第28話 暴走

 ん!? 聞き間違えか? デート? 信頼を得るためにデート?


「どういうこと?」

「男女がお互いをよく知るためにはデートが一番だと本に書いてありました。……ですのでデートをすれば信

頼に足りる人かどうか判断できると思うのです」


 ソフィアは大真面目だ。


「え~と、他に選択肢は?」

「デートがお嫌なら、一緒に住むというのはどうでしょうか? そうすればおのずと二人の信頼が深まると本に書いてありました」

「却下! 他には?」

「では子供を作りましょう。子はかすがいと申します。お互い簡単には裏切らないでしょう。大丈夫です。籍入れなくても結構ですよ。月に二度ほどあたしと子供達に会いに来ていただければ」


 なぜか子供が複数いる前提だ! いかん。話がおかしな方向に行っている。


「わかった! デートしよう。ただし詳しくは後で連絡する。今日はこれで帰って貰えないか?」


 半ば強引にデートをすることになった。


「……ご連絡、楽しみにしてますわ」


 そう言ってソフィアは俺に抱きつき、その豊満で柔らかな胸を押し付けた後、帰って行った。



 困った。どうする?こんなことレイティアにバレたら!

 俺はムサシマルが待っている酒場へ行く途中、何か良いアイデアがないか考えていた。


「よう、大将! 今日の夕立凄かったなあ、雨は有難いがこう蒸し暑くなると体にこたえるね。ムサシマルは来てるだろう」

「おう、そうだな。だが、キヨはまだ若いんだからジジくさい事言ってんじゃねえよ。いつものでいいか? ムサシマルならそこだよ」


 禿げた親父が愛想よく指差した先にムサシマルがいた。


「あら、遅かったわね。キヨ」


 そこにリタもいる。


「レイティアは?」

「あなたの嫁はちょっと遅れるわよ」


 短い赤髪を揺らしながらリタはいつものようにからかってきた。

 いつもなら寂しく思うが、今日はちょっとほっとする。


「なあリタ、ちょっと相談に乗って欲しいんだけど」

「なあに、ビール一杯から相談に乗るわよ」


 もう出来上がっているのか、上機嫌だった。


「今日は好きなだけ飲んでいい」


 俺はソフィアが魔法習得の儀の代わりにデートをする条件を出したことをかいつまんで話した。

 当然、ソフィアが裸になったくだりはすべて隠した。


「レイティアに殺されたいの?」

「だから、リタに相談してるんだろう。こんなチャンスもうないだろう。それともリタが金貸してくれるか?」

「お金なんてあるわけないでしょう。なにバカなこと言ってるのよ」

「そうだよな」


 俺は頭を抱えた。

 魔法かレイティアのどちらを取るかか?


「ちょっといいか?」


 それまで黙って聞いていたムサシマルが口を開いた。


「結局、お主たち結婚したのか?」

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