上を向いて歩いたところで

 「先ず確認です。

 あの魔道具は本来人間大の何かが動き回ればその動きをセンサーが察知する。ですよね?」

 「あぁ、ちなみに君達には念の為ボディーガード魔道具を付けてあったから反応する事は無い。」

 それを聞いていた孫娘が反応した。

 「あれ?じゃぁセンサーが反応したのってグレイナルさんじゃないの?

 人間サイズだし、私達とは違う場所から来たし、なんだ、それじゃぁ問題解決じゃん。」

 一件落着とばかりに安堵してティーセットの茶菓子を摘まもうと指先を伸ばす。が、そこまで単純な問題ならばここまで面倒に話をしようとはしないのだ。

 「センサーが急に反応して何かが森の中にいきなり現れたんだ。

 警報音が鳴った時、急に、なんの前触れも無く、君達の付近に現れた。

 過去一時間のデータを念の為調べたが、全てのセンサーが無反応だった。

 あの場に現れたんだよ、いきなり。」

 「え?じゃぁグレイナルさん……あれ?」

 困惑する孫娘と頭を抱えた自称そこそこ天才。

 孫娘に関してはスルーで良い。自称そこそこ天才はプライドの問題だな。

 「少し落ち着きましょう。

 この問題は深く考えなければ、『魔道具がグレイナル様に反応しなかったのは何故か?』という疑問に答える事が出来れば矛盾は生まれなくなるのですよね?

 それならば、『説明出来る』とまでは言えませんが、ちょっとした仮説をお話出来るかもしれません。拙いですが説明……宜しいですか?」

 それを聞いて二人の目の色が変わった。

 「どうぞ。」「お願いしよう。」

 傾聴の姿勢が出来た。

 「グレイナル様がいきなり器機に反応したのは何故か?

 それは単純にいきなりその場に現れたからと考えます。

 私達と出会う直前まではセンサーの及ばない場所に居て、急に私達の近くのセンサーの及ぶ範囲に足を踏み入れた。それだけの事だと思います。」

 「……魔道具のセンサーは互いが互いをカバーする様に配置した。この森の中の外側まではカバーしていないが、外からあの場所までどれだけ急いでも一分や二分程度では辿り着けない。

 ちょっとやそっと速く動いたところでセンサーは確実に対象を検知する。何より、それだけ動いてしまえばその余波は確実に捉える。

 森の中だけだ。木々の生えていない場所から足を踏み入れたという事を検知していない。

 空を飛んだ……と言いたいのか?」

 先程までよりは頭脳が思考に割かれて知性の感じられる顔になった。

 「違います。それこそ、この森は木々が空を遮って下からは見え辛いですが、街道からは遮蔽物が無く簡単に見えます。それに、人間が滑空するならまだしも、飛行すれば我々の耳にも異音が届きます。

 私は、この下に何かがあると考えました。」

 そう言って目線を真下へと落とした。


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