初めてのパーティー
恐ろしく金のかかってそうなイベントホールはオーケストラによって穏やかな演奏が聞こえ多種多様な人たちが食事やダンスを楽しんでいる。 中には政治や外交の話をしている強者もいるが竜也はそのどれにも属さずに隠れるように壁際の席で縮こまっていた。
「菊池さん気分がすぐれないのでしたら休憩室に行かれますか?」
豪華なテーブルに突っ伏して青い顔をしている俺を心配してなのか、椎名が言葉をかけてきた。
「問題ない、少しだけ疲れただけだから気にするな」
「挨拶は確かに多くされていましたからね」
「いや、多すぎるだろ。 この場にいるほぼ全ての人から話しかけられるのは流石に予想外だったぞ?」
「菊池さんに顔を覚えてもらえれば間接的に薬師寺様とパイプを作ることになりますからね。 直接関わりあえない野心家たちが挨拶しに来るのは当然でしょう」
「ああ、どおりで……」
来る人来る人が俺をヨイショしてきたのはそういう意図があったのか。 笑顔も不自然だったし何かあるとは思っていたがそういう事か。
「それより椎名、俺は上手く対応できていたか? こういった場で話す事には慣れていないから変な事とか口走ってなかった?」
「そうですね、対応としては可もなく不可もなくといった感じですが、初めてにしては上出来だと思いますよ」
「そうか」
椎名に無難といわれて少しだけ安心した竜也はちびちびとグラスに注がれた酒を飲みながら周囲を見渡す。 すると褐色の肌の一人の女性が視界に入った。
「…ずいぶんと奇抜な衣装だな」
皆がタキシードやドレスを着用している中で一人だけ露出の高い衣装に奇妙なマントを羽織るだけという明らかにこの場に似つかわしくない格好をする少女を見つけ感想が自然と口から洩れる。
「椎名、これから出し物とかあるのか?」
「予定ではありませんが、どうしてですか?」
「いや、浮いた格好をした女性を見つけたから。 何かの出し物と思ってな」
そう言って竜也は壁際で実につまらなそうに一人で食事をとっている少女に向けて椎名だけに見えるように指を指す。
「ああ、あの人はドワーフですね」
「ドワーフ!?」
「ええ、近々同盟を結ぶらしく薬師寺様が招待したらしいです」
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