヨの指示でわかったよ」


 俺が考えていた方向性は間違いなかったな。


「対象物によってマナ量を変化は自然と出来るはずだけど、自分でマナの使用量を増やせば威力が上がる。マナ量の調整方法は人それぞれだけど、オレは水をイメージするな」

「水のイメージ?」

「ああ、水が自分の体から出るイメージだな。この水の量を調整するイメージだ。その時に体の中にある水の量もイメージ出来れば、マナ切れも防ぎやすい」


 体から出ていくマナ量をイメージで調整するのか。


「それで自分のマナ量を増やすことができるのか?」

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