第四の間は疾走する

 「残るはあと二つ。予想以上に長丁場の、予想以上に大きな仕事になったもんだナァ……………………。」

 「借金返済の為の一か八かのギャンブルが、どうしてこんな風になったんだろうかにー。」

 「ぬぅ…………………『事実は小説より奇なり』とはよく言うが、まさかこんなことになるとは予想だにしなかった……………。」

 「ねぇねぇねぇ、ここって何なんだろうね?」

 「んー…………………こんだけ面倒な事をして、成果0じゃぁ報われんからのー。

 出来たら国一つ買えるくらいの金銀財宝が有ると嬉しいんだがのー………。」


 6人は大広間に集まり、次の間への準備を始めた。

 攻略した通路は再生ゴーレム、速度特化ゴーレム、巨大ゴーレムの三つ。

 残る通路は二つ。

 こちらはと言えば、些細な傷は有れど、治療不可能なレベルの負傷は誰も負っていない。

 最初は立て籠もり犯5人との信頼の無さと連携が上手くいかなかったとは言え、巨大ゴーレム時にはまぁまぁまともに機能していた。

 今の状態としては……まぁ、お世辞にも理想的、完璧とは言えないが、及第点は超えている。

 次も冷静に見極めて、存分に実践経験を積みたまえよシェリー君。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………………ガタン!


 4回目ともなれば慣れたもので、誰一人として逃げ場が無くなってしまった事に眉一つ動かそうともしない。

 広間へと続く一本道を慎重に歩いて行こうとしていた。


 ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…………………。


 しかし、その後に聞こえた石が擦れる様な音が聞こえるや否や……

 「走って下さい!」

 シェリー君が血相を変えて叫びつつ走り出した。

 今までであれば他の五人は悠長に死ぬのを待っていただろうが、シェリー君への信頼が形成されていたのか、シェリー君が走るのを見るや否や同じ様に全速力で走り出した。

 今までのゴーレム達に共通するのは『広間で待っていた』という点にある。

 その理由は再生機能の有効距離の問題や、一本道故に機動力を制限される地の不利や、そもそも巨大で入れないというディスアドバンテージや不可能性故の共通点である。

 しかし、今聞こえて来た音はこちらに近付いて来ていた。

 もし、あの音の正体がゴーレムであるとすれば、こちらに近付いているという事になる。

 何故か?

 一本道で侵入者を迎え撃つ方が向こうに都合が良い環境であるという事だ。

 6人が全力疾走して行く。曲がり角、広間に続く道へさしかかろうとした途端、一体目のゴーレムと鉢合わせした。

 ゴーレムの特徴は、人間で言う足部分が4本、逆さまにしたピラミッド…つまりは先端を下にした四角錐が4つ並んでいた。足は歩行というよりも地面を滑る様に動く仕組みなのだろう。

 先程の擦れる音の正体はこの移動音だったのだろう。

 そして、何よりの特徴は人間の手にあたる部分が無く、腕全体が筒の様になっていた事だ。


『身体強化』『強度強化』『気流操作』

シェリー君の一撃が次の瞬間、迷う事無くそのゴーレムの頭を撃砕した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る