最短の結末


 「ジャリスさん、見つけたッす!」

 隣、というか耳元で大声で叫ぶ。

 「何処だ?」

 「あの、一番上の階の端の、デカくて趣味の悪いゴテゴテした扉のトコっす!なんか白い布?みたいなのを振ってますが……………」

 照準をそちらに合わせて確認する。

 確かに、校舎の最上階、端の部屋の、一際立派な扉が少し開いてそこから白い布がヒラヒラと顔を覗かせていた。

 ウィリアムの引き金に掛けていた指を一度外す。

 降参の意思?イヤ……

 「レン、気を付けろ。また閃光が来るかもしれん。」

 「解りました!」

 束の間白い布が振られていたが、直ぐにその布が引っ込み、今度は棒に括り付けられた鏡が出て来た。

 成程、降参しても間違って……下手すりゃ意図的に殺される可能性だってある。

 鏡で先ずは確認と来たか。

 そんな事を考えている内に、人間が扉から堂々と出てきた。

 間違いない。さっきの嬢ちゃんだった。

 そして、その手には…………

 「レン、お前は校庭の連中の所にひとっ走り行って来い。

 『事件解決の模様』ってな。」

 嬢ちゃんの手にはさっき仕留め損ねた標的の服の襟が握られていた。

 「………やるねぇ、嬢ちゃん。」

 構えていたウィリアムを完全に落としてそうボヤいた。





 立て籠もり事件のその後は驚くほど簡単であった。

 校庭から騎士が何人もやって来て、私が何かを説明するまでも無く5人の立て籠もり犯を捕らえて去っていった。

 当然と言うべきでは無いが、矢張り、予想通り、礼も無く、心配もされず、立て籠もり犯をひったくると何事も無かったかのように騎士達は階下へと消えていった。

 その後、フィアレディー達から事情を幾つか聞かれ、何故か学長からギャァギャァヒステリックな高音を聞かされ、事件は終わっていった。

 聞いた話によれば、あの五人は無論貴族達の逆鱗に触れて既に極刑が確定となったらしい。




 すっかり日の暮れた窓の外の景色を見ながらシェリー君は言った。

 「………本当に、あれは正しかったのでしょうか?」

 その目は本当に空を見ておらず、過去の幾つもの光景を瞳の奥に反芻するように映しだし、考え込んでいた。

 「正しいか否かは別として、アレが最短の方法で有った事は確実だ。」

 しかし、シェリー君は納得いかないという顔だった。

 「シェリー君、君は連中をけしかけた訳でも無く、自分から進んでトラブルに巻き込まれに行った訳でも無く、ただ巻き込まれただけだ。

 そして、少し手荒く連中を拘束しただけ。

 それだけだとも。」

 「…………しかし……」

 「君が彼らを殺した訳では無い。

 奴等は自分達が陥れられていると知って、陥れられたのだ。

 遅かれ早かれ、捕まって極刑になっていた。

 私が暴れずとも、何もしなければ同じ結末だった。それだけだ。」

 「…………………………」

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