モラン商会〇〇〇〇計画3
「お前らぁ、これ見ろよ!」
赤ら顔の盗賊が呂律の回らない泥酔状態で得意気に何かを掲げる。
(何かの武器?違うなぁ、なんだろうなぁ?)
「この前ぇ阿呆共のせいでぇ奴隷を逃がしかけたからなぁ、今度はぁ逃げられないよう、にぃ首輪をぉつけるぅ、ことになったじょぉ!」
『逃がしかけた奴隷』
エーは数日前に襲撃した時、商人の馬車から上手く逃げかけた男を捕まえていた。
盗賊の包囲網を器用に掻い潜って逃げようとしたのを発見。後を追い掛けて無傷で捕縛した。
無論、『
ここの盗賊達はある程度は狡猾。ただし、それ以上に血の気が多く、自分の持つ武器で人を傷付けたい、血を見たいという欲を持っている。勿論それを押さえる気もない。
この辺りに民家はない。人里まで人の足だとどう急いでも丸一日は掛かる。
そして、その間隠れられる場所なんて草むらの中くらい。ほぼ確実に捕まる。
下手に逃げて、それを他の盗賊連中に捕まればどうなるか分からない。
だからこそ、エーが直に捕まえて、『折角俺がファインプレーしたんだ。無下に扱わんでくれよ兄弟。』という文句を加えて引き渡したのだった。
「……なぁ、兄弟?そいつはどう使うんだ?
首輪って言ったって付ける前に逃げられたらお仕舞いだろう?」
「あぁあ?……あぁ、新入りには言ってなかったな。
俺達には立派な商人の
で、使えない新人を『拐う』ってことにして、こっちに、回してくれんのさ。
新人にゃー、今度っから居場所が分かる物を付けてくれるようになってる。
これはそれの場所を教えてくれる優れものってぇ訳よぉ!
それだけじゃねぇ。わざわざ他の商会に人を使って仕事を回して俺達の待ってる場所まで誘きだすってこともやってくれる。『大事な荷物だから』っておんなじ様に持たせりゃぁソイツらも逃がしゃしねぇ!変装の魔法教えてくれたり武器くれたり、情報くれたりと……やーパトロン様万歳だー。」
(っ!)
エーの感情は表情として出てしまった。不幸中の幸いだったのは周りが皆酔っていて彼の表情の変化などお構いなしだった事だ。
(言質が取れたなぁ。確実にコイツら商人とグルだなぁ。
同じ商人として、外道過ぎて許せない……なぁ!…………でも今は未だ、潜入任務!暴れるのは、あとで!)
必死にエーは義憤を抑えていた。
こうして、次の日にはアスタルト=ニューマンとエーは遭遇し、エーは先輩から託された
その夜、盗賊団のアジトの近くに黒い毛の馬と、一人の男の姿があった。
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