魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!
三原みぱぱ
転生者 清人
第1話 転移
雲一つない晴天だった。
しばらく雨が降っていない乾いたその街の郊外の闘技場で一人の女と一人の男が戦っていた。
主に警備隊の訓練所として使われる闘技場は多人数の訓練も想定しているため、三十人以上が一度に戦っても十分な広さである。
周囲にはすり鉢状の観客席がレンガで作られている。
闘技場そのものは砂が敷き詰められ、太陽に照らされた地面にはところどころ雑草が生えていた。
身長百九十センチはある黒髪の屈強な男が、自分の胸ほどしかない小柄な女に一方的に切り込まれている。
遠目には子供が大人にじゃれているように見えるかもしれない体格差。
小柄な女はまだ少女と呼ばれる幼さを残す。可愛らしさと美しさを絶妙に共存させる美少女は金色の長い髪を振り乱し、軽快に切り込む。
男の体は無駄のない鍛え上げられた筋肉がその服の上からでも見て取れる。
ほとんどの人がその姿を戦士と表現するであろう男は、軽快な動きの女に対して動きは鈍い。
どちらも軽装の皮の防具をつけているだけなのに、男の方の動きはまるで重鎧をつけているように緩慢だ。
それでも、右、左、上から下からと変幻自在に打ち込んで来る女の剣を、その手に持つ片刃剣でいなし、しのいでいた。
無精ひげを生やした男は眉間にしわを寄せ余裕のない表情で剣を受ける。
剣と剣がぶつかり合う甲高い音が、観客のいない茶色い闘技場に響き渡る。
その戦いをこの闘技場で見ているのは、たった一人の赤毛の女性のみであった。
髪が短く、活発そうな女性は真剣な瞳で二人の戦いを見つめていた。
戦いの見届け人はしゃがめば人がすっぽり隠れそうな盾を持ち、何かあったときは二人の間に割り込めるように構えていた。
幼さを残す女が百戦錬磨のオーラをまとう男から距離を取った。
次の一撃で決めるつもりか、女は息を整えてその澄んだ金色の目で男を見据える。
太陽光が燦々と降り注ぐ暑い闘技場の中、お互いの汗が闘技場の赤い砂に吸い込まれる。
男も女の次の一撃に備え、その黒い瞳でじっと女の出方を待つ。
男からは動けない。
今のスピードの差は致命的で下手に攻め込むと、カウンターを食らうのは男にもわかっている。
男の手は一つ! 次の一撃をいなし、態勢が崩れたところでこの勝負を決めるしかない。
静寂の時間。
乾いた風がお互いの頬を打ち、二人の呼吸が静かに響く。
女の呼吸が整ったその時だった。
「う~わ~~~~」
緊張しきった空気をかき消す男の間抜けな叫び声が空より聞こえてきた。
思わず、三人とも見上げた瞬間、何かがぶつかった大きな衝撃音が鳴り響いた。
赤い砂ぼこりが舞い上がり、一時的に視界を遮る。
見届け人の女は慌てて二人の姿を探す。
先ほど死闘を繰り広げていた屈強な男は呆れた顔で地面を見下ろしていた。
そこには先ほどまで戦っていた金髪の女が倒れ、その上に見知らぬ男が覆いかぶさっていた。
唇と唇は重なり合い、見知らぬ男の右手は器用にも防具をすり抜け、女の胸に触れていた。
「柔らか~」
見知らぬ男は間抜けな言葉を残してそのまま気絶してしまった。
見届け人の女は先ほどまで戦っていた男と顔を見合わせて、そのグリーンの目を大きく見開いたまま宣言した。
「勝負あり!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます