シェリー君の考察
前回の答え合わせだ。
その前に………………。
『地形操作』
シェリー君が広間に通じる通路ギリギリから魔法を放ち、広間の石畳の地面を作り変えた。
平らな歪み無い地面が動き出し、天井まで届く石の柱を辺り一帯に生やして走り始めた。
「皆さん!少し障害物が多いですから気をつけて下さい!
特に棒術や斧は使い辛いと思います。お二人は時間稼ぎに徹して下さい!」
そう言いながらゴーレムへと迫る。
ゴーレムは動き出すも、中々動けない。
柱が邪魔で動き辛いからだ。
『身体強化』『強度強化』
今回は風のジェット噴射は使わない。しかし、動けなかったゴーレムが一体、手足を除いて瓦礫と化す。
その隙に他の6体が逃げていく。
今までのゴーレムに比べて動きが速い。しかし、その動きは十全でない所為で脅威になっていない。
そう、このゴーレムは先程のソレが再生型や修復型とするなら、速度特化型ゴーレムであった。
シェリー君は対峙する前からそれに気付き、通路から広間を柱で一杯にする事で動きを制限する事に成功していた。
何故それに気付いたか?
考えてみたまえ。
広間の大きさは先程の再生型ゴーレムの広間より少し大きい。しかし、ゴーレムの数は先程の1/3以下。何故数で押し切ろうとしない?
更に、何故ゴーレムの人の手足にあたる部分だけ材質が違い、前に見た2種より全体が圧倒的に細い?手足のみ材質を違える手間が掛かる、更には細くする事で強度は下がる。何故そんな真似をする?
更には通路に攻め込まなかった理由は?
先ず、ゴーレムの数と広間の大きさ。
簡単だ。数が大きいと折角の速い動きが制限されるからだ。
一体当たりの広間の面積を大きくすることで一体一体が動きやすくすると同時に、ゴーレム同士の衝突事故を防ぐ為だと考えては如何だ?
先程シェリー君がゴーレム同士をぶつけ合う事をやっていた。密集すると動きが鈍くなり、ああいった事故が増える。
次に、手足の材質と細さ。
これは簡単。軽量化の為だ。
質量を軽くし、可能な限り速度を上げたのだろう。
しかし、そうした事で強度不全が起きかけたので攻撃の為の手足だけは頑丈な物質に変えた……と言ったところだ。
ここまでは、速度特化である事を肯定する内容ばかり。
ならば、狭い通路に入らなかった理由は簡単。一直線で動き辛い通路に入っては正面から迎撃されてしまうから。
ここまで考えればシェリー君が柱を作り出した理由は明白。
『通路同様に相手の動きを制限したかったから。』
そしてシェリー君がジェット噴射をしなかった理由も解る。
『破壊に要するエネルギーが少なく済むと見積もり、省エネの為にジェットを省いた。』
その答えは……………見ての通りだ。
「すまん!コッチに手を貸しては貰えないかにー?」
「ヌゥ………こちらも頼む!」
シェリー君の予想通り、狭い場所で十全に得物を扱えない二人が苦戦していた。
「今行くぞ、待ってナァ。」
「今こちらは片付いた。今行くのー!」
「ねぇねぇねぇ、じゃぁ僕は向こうの方を………」
斧を持った筋肉質の方に長身痩身が向かい、棍を持った中肉中背の方へ小柄な肥満が向かう。
猫背は二体目のゴーレムを相手にしているシェリー君の方へと援護に向かう。
「私の方は問題ありません。お二人の方を……………。」
胴体を粉砕され、手足だけ無残に残ったゴーレムがシェリー君の足元に転がっていた。
「こっちも」「終わったぁ!」
直ぐに残る二体も砕かれた。
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