リユース

 砕いたゴーレムの材料が宙へ浮かび上がる。

 その動きはゆっくりではあるが、何かしらの目的の元、統率されて動いているように見える。

 「何なのかナァ?」

 「知らんにー!」

 「ぬぅ……珍妙な。」

 「ねぇねぇねぇ。あれって……何か…デジャヴュを感じるのは僕だけかな?」

 「奇遇だのー。同じ事考えてたのー。」

 「……………………………。」


 ここで突然だが問題だ。『同じ材質の物を、違う道具、違う方法、違う角度から破壊した場合、破壊した破片の大きさは同じになるだろうか?』

 答えは、『最初から破片を同じ大きさにする事を意図しているor材質がどれもこれも同様に壊れる性質が無い限り、否。』だ。

 原因が違えば結果も違う。

・魔法を用いた素手による打撃

・剣による斬撃

・斧による斬撃を伴う打撃

・棍による一点集中の打撃

・魔法による同じ材質同士のぶつかり合い

・素手

 この原因で同じ結果が生まれる、つまりは砕かれたゴーレムが同じような大きさにスクラップされたのは不自然だ。

 ならば、原因は材質が同じ様に壊れる様になっていたか、壊れやすい…壊され易い状態になっていたか、はたまたその両方だ。

 もし、これらの原因分析が正しいとして。

 では、『何故そんな事をしたか?』を考えよう。

 壊れやすい事で発生するメリット。……この場合、壊れやすくしたお陰で同じような形状に、狙った形状にスクラップされる事に焦点を当てよう。

 もし、君が誰かに何かを壊されるとして、それが破壊される事を望まず、しかし、壊される事を絶対に回避できない場合に、君は如何動く?

 悲嘆に暮れる?壊される事を怒る?捨てる為のゴミ箱を用意する?

 私ならハンマーを用意する。

 如何するか?決まっているだろう?

 ハンマーで壊せなければ上級者向けだが火薬を用いるのも良い。薬品はダメでは無いが、後々厄介なのでお薦めはしない。

 何?壊したら『破壊を望まない。』と矛盾する?

 まぁ待ちたまえ。これには意味が有る。

 もし、破壊が免れない事態なら、『誰か』に壊される前に壊してしまえばその『誰か』の破壊を免れる事が実質的に出来る。

 しかも、他者の、を阻止して修復前提の破壊を行えば、破壊後の修復が出来る。

 どんな力で壊しても、その力に指向性を持たせてあらかじめ脆くした部分が壊れる。

 重要であったり、肝心な部分は無事であったりする、見かけは完全に壊れた状態。言うなればそう、『修復前提の破壊』だ。

 『直しやすい細工』かつ『壊し易い細工』、がこのゴーレムには施されていた。

 このゴーレム達があらかじめ配置されていたのは何故か?壊れやすい細工を施していたからだ。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 石達が宙を舞い、形を作っていく。

 今まさに、自分達が壊したばかりの石人形に戻っていく。

 「サァ、第二ラウンドの始まりだ。」

 目の前には、合計25体の石の彫刻が、部屋に入ったばかりの状態の時同様に広間の奥で鎮座していた。

 ガガ ゴゴゴゴゴ…………ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

 石の彫刻が再度動き出して石人形になる。

 ガゴ ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ


 再度、歩みを速める訳でも無く、無言で石人形達は、文字通り黙々と進んでいった。


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