藍色の布
《用意したもの》
・学園から持って来た荷物
・商会に依頼していた藍色の布(1m×1m)
・本人
以上だ。
「それでどうする気だい?確かに副会長から渡す様に言われてたけど、そんなちゃっちぃ布キレでいったい何ができるのさ。」
「そうでさぁ。気を遣わんで下せぇ。さ、荷物を俺達に。」
「俺達だってよぉ、プロの運び…商人なんだよぉ。
シェリーちゃんをキッチリ目的まで送り届けるって依頼を受けた以上、身内だろうが敵だろうが何だろうが仕事は果たさないとダメなんだよぉ。」
三人がかりで止めようとする。
それはそうだ。どう考えてもこの状況で靄の向こうの村まで行ける様には見えない。
布切れ一枚を荷物に結び付け、余所行きの服を着て、どう考えても雑草に足を取られて立往生が関の山。森まで到達する事さえ出来はしない。
そして、その分析は合っている。
この装備では草木を薙ぎ払い、怪異云々無しにしても手入れがされていない森を突破する事は出来ない。
だからそれをしない。
「大丈夫です。そもそも副会長に送った手紙には村の手前まで運んで欲しいと頼んでおきました。だから安心して下さい。既に依頼は達成されていますよ。
ここまで送ってくれてありがとうございました。
あぁ、それと後程商会には手紙を送って住所登録しておきます。」
あの手紙術式は確実に手紙を届けるための飛行性能と鳥の生態偽装完成度にリソースを割いている反面出発点と終着点の往復しか今のところは出来ない。
そして出発終着の登録には実際に現地に行くしか方法が無い。
「住所を登録すれば、何かあった時には直ぐに商会に連絡出来るようになります。
もし、何かあった時は、力を貸して欲しい時には、遠慮無く頼らせて頂きますね。」
木々が揺れ、騒ぎ出した。
三人は迷った様な顔をして、諦めた。
「そこまで言うんなら、アタシらはこの後この先を開拓して、適当にやらせて貰うさね。」
「どうか気を付けて下せぇ。少しでも困ったら直ぐ飛びやす。」
「健闘を、祈るよぉ。頑張ってなぁ。」
笑って送り出す。
風が吹き上がり、荷物に結んだ布が風に揺られて
1m四方の正方形が風によって
布が必要サイズにまで広がったところで魔力を布へと流していく。
空気が布へと流れ込み、逃げようとするのを施した
大量の風は広がった布の中へと飛び込み、そうして上へと押し上げる。
目を丸くして絶句する三人が下へ下へと、シェリー君は風の力で上へ上へと飛んで行った。
「では、行ってきます。」
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