僕達の勝ちだ!
「へぇ、そんな所に隠し収納なんてあったんだ。全然気付かなかった。」
「ぉ、お前達、なんで……」
「ドクジー!今持っているそれの中身。僕らが子どもの頃、この辺で見かけて採ってきたら『毒だから食べない様に!』って言われてた毒キノコと色がそっくりなんだけど。
もっと言えば、昨日と一昨日、村の皆が起こしていた中毒の原因に見えるんだけど。
これは、どういうことかな?」
言葉を遮ったクアットの顔は笑っている。しかし笑みは顔に張り付いてピクリとも動かない。
急に部屋が寒くなる。だというのに汗が全身から吹き出し、それが氷水の様に体を更に凍えさせていく。
『落ち着け。コイツらなら未だ誤魔化せる。』
自分の中に辛うじて残っていた冷静さがこの状況を打破する思考を絞り出す。
「お前達、ここで何をしている?村長を運んでくると聞いてこっちは
もしお前達が油を売ると言うのなら、私が行くぞ。」
床に伏せていた状態から立ち上がり、自然に証拠を仕舞い、
「嘘だよ嘘。村長は無事だよ。まんまと、引っ掛かったね。」
張り付いた仮面の笑顔が少しだけ楽しそうになった。が、それでもコイツらは素人。
「まさか私がやったとでも言う気か?バカバカしい。確かに、これらは一昨日・昨日に使われた毒の原料として使われている物だ。が、これらは毒として使う為のものではない。これに他の薬品を入れて加工する事で解毒剤にする、つまりこれは解毒剤の原材料だ。
もし今日も昨日と同じ様に人が来たら量が足りないかもと思って、今の内に少しでも作っておこうとしただけだ。」
「へぇ、解毒剤が足りないから作ったねぇ。じゃぁそれって、何?」
クアットがアイコンタクトで示した先にはトーレー。そして、その手には診療室の奥、薬品保管室に仕舞ってあった筈の解毒剤の瓶が幾つもあった。
「…………(手の中の瓶とその作り主を交互に見ている)」
何時の間にか忍び込まれて、中身を抜き取られていた。
「今直ぐに必要かもしれないのに、悠長に解毒剤を作ろうとしたの?それだけあれば十分足りるのに?そんな事を必死になってやろうとしていたの?」
誤魔化す、誤魔化す、何とかして誤魔化す!
「おぉい!ドクジーィ?手前ェ、何時だったかぁ、俺が毒をかっ喰らった時に言ってたよなぁ。『毒キノコから解毒剤は作れるが面倒で時間が掛かるからやらない』ってよぉ!あれは嘘だったのか?そうだったのかよぉ!なぁ⁉」
過去の自分が今の自分を刺してきた。
その時の自分を恨む事は出来ないが、あの頃にはこんな事になるとは思ってもみなかった。
「終わりだよ、ドクジー。さぁ、僕達は騙されない。観念してお縄につくんだね。」
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