青、震、幻、狂…



 体中に青い斑点出来て、震えている者が居る。

 魘されながら意味の通じないうわ言を呟く者がいる。

 暴れる者、嘔吐をまき散らす者、青い斑点が出来た体で言葉にならない言葉を口にしながら汚物を吐き出す者までいる。

 いやぁ……この人が苦しみ足掻き悶え表情を歪ませる様……見飽きた光景だな。

 昨日も似たような光景を見たが、それ以前に幾度も欠伸が出る程見た光景だ。

 「何……これ?」

 唖然とする孫娘。視線を泳がせて何故かこちらに困惑と助けを求める視線を送る。

 だが、説明を求める側、疑問をぶつける側は寧ろ我々の方だ。


 自称そこそこ天才に送られて昨日同様村に戻ってきた訳だが、道中病人と思しき連中と矢鱈遭遇し、診療所やその周辺が矢鱈と騒がしい。

 仕方がないから首を突っ込んでみたら昨日同様診療所前に大行列。主に青い斑点と幻覚と嘔吐の症状を訴えるもので一杯になっていた。

 「オーイさん……」

 シェリー君が孫娘に耳打ちをしようとして……

 「違う、違う違う違うって!私じゃないから!だって今日ずっとモリーと一緒に居たじゃん!」

 錯乱状態、恐慌状態、戦慄しながら首を引き千切らん勢いで横に振る。

 ちなみに、ずっと一緒・・・・・に居た・・・というのは誤りだ。

 今朝何も食べていなかったシェリー君に対して食事を持って来る際、孫娘は一緒に居なかった。どころか絶対に家から離れない様に釘を刺していた。

 昨日の今日で集団中毒事件。しかも先程説明されたばかりの毒キノコの症状2つと昨日治療した症状が混在している状態。

 さぁ、これを如何やって弁明する気かね?

 どう虐めてやろうかね。

 「教授……?」

 冷えた目で周囲を見ていたシェリー君が一層冷ややかな目をこちらに向ける。

 「何かね?」

 「余計なことは、なさらぬ様に、お願いしますね?」

 流石にバレたね、ハッハハハハハハ!

 「オーイさん、ご心配なさらず。容疑なんてありません。そもそも今朝の行動で、オーイさんは私の味方だと結論付けました。安心して下さい。」

 中毒でもないのに顔面蒼白、過呼吸気味、震えと3つ程の症状を見せていた孫娘の肩に手をやって正気に戻す。

 自分へ向けられていた幻覚の疑念は払拭されて少しだけ顔に赤みがさす。

 「オーイさん、昨日も人手不足でした。今日は更に人手が足りません。我々で・・・、ドクジーさんを手伝いますよ!」

 強く放った最後の一言。それで呼吸と震えは収まった。

 一呼吸の後、相も変わらず冷静とは言い難いが、マシになった孫娘は口を開いた。

 「わ、解った。ど、ドクジぃー?居る?手伝いに来たよ!何か出来る事、ある?」




 一時的にこれで上書き・・・が出来た。

 この状況、昨日の事件の本質を知っているなら、昨日の事件の犯人の片割れが今日何処に居たかを考えれば、最重要容疑者が誰になるか?

 それを考える暇を与えていたのなら、面倒は増していた。


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